2026/05/11

香港好きにとって茶餐廳(チャ・チャーン・テン)は、香港を語る上でなくてはならない存在です。そんな茶餐廳の全てを余すことなく教えてくれる展示会が、MTR啟德駅直結のモール AIRSIDE内にある「GATE33 Gallery」で開催されています。題して「茶記百科、The Cha Chaan Teng CODEX: Tales of Invisible Designs」。展示内容の充実さは、香港好きの血を沸きたてることでしょう! 情報量がとにかく豊富なので、しっかり読み進み、体験しながらまわると少なくとも半日はかかります。ぜひ時間をとってじっくり味わい尽くしていただきたいです。(全て英語と広東語で表示されています)
展示会は、茶餐廳の美学や歴史を7つのゾーンで多角的に紹介する体験型展示になっているので、茶餐廳を肌で感じる特別な時間を過ごすことができます。その中で、すでに閉店した上環の伝説的茶餐廳「海安㗎啡室(海安咖啡室)」 を取り上げたセクションは、当時の店内で使われていたドアや看板、ブース席をそのまま持ってきているとあって、人々に愛された茶餐廳の温もりを蘇らせています。

この展示は「茶餐廳とは何か」から始まり、まずはネオンサインや開業書類を通じて歴史を振り返ります。さらに「空間とデザイン」「食器と工業遺産」「科学的視点」「映画に登場する茶餐廳」「現代的解釈」など、7つのゾーンで茶餐廳文化を徹底的に解剖。来場者はインタラクティブゲームで注文暗号を解読したり、制服を着て軽食飲料キッチンで時間をセットしてオーダーを用意したり、茶餐廳の音や香りを五感で体験できます。
香港はかつて光り輝くネオンで繁華街は活気付いていました。茶餐廳のネオンサインも例外ではありません。入り口に入ると、目に飛び込んでくるのが派手なネオンサインです。

チカチカと点滅したり、順番にネオンサインが光ったりととても賑やかです。これは実際使われていたものを、老朽化のために撤去し保存。こちらに展示したものです。茶餐廳は夜を徹して働くタクシードライバーの憩いの場でした。彼らが運転しながらでも一目でわかるように、ネオンサインは道路に突き出ており、緑で書かれた「通宵営業(24時間営業)」の文字は、運転席の正面に見えるように掲げられていました。

実際に使われた開業書類や設備費用、カタログなどを展示したもの。イギリス統治下の時代は、全ての書類を英語で用意しないといけなかったため、書類の作成にも骨が折れたそうです。

展示会には実際体験したり、触ってみたりができる場所がたくさんあります。こちらはテイクアウトのオーダーを受ける体験ができます。黒電話を取ると、お客さんからの録音オーダーが聞こえます。その時に店員役は素早くオーダーを伝票に記入していかなければなりません。
実際に皆さんが茶餐廳でオーダーするとき、伝票に書かれた文字が暗号のように見えることはありませんか? その暗号文字をここでは解読できるのです!

例えば、アイスレモンティーは「C O T」。コーヒーは「啡」一文字となります。だいたいどこの茶餐廳も同じような表記を使っているそうなので、今度茶餐廳に入った時は、ぜひ伝票をみてみてくださいね。
展示の中でも特に印象的なのが、「海安㗎啡室(海安咖啡室)」を再現したゾーンです。すでに今は無くなってしまったこともあり、香港の人々にとっては、懐かしくも寂しくもある、複雑な気持ちが入り混じる展示です。当時使われていた看板や入口は復元され、古い家具や食器、メニューが並び、来場者はかつての雰囲気を体感できます。もちろんブースにも座ることができ、その横ではドキュメンタリー映像が繰り返し上映され、茶餐廳が地域社会に果たした役割を映し出します。茶餐廳が単なる飲食店ではなく、人々が集い、交流し、日常を共有する場であったこと、そしてお店を切り盛りするオーナーやスタッフのお店に対する愛情やプライドに胸が熱くなります。
このお店については、「香港老舗記録冊(香港老舗の歴史をたどる)第22回 海安咖啡室」でもご紹介しています。

海安の椅子やテーブルは、香港の職人が北欧デザインを香港のスペースに会うように小型化し、地元の素材を活かして作り上げたもの。限られた空間に合わせた工夫は、香港人の生活に寄り添う「実用美」を体現しています。

特に注目すべきは「赤いテーブル」です。赤は香港文化において「繁栄」「活気」「温かさ」を象徴する色であり、茶餐廳の空間に生命力を与える役割を果たしました。赤いテーブルは、無名の職人たちの知恵と地域社会の温もりを象徴する存在として展示されています。

