2026/10/06
Dunhuang: In Search of Lightのビジュアルイメージ、ダンサー:関剛多 ©️Hong Kong Ballet
香港バレエ団がお届けする新シーズン第1弾の作品『Dunhuang: In Search of Light ( 敦煌: 本当の自分を探して)』を深掘りしてお届けしています。
作品についてのあらすじなどはこちら
主役のお二人加藤凌さんと関剛多(ゴウタ)さんのインタビューはこちら
今回は、香港バレエ団のレジデント振付家で演出家の、リッキー・フー(胡頌威)さんと共同振付・脚本担当のマイ・ジンウェン(麦静雯)さんにお話を伺いました。
昨年、彼らが手掛けた大型ヒット作『The Butterfly Lovers(梁山伯と祝英台)』に続く第2弾となります。『The Butterfly Lovers』は大きな反響を呼び、2025年の第26回香港ダンスアワード(Hong Kong Dance Awards)にて「最優秀振付賞(Outstanding Choreography)」を含む6部門を受賞しています。
振付家で演出家の、リッキー・フー(胡頌威)さん(左)と共同振付・脚本担当のマイ・ジンウェン(麦静雯)さん(右)©️Hong Kong LEI
(敬称略)
リッキー: 実は、日本の方が敦煌の莫高窟に寄せる関心の高さは以前から知っていましたよ。最近も日本の敦煌についてのドキュメンタリー番組を鑑賞したばかりです。映像の細部までこだわり抜かれていて感動しました。
そうですか!昔から日本ではシルクロードや敦煌文化に深い関心を持っています。
リッキー: わたしたちよりも早くから敦煌の価値に着目し、深く学ばれていた印象があります。日本文化と中国文化の間には「仏教的価値観」という共通のコア(核)がありますよね。だからこそ、今作でわたしたちが表現しようとしている内面世界にも、日本の皆さんは強く共感していただけるのではないかと感じています。
近年は物質的な豊かさ以上に、自らの内面の平和や充足感を模索する人が増えていますので、興味を持たれる方が多いと思います。この作品の構想はどこから生まれたのでしょうか?
リッキー: わたし自身が昨年10月に莫高窟を訪れた時の体験がすべての原点です。特に第158号窟にある巨大な釈迦涅槃像(寝仏)の前に立った時のことを、今でも鮮明に覚えています。
その圧倒的な空間と仏像の存在感を前にした時、ふと「人間の存在がいかに小さく、儚いものか」という感覚に襲われました。それと同時に「人間が抱える執着の中で、捨てられないものなど何ひとつないのではないか」という強い悟りのような感情が湧き上がってきたのです。
単に『敦煌』という有名な観光地や文化的IPを使って綺麗なバレエを作るのではなく、人間としての根源に戻り「自分自身にとって敦煌とは何か」を問いたかったのです。
©️Hong Kong LEI
舞台はヘルマン・ヘッセの『シッダールタ』もベースにしたと言うことですが。
リッキー:はい、そうですね。実は敦煌に行く前に本は読んでいました。でも当初はそのストーリーだけを使ってバレエを作れるとは思いもしませんでした。ストーリーは1人の若者が誘惑や愛、苦悩を経て内なる光(啓示)を探し求めるプロセスを描いていて、わたしにとってはかなり個人的なものでした。だからこの本だけでどうやってこのバレエを表現すればいいのか分かりませんでした。でも敦煌を訪れた時、この本に敦煌の文化要素を組み合わせることができると思ったんです。
リハーサル中。©️Hong Kong LEI
お二人は前作『The Butterfly Lovers』でも大成功を収められましたが、普段どのように二人で振り付けや演出を作り上げているのですか?
ジンウェン: (笑顔で)わたしたちは性格も得意分野も全く違うんですよ!
リッキー: 分担はとても明確です。僕は全体のビジュアル、セットデザイン、照明、音楽の展開、シーン転換など、作品全体の骨組みと完成形を作り上げるのが担当です。演出家やプロデューサーに近い立ち位置ですね。
ジンウェン: わたしは、スタジオでダンサーたちと直接向き合います。音楽に合わせて彼らの身体をどう動かすか、群舞の複雑なフォーメーションをどう変化させるかという具体的な動きと振付を作り上げます。わたしがダンサーと向き合い、彼らの身体表現を極限まで引き出します。二人で一歩引いた視点とミクロな視点を持ち寄るからこそ、高いクオリティが保てるのです。
リッキー: 僕1人で振付まで全てをやろうとすると、ダンサーへの指導が行き届かなくなってしまいます。僕が「このシーンではこういう感情や世界観を表現したい」とアイデアを伝えると、彼女が「OK、どう身体で表現すればいいか分かったわ」と言って見事な動きに昇華させてくれる。この信頼関係があるからこそ、視覚的な美しさとダンサーの表現力を高い次元で両立できるんです。
©️Hong Kong LEI
今回も期待されるプレッシャーはありますか?どのような気持ちで取り組まれていますか?
