2023/08/10

こんにちは。沙季です。

５歳の息子と、フィリピン人ヘルパーさんと３人暮らしをしながら、日本食レストランのメニュー開発をしているワーキングマザーです。

前回のコラムでは、体調を崩したことをきっかけに、香港式健康法から学ぶ自分の体との向き合い方について書きましたが、

あれから引き続き体調が優れず、先月のコラムはお休みをいただきました。

そんな時は、人のありがたみをいつも以上に実感しますね。

ヘルパーさんが息子を見てくれている間に、静かな寝室でフルーツを食べながら、ふと、ある出来事を思い出しました。

わたしが体調を崩すと、ヘルパーさんが好物の桃の缶詰をカットしてくれます。ありがたい。

日本で息子と２人で暮らしていた頃に、２人揃ってコロナに感染した時のことです。

通っていた保育園は休園になり、私たちも10日間の自宅隔離になりました。

各方面に迷惑をかけてしまい、申し訳なくて申し訳なくて…。

しかも当時のコロナは、高熱や、嗅覚・味覚障害が強い症状として出るのが特徴で、わたしもかなり苦しみました。

当時息子はまだ２歳。

わたしの心配をよそに、彼はとても元気でした。

本当によかった。と感謝しながら床に転がり、息子を眺めます。

散らかった部屋で息子がアイスを食べながら動き回ります。

部屋中に点々と落ちるアイスの汁。

荒れ果てすぎて全体はお見せできませんが、部屋中がこの状態。

ぁあ、拭かなくちゃ。でも動けない。。。

もういいや明日で。今日はもう寝よう。

と荒れ果てたリビングはそのまま2階の寝室で寝ました。

次の朝、まだまだ熱は下がりません。

これが噂のデルタか。今まで経験したことのない高熱でした。

ですが、息子は引き続き元気なので、とりあえず朦朧としながらリビングに向かいます。

そこで私が見たものは、

アイスの汁に向かってすごい数のありの行列が…。

家の中なのに！なんで？どこから？

息子は、わーありさん！と喜んでいます。

地獄だ。。。

空気の入れ替えをした際、網戸が少し空いていたようで、そこから入ってきたようでした。

朦朧としながら部屋を片付け、床を水拭きしました。

やっと綺麗になり、息子にはテレビを見せながら、気付けば気を失うように寝ていました。

30分程経ったでしょうか？

なんとそこにはまたありが！！！！

え！なんで！！！

ネットで検索すると、どうやらありは、自分の通った道に蟻酸という酸を出して道標にするそうなのです。

蟻酸をなくすにはお酢で拭き取るしかない。

すぐにキッチンに行きお酢を探します。

幸運なことにありました。頂き物の高級赤酢が。

背に腹は代えられず、高級赤酢を含ませたペーパーで部屋中拭きました。

いつもならこぼされそうなものは息子の手の届かないところに置くのに、その時は朦朧としていて床に置いていたものだから、案の定息子に瓶を倒されます。

流れゆく赤酢…。

残り少ない赤酢で掃除しながら涙が出てきました。

辛い。辛すぎる。

誰か助けて〜。

ですが、当時のコロナの辛いところで、誰か呼ぼうにも呼べません。

感染者の私と息子でこの10日間を乗り切るしかありません。

そんな中、近所の友人が毎日手作りのご飯を玄関先に置いてくれました。

もちろん顔を合わせることはできないのですが、

玄関先に置かれたそのごはんを受け取るときに、愛情に触れとても嬉しかったのを覚えています。

おかげ様で10日間の自宅隔離を無事終了でき、わたしも息子も予後がよかったので一件落着です。

もしわたしの体調が急変して死んでしまったら、一体この子はどうなるのだろうか、と心配する程でしたので、この時の事は、大きな出来事としてわたしの心に残っており、いつか文章に残してみたいと思っていたことでした。

香港に移住し、体調を崩す度にこの時のことを思い出します。

ゆっくり寝かせてもらえる幸せ。

部屋の清潔が保たれる幸せ。

安心して息子を預けられる幸せ。

もし、わたしが気を失ったら、すぐに誰か大人に気付いてもらえる幸せ。笑

ヘルパーさんが「大丈夫ですか？」とフィリピン式お粥やフルーツ、ポカリのセットを部屋に持ってきてくれる度、感謝の気持ちが溢れます。

人は1人では生きていけない。

今回は、体調不良の時に感じる、人のありがたみのお話しでした。

それでは今回も読んでいただきありがとうございました。

毎月10日に連載しておりますので、また次回もお待ちしております！

筆者プロフィール

大坪沙季（Saki Otsubo）

東京の大手料理教室で講師を５年程務め、
その後独立。妊娠出産を機に湘南へ移住し、
レシピ開発やフードコーディネーターとして活動。
2022年香港に移住。
某日系F&B Companyにメニュー開発者として所属。
趣味は料理、金継ぎ、ゴロゴロする事。
息子とヘルパーさんと３人で暮らしながら仕事をするワーキングマザー。

instagram　https://www.instagram.com/_sakioo_