2025/10/17
提供:HKAFF
香港とアジアから最新映画を多数紹介し、地域の映画制作の促進を図る、香港アジア映画祭(HKAFF)。今年で第22回目を迎えるこちらの映画祭が、10月22日から11月9日までの間、開催されます。多彩なプログラムの中から、LEIでは香港および日本作品を中心に、いくつかご紹介したいと思います。
オープニング・クロージング
オープニングを飾るのは、香港アニメ『世外』(英題:Another World)です。この作品は日本人作家である西條奈加著『千年鬼』を原作とし、香港のトミー・カイ・チュン・ン(吳啓忠)監督の元、香港のアニメーション会社 POINT FIVE CREATIONS LIMITEDによって制作されました。今回の映画祭のキービジュアルを作成したのも、このアニメーション会社。よく見ると主人公グドとユリが光の方向へと走っているのが見えます。
死後、輪廻転生までの間に魂が旅する「世外」と呼ばれる世界。物語は、死者の魂を輪廻へと導く精霊グドが、ユリという名の少女に出会い、始まります。
香港アニメ映画『アナザーワールド』(原題:世外)提供:HKAFF
精霊グドの声を、今、香港でも最も注目されている女優ジョン・シュッイン(鍾雪瑩)が演じます。彼女が主演した、聴覚障害をもつ若者たちのストーリー『私たちの話し方』は、2026年春に日本公開予定です。
クロージングは2作品。まず1作品目は世界プレミアとして上映される香港コメディ『逆轉上半場』(英題:Pass and Goal)。ジジ・リョン(梁詠琪)が演じる、全てを失った主人公が、ひょんなことから子ども達のサッカーコーチとなり、彼らと共に、人生の意味を見出していく、という心温まるコメディです。
香港映画『殺手#4』(英題:Road to Vendetta)主演のジェフリー・ガイ(魏浚笙)提供:HKAFF
2作品目は、香港と日本の合作アクション映画『殺手#4』(英題:Road to Vendetta)です。香港期待のイケメン新星ジェフリー・ガイ(魏浚笙)による初主演作品。映画の中で、彼は、ヤクザのボスを暗殺するために日本にやってくる殺し屋No.4 を演じます。日本からも南沙良や竹中直人などの錚々たる顔ぶれが出演します。
多彩な日本映画
近年、非常な盛り上がりを見せている日本映画界からも、素晴らしい作品が多数やってきます。
まずは、スペシャルスクリーニングで披露される『国宝』(英題:Kokuho)。現在、日本での興行収入が150億円を超えるという、邦画実写版では20年ぶりの大大大ヒットを記録している作品です。2026年米アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表作品にも決定しました。
日本映画『国宝』©SHUICHI YOSHIDA/ASP ©2025 “KOKUHO” Film Partners
梨園の家に引き取られた喜久雄(吉沢亮)。彼が、その家の御曹司である俊介(横浜流星)と共に青春を歩み、芸の道に人生を捧げていく姿を描いた、李相日監督による大作です。
「すごく良い映画だった!」という称賛の声しか聞こえてこない『国宝』。今回の香港アジア映画祭では、李相日監督の来港が予定されています。残念ながら映画祭でのチケットは全て完売ですが、映画は11月から香港で一般公開予定ですので、お楽しみに!
日本映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』(英題:Climbing for Life)主演の吉永小百合と佐藤浩一 提供:HKAFF
日本の大ベテラン女優、吉永小百合主演の『てっぺんの向こうにあなたがいる』(英題:Climbing for Life)もやってきます。
諦めずに、頂上を目指し続ける……。1975年に、女性として初めてエベレスト登頂に成功した登山家、田部井淳子をモデルにしています。彼女の輝かしい偉業、そして晩年の闘病生活に至るまでのストーリーです。
映画は、今月末から開催される第38回東京国際映画祭のオープニング作品にも選ばれ、主演の吉永小百合は同映画祭において特別功労賞を受賞しました。
ドキュメンタリー部門では、藤野知明監督による『どうすればよかったか』(英題:What Should We Have Done ? )がやってきます。
日本ドキュメンタリー映画『どうすればよかったか』(英題:What Should We Have Done ? )提供:HKAFF
80年代。当時統合失調症を患った監督の姉(当時20代)と、その事実を受け入れず、姉を精神科へ連れて行くことを拒んだ両親。その家族の姿を23年に渡り撮影し続けた映像を編集してできたのがこの作品だそうです。タイトル『どうすればよかったか』は、自身への、両親への、また社会への問い、だそう。重いテーマですが、映画を通して、ぜひ考えてみるのはいかがでしょうか?
