2024/06/14
鉄観音茶とは
第2回の緑茶の回で登場し、珍しく?! 賑わっていた顏奇香茶莊さんでのお話です。
接客をしてくれた老闆(店主)に、龍井茶だけでなく、このお店で扱っている鉄観音の話を色々聞いてみました。わたしが普段嶤陽(ヒウヨン)さんか福建さん(上環にあるお茶屋さん)で買うことも多いんです、というと「あちらの鉄観音は焙煎がとても強いタイプね。うちは、焙煎は少し軽めやね」。顏奇香茶莊さんには、焙煎の浅いもの、中火、炭焙煎のものもあります。
右:軽い焙煎の鉄観音 左:強い焙煎の鉄観音
鉄観音とは、鉄観音種の茶葉で作られる烏龍茶の一品種です。福建省南部の安渓県が代表的な産地で、西坪、祥華、南石などの産地名をラベルでみることがあると思います(鉄観音は他に台湾にも木柵鉄観音があります)。
一般的な中国本土や台湾、若い世代は軽い焙煎で華やかな香り、青い茶葉、黄緑色の鉄観音を好む傾向にあるようですが、香港では、例えば飲茶レストランなどで鉄観音をオーダーすれば、まず焙煎が強い、ダークなオレンジのものが出てきます。
奥のテーブルで「お茶飲んで行く?」
中程度の焙煎の鉄観音を買って、それではとお店を出ようとすると、「ちょっとお茶飲んで行きや」とお誘いをいただきました。奥のテーブルにいた人たちに「この日本人、お茶飲みやで。広東語も頑張ってるわ」とご紹介いただき、ご一緒させてもらうことに。
メンバーは、ただならぬカリスマオーラのあるおじさま、お店の奥様、素敵なおじさまたち2人、寡黙なお店のご子息。カリスマなおじさまは「わたしのお茶の老師(先生)なの」と言うお店の奥様。おじさまたちは「わたしはただのお茶好きです、勉強してます」 。
老師「広東語は難しいやろ、あ、そこ! 英語禁止な、ゆっくり喋ったるから、広東語オンリーでいくで!」
みなさんお茶が好きなので、潮州系の方なんでしょうか? と聞くと、
老師「よっしゃ、スペシャルな潮州工夫茶飲ましたろか? ちょうどええわ、君(素敵なおじさまに)ちょっと教えた通り、お茶淹れてみ。」
茶葉を半分細かく砕いています
潮州工夫茶、淹れます
茶杯はこうやって持つんやで
潮州工夫茶とは?
香港に来たばかりの頃「潮州料理のレストランでは、小さな茶杯に淹れた強い潮州工夫茶を出してくれるところもあるよ」と聞き、ワクワクしたものでした(「工夫」=手間暇かけた、工夫を凝らした) 。
潮州市は広東省内にあり、潮州料理は客家、順徳、広州などのように広東料理を構成する料理です。また潮州は、鳳凰単叢(ホウオウタンソウ)という高級烏龍茶の産地でも有名で、独自のお茶文化も発展した場所です。普段や食事と一緒にカジュアルに飲むには、鉄観音を始め、福建産のお茶を飲んでいたという背景があるようです。
わたし「潮州工夫茶って基本焙煎重い鉄観音なんでしょうか?」
老師「それだけちゃうよ、水仙(生産量の多い他の烏龍茶)とかと合わせたブレンド茶やな。」
わたし「老師にとって潮州工夫茶とは?」
老師「工夫茶って、日常、生活やねん。生活! 難しいことは何もない、生活!」
老師「この工夫茶めっちゃストロングやで。大丈夫か? 空きっ腹とちゃう?」(空腹で特に強いお茶を飲むと、ちょっと気分が悪くなることがあるので)
老師「はよキュッと飲まなあかん、そんで茶杯の香り確認してみ。美味しいやろ。どんな香りする?」
老闆「クッキー食べる?」
そこへもう一人おじさまが来店、リュックからお茶を取り出し
「このお茶パッケージではなんのお茶かわからんねん。」
開けてみんなで香りや形状をチェックして「多分岩茶(烏龍茶)やな」と言っていると、ワインボトルも出てきました。
老師「僕らお酒もコーヒーも大好きよ。」
その後もストロングな工夫茶を何杯も飲み、みんなちょっと一息ついた感じになった時
素敵なおじさま「ちょっとなんか食べるもん買ってくるけど、君もなんかいる?」
最後に老師の名刺をいただけないかとお願いすると、なぜかとても照れていらっしゃる。お店で夜にお茶を教えているとのことでした。夜にあんなストロングなお茶を飲んで、ワイワイこんな感じで、みんな眠れるのでしょうか?
帰宅して老師の名前をググってみると、香港でとても有名な茶学研究家の先生でした。
次回はもう一人の潮州工夫茶の老師を訪ねて、深圳(本土)へのお話です。
Chikako
トロント、NY、シンガポール、今は香港に在住。
各地のライフスタイルや食文化にインスパイアされた器を製作してきた。
香港では中国茶器を楽しくコツコツ製作。
お茶のワークショップも不定期に活動中。
IG : cnycstudio
お茶のワークショップIG : sound_and_tea_room
Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。
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