2021/07/22

你呢排點啊?今日はあなたの携帯の画面にもきっとある、吹き出しの中に電話の受話器が描かれた黄緑色のアイコン。そう、WhatsAppにまつわるお話です。

香港に来て1年半が過ぎた頃。大きな怪我をするのはきっとやんちゃな長男の方が先だろうと思っていたら、泣きじゃくるお手伝いさんの両腕に抱きかかえられ、自分の身に何が起こったのか分からず驚いて声の出せない次男が自宅に戻ってきました。わたしが夕飯を作っている間、お手伝いさんと外に遊びに出かけた次男。暑いし、マスクはしているしで、ヘルメットも被らずにストライダーに乗っていたところ、下り道。お手伝いさんが追いつく間もなく勢い余って一回転。ハンドルの金属パーツがざくっと額に刺さり、深い傷を負う自損事故。流血は激しいものではなかったけれど、額にぱかっと開いたその傷は、指でちょっと広げると奥に白い骨まで見えてしまっていて「消毒して絆創膏貼ってれば治るよね」と動揺する夫に「いや、これは縫わなきゃダメなやつでしょ」とガーゼをあてて傷口をおさえ、ポケットタオルにまいた保冷剤で頭を冷やしながら、眉毛のないスッピンのわたしは夫と次男と3人、慌ててタクシーに飛び乗ったのでした。

大怪我をしてからは、どんなに暑くても自ら率先してヘルメットを被るようになった次男(3歳)。お兄ちゃんと一緒に自転車タイム。

土曜日の夕方の病院には平日のような混雑はなく、わたしたちは15分と経たないうちに休日の救急診療を受けることができました。次男の瞳孔に光をあてた先生は「意識はしっかりしているし、脳に異常はないと思う。もし心配なら、一晩、脳波を計測しながら入院することも可能ですので考えておいてください。縫合ですが、一般外科の医者ならHK$8,000、形成美容外科の医者ならHK$30,000かかります。形成美容外科医にお願いするときは、先生、自宅で待機中ですから呼び出しをかけますね。すぐ横にあるナースステーションに早めに伝えてください。そうだな、僕なら顔だし、やっぱり専門医にお願いするかな」救急医によるコンサルテーション(HK$3,000)を終えて冷静さを取り戻した夫は、息子の加入している保険会社に電話し、怪我の経緯と現在の状況を説明。どの程度、保険でカバーしてもらえるのかを確認してから、わたしたちは形成美容外科の先生をオンコールしてもらうことにしました。

大きな手術台の真ん中にちょこんとのせられ、動けないよう手足をシーツで巻かれ、顔だけ穴の開いた緑色の手術用シートを掛けられた小さな3歳児の姿は、もうそれだけで見ていられなくって、わたしはシーツの上から息子に手を添えながら顔を背けました。(ここからは隣に座っていた夫の描写)先生は目薬型の容器から液体の麻酔をぽたぽた傷口に垂らし、粒粒に砕けた脂肪の塊を一粒ずつピンセットで傷口から取り出して、筋肉と上皮を順に縫合。「動かずにえらいね。君は僕が執刀した中で一番若い患者さんじゃないかな」とか褒められながら、額の傷は表面上11針の一筋の線となり、わたしたちにとって初めての子どもの手術はこうして無事に終了したのでした。

「痛いし怖かったけど、僕、頑張ったもん」手術後、会計待ちの病院待合室。ママの膝の上。

術後の処置と今後の抜糸スケジュールについて、先生は詳しく丁寧に説明してくれたけれど、神妙に聞き入るわたしたちに対して最後に一言。「じゃ、何かあったらいつでも携帯に連絡してくださいね。WhatsAppの番号、教えてもらえる?」
え?そんなに気軽に携帯で先生に連絡してもいいの?処置される前に、その金額が払えるかどうかの確認をされる香港の私立病院のシステムにも驚きましたが、お医者さんとの距離感の近さに再度びっくり。数日後、縫合された個所の糸が数ヵ所切れてしまい、指示を仰ぐべく先生にWhatsAppで画像を送ったところ「これは急いで処置する必要はないから大丈夫。抜糸の日までそのまま日常生活を送ってください。でさ、この間の手術の後なんだけど、重なるときは重なるもので、息子さんと同じような年頃のお子さんの手術が入ったんだよね。その子はじっとしていられなくって、結局、全身麻酔になっちゃったんだけどさ」とチャットが始まり、またもやびっくり。

