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2026/04/06

Hong Kong LEIライターのリンダと杏が、ぴーちくぱーちくお喋り感覚で最新の香港映画をご紹介するコラム《リンダと杏の香港映画ぴーちくぱーちく》。
まだまだ勉強中だけれど、香港映画に対する愛と情熱は超強火! と言うリンダと、気になる映画に関しては、とことん知り尽くしたくなる杏。そんな二人が、香港在住者の視点で、映画の背景となる香港の文化的事情やその歴史、そして知ると楽しいトリビア等を楽しく語り合い、読者の皆様にご紹介します。これを読めば香港映画が、そして香港が、もっともっと楽しめるようになること請け合いです!
※文中では敬称を省略しています。

Courtesy of Golden Scene Co. Ltd.

連載第7回は3月19日に公開された『再見UFO』(英題:Ciao UFO/112分/2019年初上映)を紹介します。この作品は1980年代に実際にあったUFO目撃情報をもとにした物語。2019年の香港アジア映画祭でオープニング作品として華々しく上映されたものの、その後投資家とのトラブルが発生し、2025年末まで劇場公開が叶いませんでした。しかし、ついに上映が実現すると、香港電影評論学会で「最優秀作品賞」、香港映画監督協会では最優秀作品賞、監督を含む3部門を受賞。さらに44屆香港電影金像獎(香港アカデミー賞)の10部門にノミネートされるという、高評価。異例のいきさつを持つ作品です。

Courtesy of Golden Scene Co. Ltd.

あらすじ

1985年香港の南、アバディーンの公団住宅「華富邨」で、UFOが低空飛行していたという都市伝説が大きな話題となった。目撃したのは公団に住む4人の子どもたち。時は流れ、彼らの人生はバラバラに枝分かれし、異なる道を歩むようになる。香港は激動の変化を経験、80年代の希望も、90年代の浮き立つような活気も、2000年代の出口のない閉塞感に飲み込まれていった。大人になって再会を果たした幼なじみたちは、もはや「自分自身」、「かつての香港」をも認識できなくなっていた。現実に打ちのめされながら、彼らは自問する――あの頃、屋上で見上げたあの不思議な飛行体は、一体何だったのだろうか。

Courtesy of Golden Scene Co. Ltd.

香港返還前後のリアルな姿

リンダ:観た瞬間に恋に落ちてしまった作品! これまで4回観たけれど、本当にまだ足りない! あどけない子どもが成長して現実にもまれて大人になる切ないお話、という見方もできるし、香港返還前後の一般市民の日常を切り取った香港の近代史を追憶するお話とも読み取れる。色んな見方ができる、スルメイカのように、噛めば噛むほど味わい深くなる作品!

杏:わたしはちょうど、主人公達と同世代だから、場所は違えど「都市伝説」もあったし、幼少時代の近所の子ども達との楽しい思い出とかも共感できた。逆に返還に関しては日本から他人事としてニュースとかで見ていただけだから、「ああ、こんな風だったのか」と興味深かったよ。

Courtesy of Golden Scene Co. Ltd.

リンダ:そうだよね~。思えば1997年の香港返還を挟んだ一連の経済の流れは、まさに絶頂から急転直下のジェットコースター。激動の時代だったね。80年代の英中交渉を受けての将来への不安と混乱期、90年代にかけては中国への玄関口として香港が注目されて、空前の好景気!土地に株に、マネーゲームに踊る人が続出。バブリーなイケイケ時代。

杏:それが、1997年の香港返還の直後、「アジア通貨危機」の影響で、株価が暴落して、不動産価格も急降下。戦後最悪の不況となったらしいね。映画を見ると、一般の人が、どんな風にこの好景気に浮かれて、不況で人生が狂ったかを垣間見れるよね。

Courtesy of Golden Scene Co. Ltd.

