2021/10/01
你呢排點啊? 今日は、香港の街のあちこちで、最近、特に頻繁に見かけるようになった黄緑色のトラックに関係するお話です。
キンコーン。ドアを開けると「ハロー、デリバリー!」受け取りにサインを求められる場合、玄関の床に段ボール箱を積んで「バーイ」サイン不要で配達員がそのまま笑顔で立ち去っていく場合、部屋番号が入る角度で荷物と我が家のドアの写真をスマホで撮られる場合。宛先人の確認を行いたいのか香港IDカードの提示を求められたこともあったっけ。香港では運送業者さんによって宅配便が配達されたときの応対方法はまちまちですが、わたしは荷物が届いて封を開けるときの、あのドキドキする瞬間が大好きです。
ドドーン。さて、今日配達されてきた米袋より大きなこの茶色い袋の中には何が入っているでしょうか? ワクワク。
香港移住前、まだ東京で生活をしていた2年前。長男出産後は育児と仕事に追われ、毎日が時間との闘い。朝は満員電車に揺られながら、携帯電話片手にストックが切れそうな日用品や化粧品をAmazonや楽天のカートに放り込み、お昼は家から持参した夕飯の残り物のお弁当をかきこみながら一週間の献立を思い浮かべ、生協の野菜や冷凍食品をネット注文。子どもたちが寝静まった後は保育園のお迎え時間までに終わらなかった仕事と語学の勉強の合間に、自分へのご褒美と称してGILTで靴や洋服をポチ。住んでいたマンションには宅配ボックスが設置されていて、ゆっくりスーパーやデパートに行けない代わりにネット通販をフル活用する毎日を送っていました。
ジャジャーン。茶色い袋から出てきたのは淘宝網Taobaoで購入した商品の数々。今回は4つのショップで購入した商品をまとめて配送してもらいました。荷物おまとめサービスは離島追加配送料も受け取りの手間も1回で済む便利なサービス。ただしショップや配送業者さんとやりとりする際は中国語しか使えないため、過去、間違った商品が届いたときには悪戦苦闘した苦い経験も。
2019年、来港して1ヵ月。どんなものが幾らくらいで売られているのか、日本で見かけるあれは店頭で手に入るのか、なかった場合は何が代替品と成り得るのか。そもそも香港の物価も、モノの適正相場も分からなくて、しばらくは街中のスーパーやドラッグストア、デパートを長男の手を引きながら、抱っこ紐の次男と台車代わりのベビーカーでウロウロする日々が続きました。
「行って1週間くらいは、何でも高くて、え? これがこの値段? えー? みたいになって、毎日ひもじい暮らしをすることになっちゃうから、日本円に換算しちゃ駄目だよ。すぐに香港価格に慣れるから」と、日本を出発するとき、数年間の香港生活を終え日本に本帰国した友人から聞いてはいたけれど、日本の物価の1.5倍くらいの金額を払えば大抵のものは手に入るし、日本にいるときとほとんど変わらない生活ができるんだということがなんとなく肌感覚で分かるようになった、その矢先のデモとコロナ。子連れでの遠出が厳しくなり、やむにやまれず、わたしの香港でのオンラインショッピングへの挑戦がスタートしたのでした。
子ども部屋。本棚に並ぶ書籍は大半が香港でネット購入したもの。寝る前は必ず1冊本を読むのが我が家の決まりです。最近は小学生の長男が幼稚園の次男に読み聞かせをしてくれるようになりました。
最初に試したのはOisix。わたしの住んでいる離島地域では、午前・午後の配達時間を指定することはできないけれど、日にちの指定はできるし、トラブルがあっても日本語でやり取りができる。初心者にとってハードルが低かったことがチャレンジの理由でした。慣れてくると日系店舗以外のオンラインショッピングも試したくなって、次にトライしたのが書籍のネット通販。子ども向けの洋書が安く手に入れられると香港にお住いの先輩ママさんのブログで仕入れた本屋さんFun to Read。銅鑼湾や觀塘にある店舗まで出向かずともネットで注文できることが分かり、抱えて帰宅するには重たいボックスケース入りの子ども向け文学全集やオンライン授業の補完に良さそうなドリルを買い漁りました。
夫はダイソンの送風機空気清浄ファンをFORTRESSのオンラインショップで購入。複数のオンラインショップで同じ商品の価格検討をしたようですが、最安値のショップではなく、実店舗を持ち、家電量販店として知られたFORTRESSを信用してそこで買うことを決めたそうです。お店を一軒ずつ探し求めて歩き回るより便利なので、我が家ではパソコンの付属品や文房具など低額商品の購入についてはHKTVmallも頻繁に利用しています。
HKTVmallのショッピングサイト。次男のトイレトレーニングが完了していなかった頃は紙オムツのまとめ買いでかなりお世話になりました。
そのHKTVmall。皆さんご存知の香港内最大のオンライン・ショッピング・プラットフォーム。4,000店以上のショップを有し、食品、日用品、化粧品、育児用品、ペット用品、電子機器・家電類、家具類、スポーツ・旅行用品、玩具・書籍、衣料品など70万点以上のアイテムが揃います。
今月上旬、同社は、2021年8月中にHKTVmallで買い物をしたユニークユーザー数が549,000人、注文商品の総額がHK$6億3,300万(前年同期比18.1%増)に達したと発表しました。1日あたりの平均注文件数は4 万2,700件(前年同期比29.8%増)、1日あたりの平均注文金額はHK$2,040万(前年同期比17.9%増)、1件あたりの注文金額はHK$478(前年同期比9.1%減)だったそうです(注1)。昨年 8月はちょうどコロナ第3波の真只中。皆が外出をなるべく控えていた時期でした。その 8月より全社的に見れば注文件数と注文金額は伸びているけれど、1件あたりの注文金額は減っている、つまりはちょっとした買い物でも気軽にネットを利用するようになった消費者のスタイルが思い浮かびます。同社の2020年の年間売上高は2019年からほぼ倍増のHK$28億7,790万でしたが(注2)、このままのペースが続けば2021年の年間売上高も前年を大きく上回る数字となりそうです。
PC経由、モバイル経由、国内取引、越境取引、それらの数字をすべて含めた香港全体のオンラインショッピングの実態を正確に把握することはとても難しいのですが、経年変化を追うためにwe are social社から毎年発表されている数字を拾ってみると、2020年、インターネットで消費財を購入した人の数は515万人、eコマース市場における消費財の総売上高はUS$64.1億、ユーザー1人当たりの平均消費額はUS$1,244(約HK$9,650)だったのだそうです(注3)。Emi in HK第1回で香港在住者数約750万人という数字をご紹介しましたが、香港に住むかなりの人々がオンラインショッピングを利用していることが分かります。
時系列でみると、eコマース市場の消費財総売上高はUS$44.1億(2018年)、US$49.4億(2019年)、ユーザー1人当たりの平均消費額はUS$798(2018年)、US$891(2019年)と、いずれも右肩上がりの数字を記録していて(注4)、コロナ禍で巣ごもり消費の影響が色濃く表れた2020年には、HKTVmallの年間売上高同様、ポンと大きく数字が跳ね上がりました。
香港eコマース市場。ユーザー1人当たりの年間平均消費額(2020年)はUS$1,244(約HK$9,650)でした。月額に換算するとおよそUS$100(約HK$800)。皆さんのご利用状況と比べていかがですか?
