2024/08/01

先日、「三俠四義」というコンサートに行ってきました。Mirror 歌曲の高音ボーカル部分でのびやかな美声を響かせる艶やかな美青年、Jeremy Lee(李駿傑)の姿を拝むのが主な目的です。このコンサートは1970~90年代にかけての香港ポップカルチャーの名作を蘇らせるという趣旨のもと、香港の大御所音楽プロデューサー「Carl 叔叔」ことCarl Wong (王雙駿)が監督を務めた文化的意義の高いものでした。香港人なら誰でも知る名曲をCarl 叔叔がアレンジし、一流のミュージシャンの演奏をバックにJeremy 、Wilson Ng(吳林峰)Yoyo Sham(岑寧兒)Tang Siu Hau(鄧小巧)という4人の実力派若手シンガーたちが歌いあげる、という非常に贅沢なコンサートだったのです。

「三侠四義」のポスターは香港で絶大な人気を誇った作家、金庸氏の作品の挿絵をモチーフにしたもの。Ⓒjeremylee_tied

このコンサートもそうですが、Mirrorのファンとなって得ることができたベネフィットの一つに、「旬の香港の音楽シーンに触れられること」があります。常日頃ラジオを聴くので流行の曲は覚えてしまいますし、日本で言う「レコード大賞」である「新城勁爆頒獎禮」や「叱咤樂壇流行榜頒獎典禮」などの授賞式にMirrorを見に行けば、その年に活躍した歌手やバンドのパフォーマンスをナマで鑑賞できます。また、Mirrorのメンバーが他のアーティストとコラボすれば、必然的にそのアーティストにも興味が湧き、彼らの曲を聴くことになります。例えばJeremy は歌姫Serrini(梁嘉茵)と、Anson Kong (※)とLokman Yeung (楊樂文)は実力派バンドNowhere Boysとそれぞれコラボ作品を発表。香港音楽に疎いわたしに新たなアーティスト、新たな音楽に触れる機会を与えてくれました。香港が誇る広東語ラッパーTomFatKi, Billy Choiなどは、Edan (呂爵安)がIG Story でメンションしなければ知ることはなかったと思います。

Mirrorメンバーのソロコンサートは香港音楽界の大物がにゲスト出演。こちらは人気歌手Jay Fung(馮允謙)。Ⓒedan_alamode
世界ツアーを敢行し話題になった、香港が誇るバンドRubberBandもAKのコンサートにゲスト出演。Ⓒedan_alamode

香港の流行歌の魅力、それは何といっても広東語だとわたしは感じています。香港で流行している曲の多くは「廣東歌」。日常会話では荒っぽく喧嘩腰に聞こえる広東語が、旋律に乗るとあら不思議。なめらかで艶やかでロマンチックな響きに変化するではありませんか。そのギャップ、中毒性高しです。そして歌詞が漢字で表される点も大きな魅力。ラップやロックのように洋楽のイメージが強いジャンルの曲も、漢字で表現されることで情報量が増え、意味も味わいもぐっと深いものとなるのです。メロディーの音調に合う漢字をあてはめ、歌としての意味も成立させながら組み立てる作業は「作詞」ではなく「填詩」と呼ばれる高度な知的作業。Wyman Wong(黃偉文)やYiu-fai Chow(周耀輝)が紡ぎだす詩はまさに芸術。そして、それらの歌をパフォームする才能・実力に恵まれたアーティストの多さ、ステージデザインの華やかさなども忘れてはいけません。

Mirrorのメンバーが他のアーティストと組んでコンサートをすることもアリ。写真左からMarf (邱彥筒)、Jeffrey (魏浚笙)、Edan @Mirror(呂爵安)、Jace (陳凱詠)@edan.nasa

そんな訳でMirrorを軸に視界が広がり、香港音楽をもっともっと知りたいと学びの最中のわたしですが、先日、日本に一時帰国し、「今の」香港音楽の存在感のなさを実感してしまいました。東京で日常生活を送る間、耳にするのはJ-POP(日本)、洋楽、K-POP(韓国)のみ。広東語の「か」の字はおろか中国語の音楽すら耳にすることはありません。ちなみにカラオケで扱われている香港の作品は80年代後半から90年代前半のものがほとんどで、日本における香港音楽はこの時代からアップデートされていない様子が見てとれます。魅力溢れる「今」の香港音楽の存在感が薄いというのは悲しいものです。

 

嬉しいこともありました。滞在中、「C-POP スター列伝~スターたちの魅力を語る」という中華圏の流行歌に関する講座が開講されたことです。講師はかつて存在したアジア系音楽雑誌「POP ASIA」で編集長を務めた大御所。会場には中華ポップ、特に香港音楽が元気だった頃から香港音楽を支持してきたと思われるコアなファンも集合。そんな日本における香港音楽の軸ともいえる面々が集まった講座の中でMirror、そして今人気のシンガーソングライターTerrence Lam (林家謙)が絶賛されたのです。香港音楽に目の肥えた日本人の愛好者に、今の香港音楽が良いと認知されていることを知り、力強く感じました。ここに集まった方々がオピニオンリーダーとなって、今の香港音楽が日本でもっと広がるようにと、心から祈る今日この頃です。

日本でAnson Loのポストカードに出会えたのは嬉しいサプライズでした。ⒸAnson Lo国際後援会(日本)

嬉しいことはもう一つ。何気なく入った書店で、Anson Lo (盧瀚霆)ファンクラブの日本支部が作成したポストカードが無料配布されていたことです。こういった在日鏡粉たちの草の根活動も、Anson Lo ひいてはMirror ひいては香港音楽の認知度に貢献するはず。

Mirrorを含めた今の香港音楽シーンが、日本で盛り上がる日が早く来ますように。
香港音楽に触れるきっかけを作ってくれてありがとう、Mirror!

 


紅磡リンダ(ほんはむ りんだ)
20年にわたる英国生活、広告代理店勤務、編集者稼業に終止符を打ち、2019年に香港に移住。
移住とともに人生初めてアイドルに目覚め、Mirror 沼に沈没。沼から鏡(ミラー)越しに見える、新しい香港を発見する毎日を送る。

Instagram 紅磡リンダ【星版】hunghom_linda_qedan


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2 件の意見

  • Linda Hung-Hom より:

    Thank you for your message. My mission is to promote the Mirror to Japanese people. Making Japanese subtitles to their songs, and writing magazine article are part of that mission! I would be delighted if you could share this article with your Japanese friends! Thanks in advance! From Linda

  • 匿名 より:

    Thank you so much for the translation

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