華富邨と香港の団地

リンダ:そしてこの映画の隠れた主役は、何と言っても舞台となった「華富邨」という公共団地。ちなみに先日ご紹介したお正月映画『金多寶』の舞台もこの公団。老朽化のために間もなく取り壊されてしまうけど、その前に雄姿を映画の中に留めておくことができて本当によかった。

杏:香港人にとって公共団地って特別な意味がありそうだね。

主人公の叔父(マイケル・ニン/白只)の部屋からも海が眺められる。Courtesy of Golden Scene Co. Ltd.

リンダ:香港の公団って、もともとは戦後に中国からの難民で急増した人口の受け皿として、そして大火の被災者を救うための住宅としてつくられたのが始まりなんだって。公団ができたことで、難民や被災者の暮らしが安定して、労働力を生み出せるようになったことが、戦後の香港の復興を後押しして、さらに成長の段階へと押し上げた……ってなるほどだよね。だから、公団を単なる「集合住宅」としてではなくて、復興と高度経済成長の象徴として捉えてる人も多いらしい。

杏:華富邨は香港で初めて、市場、学校、銀行などを備えた「自己完結型コミュニティ」を実現した団地なんだってね。団地が一つの世界として機能していたら、隣人たちと関係も濃くなるよね。それと海を臨む部屋も多くて、それゆえ「平民豪宅」つまり「平民の豪邸」とも言われたみたいだね。

敷地内からの眺め ⒸLinda Hung-Hom

リンダ:「豪邸」とは言うけど、一戸あたりのサイズはかなり狭い……10坪(33平米)程度の一室に、親と子ども、時には祖父母までが同居することも珍しくなかったらしいよ。プライバシーは皆無。『再見UFO』でも『金多寶』でもリビングルームに2段ベッドがデンと鎮座してるよね。

杏:なるほど。一長一短があるけれど、ただ、失われゆく「古き良き香港」の記憶を留める聖地として、今、取り壊しを前に多くの人々に惜しまれていているみたいだね。

Courtesy of Golden Scene Co. Ltd.

キャストも見どころ!

リンダ:この作品、2000年代に人気だったボーイズデュオグループ「Shine」のメンバー、チョイ・ティンヨウ(徐天佑)とウォン・ヤウナム(黃又南)、そして同時期デビューのガールズデュオ「Twins」のシャーリーン・チョイ(蔡卓妍)が主演。キャスティング自体も香港人がノスタルジーを感じる要素の一つ。Twinsのもう一人のメンバー、ジリアン・チョン(鍾欣潼)も、セクシーな女性役で出演する話があったらしいけど、当時結婚を控えていたため実現せず。そしてその役は『旅立ちのラストダンス』(原題:破・地獄)のミシェル・ワイ(衛詩雅)の元へ。

Courtesy of Golden Scene Co. Ltd.

杏:LEIでも紹介した、香港で活躍する日本人俳優、和泉素行も登場していたね。店員役の彼が、香港で列をなす客に販売していたアレ、日本でもあの時代に大流行したよね。

 

魅力たっぷりの子どもたち

杏:キャストと言えば、子役はみんな、かわいらしかった! 風船を飛ばすシーンとかすごくよかったな。

Courtesy of Golden Scene Co. Ltd.

リンダ:子役の一番大きい子は今、20歳。撮影当時わずか4歳だった、眼鏡をかけた男の子は今12歳なんだって。あの4人の子役のうち何人かは謝票(映画の舞台挨拶)に出るらしいよ。会いたい人はインスタをチェックしなきゃね!

杏:20歳か~。子役といえば、わたしとしては一点、団地って他にもたくさん子どもがいると思うけど、タイプの違う彼らがどうして仲良くなったか、そのきっかけみたいなのが描かれていたら良かったなと思った。

リンダ:魅力タップリの登場人物に特別な存在である公団が舞台の映画。変わり続ける香港をひしひしと感じる作品だったね。

杏・リンダ:いやーやっぱり香港映画っていいですね! ではまた次回!

 

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