日本映画『ふつうの子ども』(英題:How Dare You)提供:HKAFF
その他にも、ノーベル文学賞受賞作家カズオ・イシグロの小説を元にした、石川慶監督、広瀬すず主演の『遠い山なみの光』(英題:A Pale View of Hills)や、呉美保監督が、現代の子ども達のいきいきとした姿を描いた『ふつうの子ども』(英題:How Dare You)など、話題作が豊富にありますので、ぜひチェックしてみてください。
ガラ・プレゼンテーションから香港映画3作品
こちらのカテゴリーからは、最新の香港映画3作が披露されます。
1作目は、『電競女孩』(英題:Gamer Girls)。eスポーツと呼ばれる、競技コンピューターゲームでプロだった主人公が、チーム解散後も情熱を捨てきれずに、競技への復活のため奮闘する姿を、二人の女性監督、白瑋琪(ヴェロニカ・バセット)と楊帆(ソフィー・ヤン)が描きます。
2作目は、『像我這樣的愛情』(英題:Someone Like Me)。
香港映画『像我這樣的愛情』(英題:Someone Like Me)提供:HKAFF
主人公の阿妹(ムイ)は、脳性麻痺を抱えながらも、友人たちと明るく生きてきました。しかし、ある日、彼女の母親が彼女に子宮摘出手術を強く勧めてきます。悩む彼女は、障害者向けの性サービスを提供するボランティアグループを見つけ、そこでケンと出逢います。
日本でも障害者の性について赤裸々に語った『愛について語るときにイケダの語ること』(2021年)は公開後、話題を呼びました。今回、なかなか難しいテーマに挑戦した41歳の女性監督、譚惠貞(タム・ワイチン)。欲望、アイデンティティ、そして自分自身の物語を主張する勇気を探求した作品だそうです。
香港映画『今天應該很高興』(英題:Finch & Midland)中央に立つのは主演のアンソニー・ウォン 提供:HKAFF
3作目は、名優アンソニー・ウォン(黄秋生)主演の『今天應該很高興』(英題:Finch & Midland)です。
香港返還が決まった90年代、多くの香港人が海外へと移住しました。物語の主人公たちも90年代にカナダのオンタリオに移民してきた4人です。香港で人気歌手だった男、高齢の母を献身的に介護する女、生活苦のシングルマザー、そして妻を亡くした男。時が経ち、中年に差し掛かった彼らが、衰えゆく尊厳や希望のかけらを握りしめながら、孤独と向かいあいます。原題の日本語直訳は「今日はとても幸せのはずなのに」です。
今回、香港と日本映画をメインに紹介しましたが、他にも、韓国、台湾、中国、シンガポール、タイ、ベトナム、インドなどからの多くの作品があり、また香港短編映画や、アジアの期待のアニメーション、そしてガザ地区のドキュメンタリー映画など、非常に多彩なプログラムが準備されています。
こちらの電子カタログには、すべての映画の上映日時、場所そしてチケット情報が掲載されていますので、ぜひ、ご覧ください。
芸術の秋、アジアのさまざまな国のさまざまな物語に触れ、笑い、泣き、興奮し、感動し、またいつもは向き合わない問題にも、考えを深めてみるのはどうでしょうか。
香港アジア映画祭
期間:10月22日(水)から11月9日(日)
場所:Broadway Cinematheque、PREMIERE ELEMENTS、MOViE MOViE Pacific Place、MOViE MOViE Cityplaza、GALA CINEMA、PALACE ifc、MY CINEMA YOHO MALL、B+ cinema apm など
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