2023/09/19
これまで色々なテーマで、暮らしの中で活用でき、心を健やかに保つ為の心理学を紹介してきましたが、今回は、心理療法を体験した方の声をお届けします。通常、クリニックに来院された方に感想文をお願いする事はありませんが、今回はクリニック外で携わった方から、感想をお聞きすることが出来たので、ご本人の了承を得て掲載したいと思います。
Aさん(40代女性)は3年前にご家族で香港に引っ越して来られました。気分が塞ぎがちで外出も辛いということで紹介を受け、うつや不安障害に効果があるとされる「認知行動療法」のセッションを数回、試すことにしました。認知行動療法を簡単に説明すると、自分自身の考え方のクセを知り、物事の見方、捉え方の引き出しを増やすことで、より自分が生きやすい考え方へと修正していく治療方法です。また、行動面で変えられる部分を探し、アクションを起こすことで、不安な気持ちや落ち込んだ気持ちに変化をもたらす効果も期待できます。以下は、そんな認知行動療法を受けたAさんの記述です。
「仕事、育児、引っ越しなどのストレスが、あるとき急に抱えきれなくなり、数年前に不安神経症を発症したわたしは、自分がうつ予備軍かもしれないことを認識していました。その為、ヨガをしたり、マインドフルネスを実践したりして、なんとか元気にやり過ごしていました。コロナの規制が厳しい間も、皆と同じように香港で鎖国生活をしていました。
そんな時、去年ごろから親しい友達が徐々に香港から離れていき、わたし自身も香港に残るか分からない中、気付かないうちに、孤独感、将来に対する不安などが積み重なり、気分がどんどん重くなって、遂には日常生活でも様々な場面でやる気が出なくなりました。プレ更年期障害という人もいましたが、わたしはこれがうつなんだろうなと実感していたので、医者にかかることにしました。自分にあった薬が処方されるまで何度も通院して、精神的にすごくしんどくなりました。そんな時、認知行動療法に出会ったのです。当初は名前だけを聞いてもよく分からず、それが実際にどう自分に役に立つのか分かりませんでした。でも、以前のように元気になりたい一心で、藁にもすがる思いで、セッションを受けることにしました。
認知行動療法を学ぶ時に、まずノートとペンが必要です。初めに学ぶことは、普段の生活の中で、自分が感じた気分や行動に影響を与えた出来事を書き留めることです。キッチンに洗い物が山積みになっているのを見て、気分が憂鬱になったこと、ありませんか? その時の気分や取った行動を書き留めるのです。初めは自分の気持ちや行動を書き出すことに難しさを感じましたが、慣れると辛さを感じなくなりました。状況をどのように捉えて、どのように考えるか、ということが認知なんだと実感しました。そして、日々書いていくうちに、自分の思考が自分を追い込んでいる部分やパターンを自然と発見できるようになりました。それが自分の考え方のクセであり、いわゆる認知のゆがみだったのです。
わたしはこのさわりの段階で、すでに認知行動療法による自分の変化を実感できるようになりました。気分や行動に影響を与える状況に出会ったら、その時の気分や普段だったらやるであろう行動以外に、違う考え方はないか、今の自分にできるポジティブな行動はないかを考えるようになったのです。キッチンに溜まった洗い物に対しても、『嫌だけど、音楽でもかけながら、いま洗った方が、明日の朝にそれを見てもっと嫌な気持ちになるよりマシだ』という風に考えられるようになり、しまいには、『さっさと洗ってキレイになったキッチンで気分がスッキリする方が良いな』と以前のように考えられるようになったのです。そんなちょっとした改善ができた自分を、『よくやった』と褒めることもできるようになりました。他人と同じレベルで自分を比べ評価するのではなく、自分でできる達成可能な目標を作り、それを達成することに満足感を持てるようになり、そうしているうちに、体調もどんどん以前のように良くなりました。
人それぞれに向き不向きがあります。でも行動を起こす前に諦めるより、少しでもやってみてから判断することにしませんか? そう考えられるようになること自体が『考え方のクセ』を改善する第一歩だと思います。わたしはまだまだ認知行動療法のさわりしか習っていませんが、出会えたことに感謝しています。うつではない方でも、認知行動療法を知り、実践することによって、普段の生活や自分と関わる人に対するアプローチの仕方を見つめ直し、改善することができる良いツールだと思います。」
自分の気持ちや行動と向き合うことは、時に非常に辛い作業ですが、Aさんはご自身と真摯に向き合い、何が自分を生きやすくするかを考えた結果、勇気をもって少しずつ、考え方と行動の幅を広げて行かれました。もし、同じように小さな一歩の後押しがあれば、あなたもなりたい自分になれるかもしれません。
河合 まり絵
臨床心理士。日本ではスクールカウンセラーとして、不登校児童や別室登校児童、発達に偏りのある児童への心理的サポートや、精神科クリニックで、パニック障害、PTSD、うつ病、摂食障害などの個別カウンセリングを実施。リワーク外来では、精神疾患などで休職中の患者に対し集団療法を、また、復職後の企業内フォローアップ・カウンセリングを実施。刑務所内では、グループ矯正教育をするなど、教育、医療、産業、司法の分野で臨床経験を積む。香港に移住してからは、3児の子育てに追われるも、縁あって精神科クリニックに復職。
OT & P Healthcare/ Mind WorX Clinic
MindWorXはOT and P Healthcareが運営する精神科専門のクリニックです。
中環駅(セントラル)から徒歩2分の場所に位置しており、簡単な日本語を話せる医師と、日本人の臨床心理士が在籍しておりますので、薬の処方と共にカウンセリングを並行して受けることが可能です。投薬はしたくないけれど、カウンセリングを受けたいという方もご相談下さい。
以下のようなことでお困りの方は、是非、一度、ご相談下さい。
・夜、なかなか眠りにつけない、または、朝、早くに目が覚めてしまいすっきりしない
・不安や心配な気持ちがいつも頭を離れない
・過度に食べ過ぎてしまう、または、食欲がない
・子育てに疲れている
・コロナ禍でストレスが溜まっている
・夫や妻、パートナーや他者との関係に悩んでいる など
初回予約の際に日本語でのサポートが必要な方は、marie.kawai@otandp.comにemail を頂ければ、日本語での対応が可能です。
Mind WorX Clinic
OT&P – Internationally Accredited Medical Clinics in Hong Kong (otandp.com)
6/F Century Square, 1 D’Aguilar Street, Central, HK
中環徳己立街1號世紀廣場6樓
Tel: +852 2468 3577
Fax: +852 2111 3850
Appointment WhatsApp: +852 6339 2639
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