2025/07/09

７月７日の国境なき医師団（Midicins Sans Frontieres 、略称MSF）の日を記念し、現在、大圍（Tai Wai ）にあるショッピングモール『The Wai』２階の展示エリアにおいて、彼らの活動に関する展示が行われています。（７月11日まで）

国境なき医師団は、1971年にフランス人の医師とジャーナリストのグループによって創設された非政府組織です。紛争地帯や自然災害の現場での医療支援とともに、人道危機を目の当たりにした人々の証言活動も行っています。

国境なき医師団のクリスタルさん　写真提供：MSF Hong Kong

今回の展示では、紛争地帯、自然災害に見舞われた地域、また伝染病が流行している地域などで、国境なき医師団が行っている活動（ワクチン接種、病気や怪我の処置やお産の手助けなどの医療支援、支援物資の輸送、被害者への精神的サポートなど）について紹介されています。

今現在も、世界のあちこちで紛争が続き、自然災害が起き、疫病が蔓延する場所があります。日々のニュースでは、小さな子どもを抱えた母親の、疲れ切って、途方に暮れた表情や、息子を失って泣き崩れる父親の映像が映し出されます。

The Waiで行われている国境なき医師団による『休止することのない救命（Lifesaving Without Pause）』の展示の様子　写真提供：MSF Hong Kong

今回、この展示の開催にあたり、そのような人道的危機に直面している人たちのために活動している、香港の国境なき医師団のメンバーが、その実態について話をしてくれました。

その中の一人、看護師で助産師のクリスタルさんは、2022年から国境なき医師団に参加しています。バングラデシュにある世界最大級と言われている難民キャンプや、アフリカ大陸から欧州へ、命の危険を顧みずに小さなボートで地中海を渡る難民に対しての支援活動などの経験があり、2023年には、紛争地域であるパレスチナ、ガザへと赴きました。

ガザでは、戦闘機やドローンの音、そして市井の人々の叫びが絶え間なく聞こえていたと言います。でもそんな過酷な状況の中でも、MSFによって産科病棟が再開され、そこで産まれてきた赤ん坊の声を聞いた時、クリスタルさんは『希望』というものの存在を強く感じだと言います。（現在、国境なき医師団では、ガザでの停戦を求める署名活動も行っています。）

国境なき医師団、左からMr. Chiu Cheuk-Pong, President of MSF Hong Kong, Ms. Lucy Lau, MSF Hong Kong Frontline Field Worker, Ms. Krystal So, MSF Hong Kong Frontline Field Worker

肉体的にも精神的にもとても厳しい支援活動という道。彼らは、何に突き動かされ、その道を選んだのでしょうか。

その問いに対し、前述のクリスタルさんは静かな声でこう答えてくれました。「人は、どんな言語を話そうと、どんなバックグランドを持っていようと、何色の肌をしていようと、また女性であろうと、男性であろうと、皆、平等に基本的人権を享受する権利、最低限の医療行為を受ける権利があると信じているからです」。

だから彼女は、香港を含めた様々な場所に赴き、人々が平等にその権利を享受できるように活動を続けるのだと言います。

ソマリア、アフガニスタン、スーダン、パキスタン、バングラデシュ、フィリピンなど数々の国で、ロジスティックマネージャーやプロジェクトコーディネーターとして、活動してきたルーシーさん　写真提供：MSF Hong Kong

また、国境なき医師団が医療支援を提供していることはもちろんですが、それを支えているのがロジスティックチームだということも忘れてはいけません。彼らは、生活用の綺麗な水を確保するためのパイプの建設や、移動式診療所の設営、必要物質の輸送なども行っています。展示では、そうした活動についても紹介されています。

今回の展示は、決して楽しいものではありません。でも、機会があればぜひ足を運んでみてください。人道危機に直面している人々を思い、援助従事者の活動を知り、そして自分には一体、何ができるのか？そんなことを考えるきっかけにしていただけたら、と思います。

MSF Day Exhibition 2025 – “Lifesaving Without Pause”

場所：『The Wai』L2 Atrium / MTR大圍（Tai Wai）駅より徒歩１分

期間：７月７日（月）〜７月11日（金）