2024/04/20
「Hong Kong LEI – Cover Story」は、香港で輝いている人をご紹介するシリーズ企画です。当記事は、健康と食の安全をお届けする Tasting Table Japan Premium より当企画への賛同と協賛をいただき制作しています。
ときめくケーキ、作っています!
Kiyokaは2024年5月上旬にプリンスビルディングに店舗を移し、新規オープン予定。注文やお問い合わせはWebサイトより可能。
目次
〈美を追求するパティシエール〉
〈出会いに支えられ成長〉
〈受け継いだ良い技術を広めたい〉
〈松原明日香さんに3つの質問〉
〈美を追求するパティシエール〉
午前11時、ケーキショップKiyokaのシェフパティシエール、松原明日香さんがスタッフと共に彩り豊かなケーキを次々と運んでくると、開店前の店は花やかな雰囲気に包まれた。
パティシエールは女性のパティシエ、シェフパティシエールは女性の製菓長を意味する。Kiyokaは明日香さんの出身地、京都の香りが感じられるようにと命名され、2021年に香港の高級ショッピングモール、ランドマーク内にオープンした*。店のショーケースに並ぶのは、繊細な甘み、雅な色彩、そして目を楽しませるフォルムが特徴のケーキの数々。フレンチを基本に、厳選された日本産のフルーツを使ったものや、抹茶や柚子など和の風味を加えたものもある。ここ香港で人気があるのは、ケーキでありながらも京都の洗練された和を感じさせるからだろう。
Kiyoka「ほうじ茶ロールケーキ」
レシピについて「味の組み合わせがパッとひらめく時もあれば、形がバッと浮かんでくる時もあります」と言う彼女。海外の料理雑誌や、バーで飲むカクテルの味の組み合わせが参考になることもあるが、何よりも昔お世話になったシェフの「味はもちろん、ビジュアルからお客様を惹きつける時代が来る。だから美しいものを作りなさい」と言う教えを大切にしていると言う。そしてSNSの普及により「映え」に訴える時代となった今、「料理、絵画、自然など、周囲にある美しいものはバランスがあってこそだと教わり、自分でもそれを常に意識しています」と言う。
ケーキ職人として美にこだわる明日香さん。「スタッフには絶対に美しく働いてください、と伝えています。綺麗なものは、綺麗な環境でないとできないから。一番大切なことだと徹底しています」。常に清潔で無駄のないキッチンで、職人が丹精込めて作り出す。ゆえにKiyokaのケーキは優美なのだ。
写真撮影に臨む明日香さん。
〈出会いに支えられ成長〉
高校で進路を考えた際「他の選択肢と比較して、ビジョンをはっきり描けたのがパティシエールへの道だった」と言う彼女は、辻調理師専門学校へ通い、卒業後は数々のケーキ店やレストランで経験を積んだ。多くは12時間以上の立ち仕事や週6日勤務など体力的に厳しい職場であったが、明日香さんは「大変でしたけど…すごく楽しかったです!」と言う。今でも当時お世話になったシェフらを敬愛し、共に働いた仲間と連絡を取り合う。彼女の「楽しかった!」には、素晴らしい出会いに支えられ、自身が職人として、そして仕事人として成長していく喜びがあったことが伺える。
京都のレストランで勤めていた頃。先輩シェフたちと一緒に。
また前述した「美のバランス」のように、教わってきたことは今も大切にし、そして実践している。専門学校時代の先生の言葉もその一つだ。「体調管理ができなければ社会人失格!そう言われたことがずっと頭に残っていて、レストラン時代、風邪は絶対に引かなかったです」と言う。
2010年に渡仏。本場のフランス料理を学び、一緒に働いた仲間からも刺激を受けた。「彼らの働き方を見て、自分の主張や、自分の時間を大切にすることを学びました」。
香港行きの話は、帰国後に大阪のミシュランの星付きレストランでシェフパティシエールとして勤めていた時にやってきた。飲食部門も抱える香港の麗新グループの社長がレストランを訪れ、明日香さんの作ったデザートに惚れ込んだのだ。
フランス修行時代の明日香さん。本場のフレンチレストランで働き、たくさんの刺激を受けた。
〈受け継いだ良い技術を広めたい〉
正式なオファーをもらい2014年に来港したが、当初「日本に帰ろうかなと悩んだ」と言う明日香さん。整ったキッチンで、仕事には細部までこだわる仲間達と働いてきた彼女の目に、香港は全くの異文化の地として映ったからだ。
周囲の温かい支えを得、一年後には香港に残って頑張ると腹を決めた。「グループ内レストランのデザートメニュー提案、サポート等、色々こなし、仕事にも慣れていきました。その上、自分の時間もあり、やりたいこともできる生活でしたが、これでいいのかなって、だんだんモヤモヤしてきて」と物足りなさを感じていったと言う。
グループ内の先輩シェフに相談すると「経験と、持っている高い技術を活かして自分の店を持ちたい、と積極的に伝えるべき」と背中を押され、関係者にその思いを話すようになった。
その頃、レストラン業界がコロナによって不況に陥り、明日香さんはオンラインでケーキの個人オーダーを受けていた。「それがすごく好評で。じゃ、お店も出そうか、となりました」と言う。ついに実力を認められ、2021年に自身が監修するKiyokaが誕生したのだ。
レストラン営業に制限があったコロナ禍にオンラインでケーキを受注し、ファンを作っていった。
「お客様に喜んでもらえた時やスタッフの成長を見た時、やりがいを感じます」と言う明日香さんの今の目標は店舗を増やすこと。その為に店の責任者として欠かせないスタッフ育成について彼女はこんな風に話してくれた。「彼らの人生を応援したいから、わたしはKiyokaで、できる限りの技術を教えてあげたいと思っています。彼らが次の経験を積む為に旅立っていくのは厭いません。いいものを身につけ、それを広めて欲しいですね。それが一番!」。自身が先輩たちから受け継いだ料理やケーキに対する情熱を、ここ香港の地で後輩へ伝えていくことは、目の前の目標と同じくらい大切なことなのだろう。
インタビュー終盤、店の前にはケーキを買い求める客の列ができていた。「お客様にはKiyokaのケーキを食べた時にスパークルっていうか…ハっとして、それからおいしい!って、ときめいてもらえたら嬉しいな」と明日香さんはにっこりと笑った。
家に帰って筆者も季節の桜ケーキをいただいた。一口頬張ると、彼女のいう「ときめき」が口と鼻腔を満たし、幸せな気分を運んできてくれた。
Kiyoka「チョコレートタルト」
* Kiyokaは2024年5月上旬にプリンスビルディングに店舗を移し、新規オープン予定。
〈松原明日香さんに3つの質問〉
Q1 仕事以外で好きなことを教えてください
音楽を聴くのが好きです。ハウス、ファンク、ヒップホップなどよく聴きますね。キッチンでも音楽をかけています。音楽が流れているととても気分が乗るので。
Q2 オフの時間はどんなふうに過ごしますか。
家で猫とのんびりしたり、DJの彼にミキシングを教えてもらったり。また夕日を見にお散歩に行ったりします。運動不足なので、これからは仕事帰りにピラティスをしたいなと思っています。
ピークをナイトハイキング
Q3 「推し」はいますか?
ピカチュウがすごく好き。色々なピカチュウのプロダクトが本当に可愛くて。ピカチュウとコラボしたいという夢があるので、言い続けたら叶うかな、って思っています。あとは、ジャスティン&ヘイリー・ビーバー夫妻のファンで、彼らのインスタもフォローしていますし、音楽も聴いています!
Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。
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