2024/06/15


馬拉糕
マーラーカオ
蒸しスポンジケーキ

海外に住む娘から一枚の写真が送られてきました。その写真には、姉と母が一緒に作った馬拉糕(マーラーカオ 蒸しスポンジケーキ)が写っていました。姉は長い間、住み込みのメイドと暮らしていたため、料理の経験はほとんどありませんでした。一方、母は何とか指導を頑張り、馬拉糕らしきものを完成させたのですが、翌日になると硬くなり、縦の気泡もなく蒸し直さないとふわふわ感が戻らなかったのです。

姉と母が作った馬拉糕

そんな姉の料理を見て、まともな料理が出来ない人さえケーキ作りが出来て、悔しい気持ちが込み上げてきました(笑)。もしかすると、負けず嫌いの性格がそうさせたのかもしれません。わたしは自分の拘りの馬拉糕を作り、姉に見せつけたいという強い気持ちに駆られました。

香港の朝の、飲茶の店に、蒸しあがったばかりの馬拉糕(マーラーカオ)の甘い香りがお客様の心を奪います。蒸し器の蓋を開けると、湯気と共にふわりとした茶色スポンジケーキが姿を表します。この馬拉糕は、軽く、弾力があり、ふわふわで、食感は軽めのカステラを思わせます。温かな馬拉糕を口に運ぶと、甘さとともに卵の風味が広がり、一口ごとに幸せが感じられます。

わたしの拘りは、まず最低限の重曹を使うことです。そして、重曹を入れても食べたときにその存在が分からないようにすることです。さらに、翌日食べても柔らかさやしっとりさを保つことが重要です。これらのポイントを抑えて自分のオリジナル馬拉糕を作るために、何度も試作を繰り返しました。

1994年に出版された江獻珠さんの『中國點心製作圖解』には、馬拉糕の名前の由来についての一説が記されていました。その説によれば、馬拉糕の色がマレーシア人の肌色に似ているため、香港人はそれをそう呼ぶようになったということです。しかし、江獻珠さんはこの説には根拠が乏しく、信じるに値しないと強調していました。

もう一つの説があります。2000年頃に出版された陳照炎さんの『香港小吃』の中で、馬拉糕はマレーシア人が昔ながらに作っていたケーキだと紹介されていました。この説は、より信憑性が高いと感じました。

このルートを深掘りしていくと、2021年にTalter誌でGavin Yeungさんが書いた記事に辿り着きました。彼の記事によれば、かつてイギリスの植民地であったマレーシアでは、スポンジケーキをオーブンでなく、蒸籠で蒸します。これがマレーシアから中国の広東に伝わったというのです。そして、広東で様々な改良が加えられ、今の香港の飲茶で人気のある馬拉糕が誕生したのだということになります。

名前の由来についても様々な説があり、作り方もまた多岐にわたります。これまでの知識と経験を活かしながら、自分だけの馬拉糕を作り始めました。重曹の量を調整し、翌日も柔らかさとしっとりさを保つための工夫を凝らしました。

一般の香港レストランでは、馬拉糕を作る際にカンスイというアルカリ性の化学物質を使用することが多いです。カンスイには、乳酸発酵した生地の酸味を中和し、ケーキの色を茶色にするという二つの重要な働きがあります。しかし、わたしはカンスイアレルギーがあるため、それを使用することができません。

その代わりに、わたしはカンスイを抜いて発酵風味を残しつつ、茶色に仕上げるために、香港の溜まり醤油を使うことを思いつきました。この溜まり醤油は、風味を豊かにし、同時にケーキに深い茶色を与えることができるのです。

Tips: 先に卵と油分を乳化したらケーキのパサつき感はなくなります。

 

材料直径12cm蒸籠約4個分

ヨーグルト種

ヨーグルト………………………….100g

小麦粉…………………………….100g

…………………………….100g

はちみつ…………………………….10g

耐糖性酵母…………………………….0.1g

 

液体

溶かしバター…………………………….40g

太白胡麻油…………………….…….40g

卵…………………….…….200g

黒糖…………………….…….70g

白砂糖…………………….…….75g

耐糖性酵母…………………….…….1g

香港溜まり醤油…………………….…….10g

 

薄力粉…………………………….100g

ミルクパウダー…………………………….10g

カスタードパウダー…………………………….10g

重曹…………………….…….1g

 

<作り方>

1.ヨーグルト種の材料を全て合わせて、常温で一晩発酵させます。

2.液体をハンドミキサーでよくかき混ぜます。乳化したら1の発酵したヨーグルト種を加え、ハンドミキサーでかき混ぜます。

3.粉を2回ほど振ってから2の液体に加え、再びハンドミキサーでよくかき混ぜます。生地を漉し器で漉して、だまを取り除きます。30度で2時間発酵します。

4.蒸籠にオーブンペーパーを敷き、3の生地を流し込み、トントンして、気泡を均一に整えます。

5.蒸気が立ち上ったら30分間蒸します。


雲姐(ワンジェ)

料理研究家。香港に生まれる。幼少期、平日は祖母、週末は料理が趣味だった父の手料理を食べて過ごす。オーストラリアへ移住を経て、結婚を機に日本へ移り20年以上。中国国際薬膳師、発酵食品ソムリエ、発酵ライフアドバイザーの資格を持ち、中華圏および日本の食文化への造詣も深い。現在は、日本の人々に香港料理を伝えるべく東京で活動中。

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