でも、香港内のWhatsAppの浸透ぶりについては、生活をスタートさせてまだ丸2年だけれど、なんだか納得してしまうところがあるのです。来港して最初の仮住まいのサービスアパートメントから引越する際の不動産屋さん、引越屋さん、害虫駆除屋さん。紙の名刺ではなくWhatsAppで「連絡先はここだよ」って名刺の画像が送られてきて驚いたし、その後も日本ならメールや電話で連絡を取り合うのだろうけれど、WhatsAppで絵文字付きの会話のやり取りが続きました。わたしの住んでいる地域は、ガスの検針は自分でメーターの画像を写メしてガス会社にWhatsAppで送信し使用量を伝える仕組みになっているし、息子の家庭教師の日本語の先生もWhatsAppでその日の様子や現在の学習進度について詳しく報告をしてくださいます。

6歳の長男。この日の日本語は濁点付きの平仮名。算数は液体の容量の単位(L、dL、mL)についての勉強でした。授業が終わると直ぐ、臨場感あふれる先生のご自宅での様子がWhatsAppで送られてきます。

わたしが香港に来る前の日本では、ビジネス上はメール、友人達とはLineでコミュニケーションを取ることが主流だったように感じていたけれど、わざわざIDの交換をしなくても電話番号をそのまま連絡先として使えるWhatsApp。マイアミやロンドン、チューリヒやドバイに越していった友人家族たちとも未だにWhatsAppで連絡を取り続けているし、国際都市香港の人々にとって、WhatsAppは身近で普段の生活に切り離せない通信アプリなのではないかと感じます。

ソーシャルプラットフォームのアクティブユーザー数。We Are Social Ltd.社がまとめた2021年の最新発表によれば、WhatsAppは全世界で20億人のユーザー数を誇っています(注1)。(参考:その他メッセンジャー系主要プラットフォームのアクティブユーザー数は、FB Messenger(13億人)、Instagram(12億2,100万人)、WeChat(12億1,300万人)、Twitter(3億5,300万人)の順。日本で主流のLineの全世界ユーザー数は1億8,700万人と発表されています。(注2))また、香港におけるモバイルアプリのアクティブユーザー数、トップ5はWhatsApp、Facebook、WeChat、Messenger、APP 1933 – KMB.LWB(交通系アプリ)の順となっていて(注3)、携帯のWhatsAppアプリで気軽に連絡を取り合う、そんな香港の人々の日常風景が思い浮かびます。

WhatsAppのユーザー数は全世界で20億人。香港内のモバイルアプリランキング(アクティブユーザー数)は第1位です。(We Are Social Ltd.社まとめ、注参照)

業者さん「配達員が30分以内に配達に伺います(いいねマーク)」
長男の級友ママさん(グループトーク)「明日の午後、息子はビーチに面してる公園で遊ぶ予定。誰かジョインできる子がいると嬉しい!」
会合で初めて対面した方「昨日はありがとうございました。お目にかかれて嬉しかったです(ハートマーク)。名刺の持ち合わせがございませんで失礼しました」
お手伝いさん「C(次男)とその友達たち」(テキストに続き、写真を受信)
ブルブル、ブルブル。今日も一日、わたしの携帯電話はWhatsAppメッセージの着信を振動で伝えてきます。

香港トラムにゴトゴト揺られて移動中。WhatsAppメッセージをチェック。

Emi in HK。唔該你。一陣見!


【出典】
※注1…DIGITAL 2021:GLOBAL OVERVIEW REPORT
https://wearesocial.com/digital-2021
※注2…Zホールディングス株式会社 決算説明会(P.48)2020年度 通期及び第4四半期資料(2021年4月28日)
https://www.z-holdings.co.jp/ja/ir/presentations/earnings/main/02/teaserItems1/0/linkList/01/link/jp2020q4_presentation.pdf
※注3…DIGITAL 2021:HONG KONG(SAR CHINA)
https://wearesocial.com/hk/digital-2021-hong-kong/


Emi
経済団体にて、経済産業省・法務省との折衝から、中小企業の事業転換・倒産回避の相談現場まで、多岐にわたる業務に従事。2019年6月、15年間の東京・丸の内オフィス生活に別れを告げ、夫の仕事の都合により香港へ移住。錆びついた英語と、初学者レベルの広東語・北京語を日々勉強中。気分転換は映画・ドラマ鑑賞、25年振りに再開したピアノ、甘い物。小学校、幼稚園、やんちゃ男児2人の母。

Twitter @emi_m_wang
E-mail  emiinhkg@gmail.com

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