2023/05/06

日本では、4月から新年度が始まり、新しい生活を謳歌されている方々も多いと思います。4月に限らず、人との新しい出会いは、生涯を通してわたしたちが経験し続けることです。わくわくすることもあれば、緊張したり、不安に感じたりすることもあるでしょう。かく言うわたしも、人と会う仕事をしているにも関わらず、来談者の方と会う時は、それが大人であれ子どもであれ、毎回、緊張の連続です。
それはひとえに、我々は一人一人、自分の心地良いと感じるパーソナルスペースがあり、他者と自分とを区別する境界/バウンダリーを物理的、心理的に持っているからです。国に国境があり、そのラインを超えると争いが起こるように、我々にとっても、個々人のバウンダリーと言うものは、その開け閉めによって、時に自分を守り、時に相手と親しくなるために、とても重要な役割をなしています。

さて、他者とのコミュニケーションにおいて生じる最も大きな緊張や不安は、「何を話したら良いんだろう」とか「相手から自分がどう見られているんだろう」ということを意識しての場合が多いのではないでしょうか。心理学用語で「初頭効果」というものがあります。初対面の人に対して抱いた印象が、その後も影響し続けることが多いという意味です。つまり、初対面である程度、良い印象を与えることが出来れば、その効果は後々まで良い影響を与え続け、その逆もまた然りと言えるのです。そうであれば、初対面では良い印象を相手に与えたいですし、その後のコミュニケーションもスムーズに行く土台を作りたいですよね。

では、人間はコミュニケーションにおいて何を重視しているのでしょうか? 皆さんは、初めて人に会ったとき、その人のどこを見て、どのように判断していますか? 心理学者のアルバート・メラビアンは、人間のコミュニケーションに関する研究の中で、言語情報、つまり「話の内容」と非言語情報、つまり「声のトーン」、「話す速度」、「態度」や「表情」などが矛盾しているとき、その矛盾がどのように相手の印象に影響を与えるかについて研究しました。その結果、人間は聴覚や視覚のような非言語的情報を9割以上、重視することが分かったのです。

例えば、自分がしたプレゼンの後、「内容がまとまっていて分かりやすかったです」と感想を言われても、それをボソッとした声で、不満そうな表情で言われたら、「えっ何か粗相したかな……」と不安になりますよね。このように、人間は言われた内容よりも、聴覚や視覚から得た情報の方を重視し、その印象が強く残ることが分かっています。例えば、よその子どもがスクーターで爆走して自分の子に当たりそうになった時、「あらあら、危ないわよー」と笑いながら言っても、その危なさは伝わらないわけです。鬼の形相で伝えて初めて、相手は、「うわっまずいことをした!」と、言われたことの内容が強く印象付けられる訳です。この法則は、気心知れた間柄でのコミュニケーションでは適用されません。また、その会話の内容が相手にとってポジティブ、もしくはネガティブな気持ちを喚起する内容の時のみ適用されます。

以下に、メラビアンの法則を実生活のコミュニ―ケーションの中で活かすヒントをまとめてみました。

1. 話している内容と声のトーン、大きさ、スピードを合わせましょう
早口であったり、ぼそぼそとした声は、相手に話の内容が伝わりにくいだけでなく、良い印象も与えません。相手に聞き取りやすいトーンと抑揚をつけて話しましょう。「間」を取ることも、時に効果的です。特に、視覚から情報が得られない電話などの場面では、声のトーンや速度は、相手の印象を大きく左右します。自己紹介などの場面では、自分の名前や所属、趣味など、強調したい部分を意識して話すことも効果的です。

2. 話している内容と顔の表情やジェスチャーを合わせましょう
ポジティブな内容を伝えたいときは笑顔で、ネガティブな内容を伝えたいときは真面目な顔で伝えましょう。プレゼンや商談などの場面で、資料に目を落として内容を読み上げるだけでは、伝えたいことは伝わりにくいでしょう。顔を上げて相手の目を適度に見たり、強調したいところでは適度に身振り、手振りを交えることも効果的です。また、職業やその場に即した服装、髪型が好印象を与えることもあるでしょう。

3. 相手に伝わりやすい言葉を選びましょう
メラビアンの法則では、言語情報と非言語情報の間に矛盾がある時、言語情報は7%しか相手に伝わらないことが分かっています。矛盾が無ければ、勿論、話の内容は7%より格段に伝わりやすくなるわけですから、上記の1、2以外に、相手に伝わりやすい言葉や内容、展開を心掛けることは大切です。特に、メールなどは、言語情報のみが印象を左右する訳ですから、理解しやすい表現で、要点をまとめて伝えるなどを心掛けると良いでしょう。

新しい人との出会いが増えるこれからの季節、是非、「メラビアンの法則」を活かして、持続する好印象を手に入れましょう!



河合 まり絵

臨床心理士。日本ではスクールカウンセラーとして、不登校児童や別室登校児童、発達に偏りのある児童への心理的サポートや、精神科クリニックで、パニック障害、PTSD、うつ病、摂食障害などの個別カウンセリングを実施。リワーク外来では、精神疾患などで休職中の患者に対し集団療法を、また、復職後の企業内フォローアップ・カウンセリングを実施。刑務所内では、グループ矯正教育をするなど、教育、医療、産業、司法の分野で臨床経験を積む。香港に移住してからは、3児の子育てに追われるも、縁あって精神科クリニックに復職。

 

OT & P Healthcare/ Mind WorX Clinic
MindWorXはOT and P Healthcareが運営する精神科専門のクリニックです。
中環駅(セントラル)から徒歩2分の場所に位置しており、簡単な日本語を話せる医師と、日本人の臨床心理士が在籍しておりますので、薬の処方と共にカウンセリングを並行して受けることが可能です。投薬はしたくないけれど、カウンセリングを受けたいという方もご相談下さい。

以下のようなことでお困りの方は、是非、一度、ご相談下さい。
・夜、なかなか眠りにつけない、または、朝、早くに目が覚めてしまいすっきりしない
・不安や心配な気持ちがいつも頭を離れない
・過度に食べ過ぎてしまう、または、食欲がない
・子育てに疲れている
・コロナ禍でストレスが溜まっている
・夫や妻、パートナーや他者との関係に悩んでいる など

初回予約の際に日本語でのサポートが必要な方は、marie.kawai@otandp.comにemail を頂ければ、日本語での対応が可能です。

Mind WorX Clinic
OT&P – Internationally Accredited Medical Clinics in Hong Kong (otandp.com)
6/F Century Square, 1 D’Aguilar Street, Central, HK
中環徳己立街1號世紀廣場6樓
Tel: +852 2468 3577
Fax: +852 2111 3850
Appointment WhatsApp: +852 6339 2639


 

Hong Kong LEI ではまり絵先生の無料の質問箱を設置しています。心の不安や悩みなど、カウンセリングはしたことがないけど、カウンセリングについて知りたい方などお申込みください。詳しくは画面をクリック!

コメントをありがとうございます。コメントは承認審査後に閲覧可能になります。少々お待ちください

意見を投稿する

Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。

Translate »