2026/01/29
Hong Kong LEIライターのリンダと杏が、ぴーちくぱーちくお喋り感覚で最新の香港映画をご紹介するコラム《リンダと杏の香港映画ぴーちくぱーちく》。
まだまだ勉強中だけれど、香港映画に対する愛と情熱は超強火! と言うリンダと、気になる映画に関しては、とことん知り尽くしたくなる杏。そんな二人が、香港在住者の視点で、映画の背景となる香港の文化的事情やその歴史、そして知ると楽しいトリビア等を楽しく語り合い、読者の皆様にご紹介します。これを読めば香港映画が、そして香港が、もっともっと楽しめるようになること請け合いです!
写真:Rolling Stars Workshop提供
連載第6回は、昨年11月に公開された『金童』(英題:Golden Boy/92分/2025年)を紹介します。主演は、香港人気俳優のルイス・チョン(張継聰)。彼が2年という年月をかけて体を作り、ボクサー役に挑みました。また制作には6年を費やし、途中資金不足に襲われるも、ルイス本人が自腹で出資して作り上げた執念の作品です。
あらすじ
ルイス・チョン演じる元一流ボクサーのチョンレッ(張力)。彼はある日、酒に酔った勢いで、殴った相手を死亡させてしまい、10年余り服役することとなります。刑期を終えて出所した日、そのチョンレッの前に弁護士が現れ、彼には血のつながった子ども、フォンユン(方圓)がいることを知らされます。存在すら知らなかった子どもに対し、愛情のカケラもないチョンレッですが、フォンユンの母親が遺した遺産をもらうためだけに、フォンユンと共に暮らし始めます。こうして始まった生活ですが、フォンユンと関わりあううちに、チョンレッは次第に父親としての自覚が芽生えていきます。そして、ついには息子のロールモデルとなるべく、輝いていたボクサー時代の自分を取り戻そうと奮闘するのです。
写真:Rolling Stars Workshop提供
主演俳優ルイスとそれを支える役者
杏:まず、わたしが映画をみた決め手は、主演のルイス・チョンが好きだからっていうのが大きいかな。香港の街の広告でもよく見かけるし、40代香港俳優代表といえば彼だと思う。
リンダ:『星くずの片隅で』(原題:窄路微塵)では、金馬奨主演男優賞にノミネートされ、香港映画歴代興行収入5位を誇る『6人の食卓』(原題:飯戲攻心)でも、準主役。MIRRORメンバー主演の『盜月者』にも出演してたね。
杏:谷垣健治監督、ドニー・イェン主演の『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』(原題:肥龍過江)でも、リポーター役で笑わせてくれたな。イケメンだからシリアスな役もきまるし、香港ドタバタコメディやらせても上手。だからかな、出演作品は多数あるよね。
写真:Rolling Stars Workshop提供
リンダ:幼い頃に芸能界入りして、CM、テレビドラマ、舞台、など映画以外にも多数の作品に出演してる上に、歌手や声優としても活躍していて、まさにお茶の間の顔と言った感じだよね。
杏:日本でいえば、認知度や年齢的に岡田准一みたいな感じかしら。映画は、他の俳優陣もよかったね。劇中で驚かされたのは、コーチ役のエリック・ツァン(曾志偉)。様々な映画に出演していて、見る度に「『インファナル・アフェア』のヤクザのボスやんけ!」って心の中で叫んじゃうんだけど、今回は「ボス、全く年取ってないやんけ!」って変なところでびっくりしてしまった。あの名作から20年以上も経つというのに……。そしてベテラン俳優はヤクザを演じても、人情コーチを演じてもバッチリハマってる!
写真:Rolling Stars Workshop提供
リンダ:わたしは脇を支えたチュー・パクホン(朱栢康)がこの作品にいいアクセントを加えているなと思って、惚れ惚れしちゃった。彼も多数の作品に出演しているけど、いつもキラリと光った印象を残してくれるじゃない?
杏:ちなみに、エリック・ツァンの妻役は、日港ミックスの上山アンナ。60近いと思われるけど、めちゃ美しい。日本人ボクサー役は、なんと、ムエタイで有名な中村敏射だったね!