ジンウェン: 人々がそれを好きになるかどうかは、わたしたちのコントロール下にはないと思います。私たちができることは、全力を尽くすることだけです。そして観客がそれを気に入るかどうかを見守るだけだと思っています。もちろん観客が気に入ってくれれば嬉しいです。
リッキー:作品を作る時、結果を急がないということです。わたしたちが理解している舞台を完成させるために全力を尽くすだけです。
ジンウェン: なぜ敦煌の芸術は今日まで残されているのでしょうか?1000年経った今でも、なぜこれほど感動できるのでしょうか?わたしの結論は、すべては意図(想い)によるものだということです。洞窟にあるのは、非常に懸命に働いた何千年も前の人々のおかげです。そしてこれは…… 技術ではありません。舞台で言えば、まずはストーリーがどのように人の、観客の心を打つかだと思います。
リハーサル中で。©️Hong Kong LEI
振付のチャレンジというのはどんなものですか?
リッキー:実は、わたしたちのスタイルは、すべての感情が動きの中にあるというものです。だから演技ではありません。自分の筋肉を使って、エネルギーと動きを使って感情を伝える必要があります。だから動きを作る時、それはすでに感情についてなんです。だからジンウェンは、ダンサーが演技をするのを本当に嫌がります。
感情は感情です。ダンスでそれをリアルに見せることはできませんし、現実世界ではそんなことはしません。 実際に自分の親が死に直面している時、ドラマチックになったり、たくさんの表情を作ったりはしません。だから、彼女は感情を内側に入れるように、ダンサーには落ち着いて穏やかであってほしいんです。それがわたしたちのスタイルなのです。
リハーサル中のリッキーさん(左)と関剛多さん(右)©️Hong Kong LEI
ダンサーを配役する時、ダンサーはどのように選ぶのですか?
ジンウェン: 本を読んだ時からイメージはありました。そこで主役の1人はゴウタ(関剛多)がぴったりだと思いました。彼の才能やパーソナリティ、容姿も含めてです。彼の顔立ち、特に目が純粋だからです。だからこそ、無理に演じる必要がありません。彼のパーソナリティ自体がすでにその青年のようだからです。
今年に入ってから本格的に始動した作品ですが、初演が完成版だと思いますか?
リッキー:たとえ初日を迎えて上演したとしても……決して完璧ということはないと思っています。そしておそらく、プレミア公演の後も、まだまだ多くの改善の余地があると思います。 もしツアー(巡回公演)を行う機会があれば、さらに発展させることになるでしょう。
ご夫婦のお二人は息もぴったりの最強パートナーなのです。©️Hong Kong LEI
観客には事前に本を読んでおくことを勧めますか?
リッキー:必要はありません。とてもシンプルなストーリーなので主人公が何をしているか十分に理解できるでしょう。人間の欲望に関連した普遍的な話なので、すぐに観客自身が共感・感情移入できると思います。わたしたちはいつも、ダンス作品を作る時、ストーリーを複雑にしすぎないようにと考えています。最も重要なのはダンスそのものだからです。そのままで大丈夫、楽しんでいただけると思います。
お二人のお話は非常に思慮深く、「もっとお聞きしたい」と思わされるものばかりでした。人間としての価値や生きる意味を日頃から深く追究されているからこそ、湧き出てきた作品のように感じられます。彼らのメッセージがバレエを通してどのように表現され、観客に届けられるのか、今から楽しみでなりません。
さて、次のページでは、今回トリプルキャストの主役に抜擢された2人の日本人ダンサーにお話を伺いました。ぜひあわせてお読みください!
『Dunhuang: In Search of Light ( 敦煌: 本当の自分を探して)』とは?1へ
主役の加藤凌さんと関剛多さんのインタビューは3へ
Hong Kong Ballet
Dunhuang: In Search of Light
(敦煌: 本当の自分を探して)
公演日程:
2026年10月16日(金)19:30
2026年10月17日(土)14:30 / 19:30
2026年10月18日(日)14:30 / 19:30
会場:香港文化中心(Hong Kong Cultural Centre)グランドシアター(大劇院)
チケット:こちら
HK$1,380 ( VIP tickets), HK$1,100, HK$880, HK$680, HK$480, HK$280
ローカルの学生、シニアは半額
6歳以上推奨
公演は1時間50分(1回休憩含む)
Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。
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