茶餐廳で使われてきた印刷物や食器の展示物です。まずは、当時の印刷やフォント、ポスターデザインなどの紹介。次に茶餐廳内で使われてきたコップの歴史と進化について、最後は現在も使われ続けているメラミン皿の形態や運び方についてです。全てで触ってみたり体験したりすることが可能です。

メニューやテイクアウト袋、エッグタルトの箱なども展示され、デジタル以前の印刷技術の限界の中で生まれた独特の美学を感じることができます。オーバープリント(ノセ)技法による色の重なりや手作業の工夫は、香港らしい色や発色を作り出し、香港の庶民文化を支えた創造性の証です。フォントもとてもユニークで、愉快な気分になりますね。

茶餐廳の飲み物と言えば、コーヒー、紅茶、そしてコーヒーとミルクティーを合わせた香港茶餐廳独自の飲み物、鴛鴦(インヨン)です。時代と共にその入れ物であるカップも、飲みやすさや保温、そして扱いやすさを追求して進化を遂げてきました。
それぞれのカップの素晴らしさや、飲みやすさをどのように追求したかなどが説明されているばかりでなく、カップとスプーンがぶつかりあうカチャンカチャンという音さえも、茶餐廳にはなくてはならない風景のひとつなのです。
来館者はスプーンを使ってコップを叩いてみることをすすめられます。この高く乾いた音が、「あーそうそう、茶餐廳でこういう音が聞こえる!」と記憶が蘇ることでしょう。
そして、隣では、現在も使われているメラミン皿の展示です。メラミンは落としても割れにくく軽いため扱いやすいので、時代時代で流行りの色に変えて使われてきました。

来館者はイラストに沿って、6つのお皿をいっぺんに持つ方法を体験できます。

さらに展示では実際のお料理を出すことが叶わないために、茶餐廳の最も重要な食の体験に近づける方法として茶餐廳の香りを演出しました。赤い「匂いボタン」を押すと、あら不思議! ミルクティーや炒飯など茶餐廳の代表的な料理の香りが広がります。嗅覚を通じて茶餐廳の食を再現するこの仕掛けは、まるで店内にいるかのような没入感を与えます。視覚や聴覚だけでなく、嗅覚を取り入れることで、この展示会では茶餐廳文化を五感で体験できるのです。

そして、ハイライトがたくさんあるのがこの展示会の魅力ですが、こちらはハイライト中のハイライト。大人も子どもも楽しめる体験コーナーです。ここでは茶餐廳の軽食や飲み物を作る小さいキッチンが再現されています。なんと、来館者はこの中で、入ったオーダーを用意するというチャレンジに挑むことができるのです。
まずは、ユニフォームを来て、どんなオーダーが入ったかを確認します。
キッチンに入って、何がどこにあるかを確認しましょう。準備ができたら、カウンターのタイマーを押して、用意ドンです!
とにかく全てがリアルにセッティングされていて、中に入るだけでもドキドキワクワク。もちろんチャレンジしなくても、記念写真だけでもオッケーです。(混み合う時は順番待ちになります。)
香港人の生活の一部の茶餐廳。香港映画やドラマを制作するときに、茶餐廳のシーンはしばしば登場します。
茶餐廳が持つ「生活の場」としての役割を紹介してくれます。かつて映像に登場した、絵になる茶餐廳や、映画のワンシーンも紹介されています。
終盤には、来館者に記念品を持ち帰ってもらえるような仕掛けもあります。
様々なスタンプを重ね押して作る茶餐廳メニューです。写真は、チキンに目玉焼きにネギをのせてみました。
ここでは書ききれなかった展示がまだまだたくさんありますので、ぜひ実際に訪れて体感してみていただきたいです。展示全体を通じて、その濃さに驚くだけでなく、いかに茶餐廳が香港の人に愛され、親しまれ、そしてこだわり育まれてきたかがわかる素晴らしい展示会です。そして何よりも楽しすぎてあっという間に時間が経ってしまうことでしょう。2026年7月31日まで。

AIRSIDE GATE33 Gallery presents The Cha ChaanTeng CODEX: Tales of Invisible Designs
会期:2026年7月31日まで
場所:AIRSIDE GATE33 Gallery(ショップ312)
時間:月〜木 12:00-20:00/金〜日 11:00-21:00
入場料:HK$20(3歳以下無料)
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