2年前、香港にやって来てHKTVmallの黄緑色のトラックを初めて街中で見かけたとき「あれが香港版Amazonなんだ。でも、香港狭いし、交通網も発達してるしさ。自分の目で見たものしか信じられないって人も多いから、日本のようにネットで頼んで翌日配送みたいなの、香港じゃスタンダードじゃないからね」と香港人の夫が指さして説明してくれました。
香港にやって来た頃、わたしの住む離島地域ではほとんど見かけることはありませんでしたが、コロナ禍を経た現在、毎日、数回はHKTVmallのトラックを見かけるようになりました。
加えて香港の物流事情。日本のような細かな時間指定や再配達のシステムは今のところありません。その日の朝、「今日の13時までにお届けします」というメッセージが携帯に送られて来ても、時間に対しては比較的大らかな香港。時間どおりに届いたら、運送業者さんのフェイスブックページにいいねを10個くらい付けたいほどの好感を覚えるほどですし、ネット通販を利用し始めた頃は「まだ届かない!外出できない!」とイライラしていたけれど、設定された配達日のうちに届けば御の字と、最近では外出を諦め香港式に(?)気長に待つことを覚えました。
雨の日、段ボールの半分がびしょ濡れの状態で、(水たまりに箱を落としたのか)破損して潰れた角の部分が透明テープで補強されて配達されてきたときはさすがにギョッとしましたが、中身は無事だったのでもう見なかったことに。エレベーターの付いていない我が家。配達員のお兄さんが箱を玄関先に下ろすなりもう一度階下まで駆け下りて「1、2、3」階段を昇りながら声出し確認カウント。運賃として階段1段につきHK$10の料金を追加請求されたこともありました。
子どもたちに大人気のpop itもネット購入。1個CNY10.9(約HK$13.1)で安かったけれど、黒色のビニール袋の中にぎゅうぎゅうに詰め込まれて配送されてきて、合理的な梱包方法にちょっとしたカルチャーショック。
開封して、商品が緩衝材でしっかりこんなにかわいく包装されていると、日本でオンラインショッピングを利用していた頃を思い出して嬉しくなってしまいます。
とはいえ、数字に兆しが見え始めているように、買い物をめぐる香港の風景、人々の生活様式はコロナを機に少しずつ変容し始めているようにも感じます。香港でのオンラインショッピングは無事に手元に荷物が届くまで、配送具合も中身の状態もドキドキしっぱなし。日本で商品が届いて箱を開けるときのワクワク感とはまた違う、おっかなびっくりのドキドキ感ではありますが、買い物失敗談を笑い話に変え、香港におけるオンラインショッピング環境がこれから成長・発展・成熟していく過程。ゆっくりじっくり見届けたいと思っています。
Emi in HK。多謝收睇。下次見!
【出典】
※注1…香港01「HKTVmall8月業績『靚仔』帶攜母企香港科技探索急升逾5%」
※注2…Hong Kong Television Network Limited (現在はHong Kong Technology Venture Company Limited香港科技探索有限公司に社名変更)Annual Report 2020年報,p3
https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2021/0420/2021042000351.pdf
※注3…DIGITAL 2021:HONG KONG(SAR CHINA)
https://wearesocial.com/hk/digital-2021-hong-kong/
※注4…DIGITAL 2020:HONG KONG(SAR CHINA)、DIGITAL 2019:HONG KONG(SAR CHINA)
https://wearesocial.com/hk/digital-2020-hong-kong/
https://wearesocial.com/hk/digital-2019-hong-kong/
Emi
経済団体にて、経済産業省・法務省との折衝から、中小企業の事業転換・倒産回避の相談現場まで、多岐にわたる業務に従事。2019年6月、15年間の東京・丸の内オフィス生活に別れを告げ、夫の仕事の都合により香港へ移住。錆びついた英語と、初学者レベルの広東語・中国語を日々勉強中。気分転換は映画・ドラマ鑑賞、25年振りに再開したピアノ、甘い物。小学校、幼稚園、やんちゃ男児2人の母。
Twitter @emi_m_wang
E-mail emiinhkg@gmail.com
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