2026/02/14
前回のコラムに書いた「百八席在」はベテラン世代によるお茶イベントでしたが、若い世代主導による「Tea Round(茶迴)」が去年に続き、今年も開催されました。今年は日本からも茶人が初参加し、ますます大盛況でした。ここ数年、香港でお茶文化の盛り上がりを実感していますが、Tea Roundはそれを大きく牽引しているイベントの一つです。
Tea Roundの創設者二人はお茶友
Tea Roundの創設者はMingさんとDannisさん。ほぼ彼ら二人で企画、デザインを手がけ、数人のチームでこの規模のイベントを運営しているのは驚きです。またMingさんは、ティールーム「想爺爺了」「老去茶事」、Dannisさんはカフェ「let it be」のそれぞれオーナーです。
左からMingさんとDannisさん
Mingさんはバリスタとしてキャリアをスタートしたものの、リラックス効果のあるお茶やその文化が大好きでお茶の世界へ。展示の企画をしたり、お客さんとの距離が近いカフェ文化が好きなバリスタDannisさんも、飲むのはお茶派だそうで、こんな二人はとあるカフェで知り合い、茶友に。お茶が人と人とを繋ぐ豊かな文化であることに魅せられ、一緒に台湾などのお茶のイベント等を巡っている中、香港にはこうしたお茶のイベントがないことを残念に思い、それならば自分たちで企画してしまおうというのが始まりでした。
自由にオープンに楽しめるお茶文化のプラットフォームを
国境を越えたIT都市深圳でも、検索すると茶館はたくさん出てきます。香港ではカフェはすぐに見つかりますが、中国茶を体験できる茶館や茶室の数は数えるほどしかありません。
家賃や諸コストが高い香港で、若い茶人たちが実店舗を持ったり、活躍を広げることは、非常にハードルが高いのが現状です。新しいものを好み、伝統文化を敬遠しがちな若者たちにとって、老舗のお茶屋さんの敷居は高く、お茶について関心を持つきっかけとなる場や機会が少ないのです。
こうした状況を残念に思った二人が、若い茶人たちが出店や茶席を設け、ベテラン世代や他国の茶人たちと交流、対話ができ、そしてお茶のことを知りたいと思う誰もが気楽に参加できるイベントを企画し、PMQという中心地で実現したのです。
開場前にお茶をする茶人たち / リラクゼーションタイプのブースも
テーマ「併配ーブレンド」
香港の一般的にお茶としてまず思い浮かぶのは茶餐廳でお馴染み、奶茶(ミルクティー)、レモンティー、そして丸い茶餅として街中でも見かける、普洱茶でしょう。
今年は50を超えるベンダーが並びました / 香港ミルクティーはガツンと濃くてシルキー
香港ミルクティーはセイロン系をベースに、複数の紅茶の茶葉を、以前は各お店のブレンダーが配合していました。コクを出すためにそこに普洱茶をブレンドすることもあるそうです。そして香港の普洱茶といえばブレンドが特徴なのです。今年はテーマが設定され、それが「ブレンド」でした。
台湾のベテラン世代と若い世代の茶人
50年代、本土からの様々な茶葉が香港に集積され、再輸出されていました。60年代には文化大革命により茶葉供給が不安定化し、茶葉をブレンドすることで供給の安定化を図りました。高級な単一茶葉と違い、コスパも良いブレンド茶なら、茶餐廳や茶樓へ大量提供できました。そうして人々が日常に楽しむことができ、また各お店が独自の配合で味わいの個性を出したのです。こうした香港のブレンド茶の文化は、様々な人や文化が混ざり合う場所で、困難は工夫で切り抜けチャンスに変える精神といった、「香港」の姿と重なります。
そしてMingさんとDannisさんのTea Roundの理念は「和而不同」-様々な意見をオープンに交換し、違いを受容し、それぞれが多様で調和する、ということです。
香港の陶芸家たちの作品 / 新星茶荘さんによるレクチャーで、68年熟成された雲南、広東、ベトナム産のブレンド生普洱茶を試飲
茶葉本来の個性や、品質の評価の観点からは否定的な意見もあるブレンド茶。そうしたあえて賛否両論あるものをテーマに据えたのも、彼らの理念を体現する試みだと感じました。
日本からTea Factory Genさんが初参加
広島県世羅地方に、中国の僧が伝えたとされる「世羅茶」。昭和初期からは、広島唯一のブランド茶として生産も盛んでしたが、後継者不足等により、平成以降は衰退してしまいました。世羅と尾道を拠点にするTea Factory Genの代表で、茶農家の高橋玄機さんは、この放置された茶畑と在来茶の再生、復活に取り組んできました。高橋さんを知った時、香港のお茶の再興に取り組むHKTPIの皆さんの顔が浮かびました。
Tea Factory Gen代表 高橋玄機さん / 興味津々の皆さんが途切れる間もなく訪れました
高橋さんの世羅の茶畑では、在来茶を持続可能で、その土地の味わいを守る自然栽培(無肥料・無農薬)で生産。栽培から小売まで一貫生産体制をとり、実験的な試みで多様なお茶も生産しています。また「あらゆる人に精神的豊かさを届ける」ために、お茶を楽しむ空間づくりや、茶摘み体験、工場見学など、販売までではなく、その先の活動にも力を入れています。
新しいことに常に挑戦し、世界に発信している高橋さん。彼の作ったお茶と共に、そのお茶哲学も、香港でたくさんの人の心に響いたことでしょう。
Chikako
トロント、NY、シンガポール、今は香港に在住。
各地のライフスタイルや食文化にインスパイアされた器を製作してきた。
香港では中国茶器を楽しくコツコツ製作。
筆者IG : cnycstudio
お茶活IG : sound_and_tea_room
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