ボクサーの役作り
写真:Rolling Stars Workshop提供
杏:俳優というのは、役のために痩せたり、太ったり、楽器を演奏したり、歌舞伎をやったりと大変だと思うんだけど、今回のボクシング映画も、ルイスはムッキムキのモッリモリに筋肉を育て、その上、パンチ、フットワークという動きもマスター。アクション映画出身というわけでもないし、すごい、苦労したんじゃないかな。
リンダ:体を作るのに2年かけたらしいよ。コーチがつきっきりで、徹夜での撮影の後も、休憩時間も、ずっとトレーニングしてたんだって。この2年間の地獄のような特訓の様子をルイスは撮り溜めていて、15分のドキュメンタリーにしたらしい。是非、見てみたいね!
杏:食事制限とかもあっただろうしね。それに、演技とはいえ、パンチにスピードがあるから、当たったら絶対痛いし。アクション映画って、パンチ受ける人は、洋服の下にパッドとか入れるらしいけど、ボクサー役は上半身が裸だからねぇ……。対戦シーン、どうやって撮影しているんだろうな、ってアクション映画好きとしては、気になっちゃった。
写真:Rolling Stars Workshop提供
映画を見て、何を感じた?
杏:冒頭の茶餐廳(チャーチャンテン:香港式カフェ)のシーンがよかった! 香港名物エッグタルトや茶餐廳あるあるの“色々混ぜちゃう飲み物”とか出てきて、そしていい加減男達のチャランポラン会話が気持ちのいいテンポ感でくり広げられる。香港らしさが抜群に出ているな!って思った。ボクシングも好きだから、楽しんだ。でも、登場人物たちの人間関係や、心情の変化が、ちょっと唐突だな、って思うところもあった。これ、他の香港映画でもたまに思う。香港人のせっかちさが、こういうところに表れているような。(笑)
リンダ:そうかな? この映画はルイス曰く「東洋のロッキー」。手に汗握る迫力と興奮を味わう作品として、わたしは大満足だったよ。どっぷり主人公に感情移入しちゃったし……。でも、お互い違う感性をもっているから、映画の話をするのは、楽しいよね。捉え方も、抑えるポイントも違うからね。
写真:Rolling Stars Workshop提供
リンダ:わたしはこの映画は「ルイスの、ルイスによる、ルイスのための映画だ!」って思ったよ。彼の長いキャリアは紆余曲折。売れない時期も経験したし、人気歌手の奥様ケイ・ツェ(謝安琪)との人気格差に端を発したマスコミの誹謗中傷にさらされたこともあったし。この中傷、名誉毀損でルイスが法的措置を始めたほどひどいものだったらしいね。そんな不運を乗り越えて今の地位を築き上げた苦労人のルイスの姿が、この映画の主役の姿と重なっちゃう。しかもルイスは、長期にわたる厳しいトレーニングをして体を作ったし、資金不足に陥ったときは、自腹まで切ったし。映画の中で、困難に屈せず、目標に向かって頑張る主役の姿がルイスに見えて来て思わず涙が出ちゃった!
しかも映画公開後も困難は続いて……。ルイスは映画が公開されるや否や愛妻ケイを伴って連日、舞台挨拶に奔走。この頃のルイスのインスタを見ると、その回数が尋常じゃないぐらい多いのが分かるよ。そんな風に頑張っていた矢先、香港の人を悲しみに包んだ大埔の大火災が起こってしまって。彼らはすぐに宣伝活動を自粛。しかも奥様は被害にあった公営住宅のご出身で、長年の知り合いを多く亡くされてしまって。ルイス自身もこのエリアの出身だし、二人の心情を思うと……。気丈にも活動を再開した時には、またうるっとしちゃった。
杏:彼は、作品を通して、香港の人々や観客へ「困難な時でも、最善を尽くし、決して諦めない勇気を奮い立たせよう!」とエールを送りたいんだろうな。だからこそ、自分も全力でこの映画を作り上げたんだろうね。
リンダ:この映画で、一層ルイスが好きになっちゃった。これからさらにたくさんの作品を作って欲しいし、色んな作品に出て欲しい!
杏・リンダ:いやーやっぱり香港映画っていいですね! ではまた次回!
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