2023/10/23
10月初旬、香港にやってきた台風14号。その名は『コイヌ』でした。
この『コイヌ』。名前は可愛らしいものの、台風警報シグナル9そして『黒色爆雨警告信号』をもたらしました。また9月にやってきた台風『海葵(ハイクイ、中国語でイソギンチャクの意)』の時ほどではありませんが、香港各地で水害も報告されました。
香港で、雨が降ることを『落雨』と言うのですが、実は土砂降りの雨になると、すごい表現があります。それは『落狗屎』(狗=犬)。落ちてくる犬の屎!台風『コイヌ』がまさに『落狗屎』をもたらしたと言うわけです。下品な表現ではありますが、でも『落狗屎!』と叫びたくなるような気持ちはわかります。前回の大雨では、地下鉄の駅に水が流れ込み、道路は陥没し、水没した車は身動きが取れなくなり、家の中に小川が流れているような状態になった人々さえいたのですから。
この表現、英語で土砂降りの雨を意味する『it’s raining cats and dogs』から来たのだとか。昔世代の香港人はDogs など複数形の『s』を『シー』と発音する癖があったため、『Dogシー』になりそれが『狗屎(ガウシー)』となり、また猫に関しては省略してしまったのだとか。
ちなみに台風は、通常1号、2号と番号で示される日本。ですが今回『コイヌ』がやってきたことで、実はそれぞれの台風には名前があるということが日本のメディアでも取り上げられましたね。北西太平洋と南シナ海付近の14の国及び地域から成り立つ『台風委員会』は、各構成メンバーから10個ずつ名前を提出してもらい、それをリスト化。そして発生した台風順にリストに並ぶ名前をつけていきます。日本が提出している名前は今回の『コイヌ』、そして『ヤギ』『ウサギ』など星座に因んでいる名前だそうで。
香港では『狗』を使ったこんな表現もあります。
『狗屁』
犬のおなら。
これは現実味のないことや不誠実なことを言われ、『くだらない!』とか『ありえない!』と返す時に使います。『放屁』も同義語です。
シグナル8以上の台風警報が出ている際の走行は保険適応外になるので、タクシーもほとんどいなくなります。ただ中には割増料金を設けて走る強者ドライバーがいるのも事実。今回、『コイヌ』が猛威を振るう中、HK$35(約650円)のタクシー運賃に『割増』としてHK$700(約13,000円)*というとてつもない額を請求したタクシーが話題に上りました。こんな時、請求された側はまさに『狗屁』!と言って怒るに違いありません。
台風『コイヌ』がもたらした『落狗屎』と『狗屁』。面白い表現として覚えておくのは良いですが、文字からお察しがつくようにあまり品のいい言葉ではありませんので、品行方正な皆様が自ら使用することはオススメしません!
さて、犬。香港でもペットとしての犬の人気は高いようで、街を歩くと小さい犬、大きい犬、着飾った犬など、様々な犬を見かけます。
そんなわたしも、幼い頃から犬を飼うのが夢。この間も原稿を書くフリをしながらこっそりネットで犬図鑑を見ていました。すると横から長男がやってきて、「こういうのとか、こういう犬が欲しい!」と指差しました。
『魔天使』『貴婦狗』
マルチーズとプードルでした。
なんて素敵なネーミング!
犬より漢字名が気になり始めたわたしの目に、動物名を組み合わせた名前の犬たちが目に飛び込んできました。
ここで問題です。これは何犬でしょう。
『松鼠(リス)狗』『胡蝶狗』『銀狐狗』『法国老虎狗』
リス、ちょうちょうに銀ギツネ、そしてフランスの虎……?
正解は
『松鼠狗=ポメラニアン』
『胡蝶狗=パピヨン』
『銀狐狗=日本スピッツ』
『法国老虎狗=フレンチブル』
でした!
犬の写真などを見始めると、あの犬もこの犬も可愛い! 犬たちと一緒にビーチを駆け回るとか、素敵だなぁ! とわたしの夢は膨らむばかり。
でももし我が家で犬を飼うことになったら、その時は犬種のリクエストは一切受け付けないと子どもたちには伝えてあります。なぜなら香港には『流浪狗』等を保護する非営利のドッグシェルターがいっぱいあるので、そこから家を必要とするワンちゃんを迎える(多少の支払いは生じます)ことに決めているから。『流浪狗』とは野良犬のことなのですが、『流浪狗』と言うとなんだか自分の意思でさすらっていて、悪い奴が来たらやっつけてくれるような雰囲気が出ますね。『るろうに剣心』の見過ぎでしょうか。
もしこの記事を読んで犬が欲しくなってしまった方は、是非『流浪動物収容所』もしくは『Animal Shelter』を検索して、温かい家庭に引き取られるのを待っているワンちゃんを探してみてくださいね。
さて、降水量の少なくなる10月。空からの『落狗屎』はあまり心配しなくて良いですが、気を緩めると足元に落ちている本物の犬屎を踏んでしまうなんてこともありますので、街を歩く時に油断は禁物ですよ!
それではまた!
*2023年10月10日 1HKD=19.01 JPY
小林杏 (Anne Kobayashi)
東京都出身、青山学院大学仏文科卒。ニュージーランド、日本、フランス、英国での就業経験あり。ロンドンでの出産子育てを経て、2020年に来港。今まで住んできた土地のように、香港も愛おしい場所となりつつある今日この頃。趣味は読書、舞台芸術鑑賞とカンフー映画鑑賞。
Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。
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