2025/05/15
黑椒牛柳
(ハッ ジウ アウ ラウ:廣東語発音)
香港式ブラックペッパービーフ
香港の茶餐廳(チャーチャンテン)や小さな食堂でよく見かける「黑椒牛柳(香港式ブラックペッパービーフ)」。西洋のステーキ文化をベースにしながら、中華ならではの強火炒め(いわゆる“鑊氣/ウォッヘイ”)の香ばしさが融合した、香港らしい料理です。
いわば“洋食を中華スタイルに仕立てたもの”。イギリス統治時代に伝わった西洋料理が、香港の食文化と交わりながら独自の進化を遂げてきました。このブラックペッパービーフもその一つ。細切りにした牛肉と玉ねぎ、ピーマンを炒め、黒胡椒のきいたソースで仕上げます。スパゲッティや炒飯、公仔麺(インスタント麺)など、いろんな炭水化物との相性も抜群です。
ちなみに、香港のシェフは牛肉を柔らかくするために重曹やベーキングソーダで下処理するのが一般的。でもわたしはその処理をあえて省くことが多いです。理由は、肉の旨みや噛みごたえをしっかり感じたいから。噛むほどに、牛肉の味と黒胡椒の風味がじわっと広がります。シンプルなのに、奥行きのある味です。
最近、台湾で「日式イタリアン」を名乗る店に行ったとき、ペペロンチーノを注文したら、出てきたのはまるで“蒜蓉炒麺(ニンニク炒め麺)”。オリーブオイルや唐辛子の風味は控えめで、どこかマギーソースっぽい味わい。でも、これも「その土地流」のアレンジなんだな、と納得しました。
料理は土地を越えるたび、自然と変化していきます。香港のブラックペッパービーフも、台湾のペペロンチーノも、「本場」とは少し違っていても、その土地の人々の感覚や文化が加わることで、唯一無二の味になる。それが、まさに香港式洋食の面白さだと思います。
アレンジ:このレシピは敢えて牛肉の下処理にベイキングパウダーを入れてないですが、現地ローカル風味を再現する場合は肉100gに対して0.3gを下味のところに入れて見て下さい。
材料(2人分)
《牛肉の下味》
牛スカートステーキ(ハラミなど)…約200g(5mm幅の薄切り)
砂糖…小さじ1/2
日本酒…大さじ1
醤油…小さじ1
卵白…大さじ1(卵半分くらい)
片栗粉…大さじ2
サラダ油…小さじ1
《野菜》
ピーマン(ざく切り)…2個
玉ねぎ(スライス)…1/2個
にんにく(みじん切り)…1片
《黒胡椒ソース》
オイスターソース…大さじ1
醤油…大さじ1
粗挽き黒胡椒…小さじ1〜1.5(好みに合わせて)
水…大さじ2
砂糖…小さじ1
ごま油…少々
作り方
1.牛肉に下味をつける
ボウルに牛肉を入れ、砂糖・日本酒・醤油・卵白を加えてもみ込み、15〜30分ほど置く。
そのあと片栗粉を加えて全体になじませ、最後にサラダ油を絡めておく。(卵白を入れるとしっとりやわらかく仕上がります)
2.ソースを準備
小さなボウルにオイスターソース、醤油、黒胡椒、水、砂糖を入れて混ぜておく。
3.野菜を炒める
フライパンに油を熱し、中火でにんにくを炒める。香りが立ったら玉ねぎを加え、しんなりするまで炒めたらピーマンも加え、さっと火を通して一旦取り出す。
4.牛肉を炒める
同じフライパンに油(大さじ1)を足し、牛肉を中火〜強火で炒める。火が通り、軽く焼き色がついたら火を少し弱める。
5.仕上げ
炒めた野菜を戻し、火を強めてソースを加え、手早く全体を炒め合わせてごま油をかけてできあがり。
雲姐(ワンジェ)
料理研究家。香港に生まれる。幼少期、平日は祖母、週末は料理が趣味だった父の手料理を食べて過ごす。オーストラリアへ移住を経て、結婚を機に日本へ移り20年以上。中国国際薬膳師、発酵食品ソムリエ、発酵ライフアドバイザーの資格を持ち、中華圏および日本の食文化への造詣も深い。現在は、日本の人々に香港料理を伝えるべく東京で活動中。
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