2022/04/20

地球の新たな未来が見えてくる
村木風海著『火星に住むつもりです〜二酸化炭素が地球を救う〜』(光文社、2021年9月)

 

【新しい地球人の登場】

「ゆるっとふわっと前向きに
絶望的な状況に立たされたときほど底抜けに明るくポジティブに。
どんな問題も楽しくパパッと解決してしまう
新しい地球人(火星人?)に皆さんがなるきっかけにこの本がなれたら幸いです」

この一節だけ読むと、「スピリチュアル系の本?」と思われそうですが、今回ご紹介するのは、“二酸化炭素系”の本です。
『火星に住むつもりです〜二酸化炭素が地球を救う〜』は、二酸化炭素の可能性に魅せられた現役東大生の化学者、村木風海さんの初の著書です。
火星で見る夕陽は青いらしいと知った小学生の時から、その夕陽を見るため火星移住の研究をしてきた村木さんの、壮大な夢を追いかける一途な歩みを知ることができます。また、夢を夢では終わらせない卓越した思考と技術で、総務省の「異能vationプログラム」(2017年「破壊的な挑戦部門」)に採択されたり、「Forbes JAPAN」の「世界を変える30歳未満の日本人30人」(2019年)に選ばれたりと、最先端を走る研究者として、地球温暖化を解決する画期的な方法や考え方をまとめた本でもあるのです。

村木風海さん ©️Shuji Goto

わたしがこの本に出会ったきっかけは娘です。2021年の夏、「100年後、暇だったら火星で会おうって約束してるの」と11歳の娘が唐突に言いました。100年後?誰との約束?なんで火星? と聞いても「わからない」と言うだけ。不思議な会話だったので印象に残りました。
ほどなくして、テレビ番組で「僕は人類で初めての火星人になります!」と語っている村木風海さんが目に飛び込んできました。あまりにタイムリーだったので、「娘はこの人と会う約束をしているのか!」と勝手に合点がいってしまったのです。その番組で、この本が刊行されたことを知り、(娘が火星で会うであろう)村木さんがどんな方なのかを知るために(笑)、さっそく読んでみることにしました。

本書はユーモラスなイラスト(村木さんのお母様が描いているとか!)を散りばめて、複雑な環境問題や化学について、また村木さんの「地球を守り、火星を拓く」活動について、子どもにも分かりやすいように解説されています。
なんと言っても村木さんの未来への眼差しが優しい。親子で一緒に読んで、ワクワクしながら未来を想像できます。そして、わたしたちが生きていく上でのマインドや発想をも変えてくれる本です。

【地球「ぴえん」の温暖化のからくり】
地球温暖化の一番の原因とされている二酸化炭素。香港政府も2021年10月、「香港気候行動計画(2050)」において、今後15〜20年間でHK$2400億(約3.5兆円)を気候変動問題に投じると発表し、市民にもエネルギーの節約、廃棄物の削減、リサイクルを呼びかけ、2050年のカーボンニュートラルを目指しています。
二酸化炭素を出さないようにエコな生活を……と思ってはいるものの、めまぐるしい日々の中で、問題としての優先順位が低くなっている今日この頃。でも本書を読んで、「地球ってこんなにやばいんだ」「自分も何かしないと」と真剣に思えました。
例えば、地球の温暖化と電子レンジの仕組みは同じで、地球はいま、レンジの中で少しずつ加熱されている状態なのだそう。このインパクトはすごかった。
本書イラスト ©️peco*me

そして、2030年までに二酸化炭素排出量を半減しないと、後戻りできない気候変動(引いては食糧難、伝染病の蔓延など)が起こってしまうといいます。本書でも2030年のわたしたちの惨めすぎる日常が、ユーモアを交えながらも詳しくシミュレーションされています。読めば、「こんな日常、絶対イヤだ!」と思うはず。
そうならないために、研究者があれこれと対策を練っているものの、人々から理解を得られず、国も研究予算をカットする。「科学者「ぴえん」、地球「ぴえん」」がいまの状況だそう。そういう事すら、知らずに過ごしていました。
そう、「温暖化が解決しない、もうひとつのからくり」は、わたしたちの問題意識の薄さなのです。「いくら科学者が素晴らしい発見や発明をしても、みんな1人ひとりの意識が変わらなければ、本当に温暖化を解決することはできません」と村木さんはいいます。

【香港で次にくるのは「ひやっしー」!?】
そこで登場するのが「ひやっしー」。村木さんが開発した二酸化炭素回収マシーンです。
世界最小の二酸化炭素回収マシーン「ひやっしー」

地球を冷やすマシーンだから「ひやっしー」。ポイントは持ち運びできるようスーツケースサイズに小型化されていること。いつでもどこでも誰でも、ひやっしーのスイッチを押せば空気中の二酸化炭素を回収することができます。つまり、ひやっしーを通じて、みんなが温暖化を止めるための積極的で具体的なアクションを起こすことができるのです。そして、「自分も温暖化を止めることができるんだ」と意識改革を広げることも狙いの一つだといいます。
また、ひやっしーで二酸化炭素を吸い取れば、その空間が森や草原と同じ環境に変わり、眠気や頭痛がなくなって人の集中力アップも期待できるといいます。
日本ではすでに、塾やオフィス、医療機関などに導入されたり、大手航空会社からも各空港に設置したいという話も出ていたりするとか。
ここで、香港にひやっしーが上陸したらと想像してみました。香港の総面積(約1100㎢)の約40%は自然公園や自然保護区に指定されており、開発された市街地は25%以下。自然を大切にしている代わりに、人々は密集地に住んでいるとも言えます。その密集市街地でひやっしーが二酸化炭素を吸い取れば、香港は効率的にクリーンな空気になるし、風水的視点で場の空気循環を気にする香港の人々にも受け入れられるように思います。
何より「中身は最先端、見た目はゆるふわ」がコンセプトのメイド・イン・ジャパン「ひやっしー」は、香港でキャラ的にも機能的にも人気が出るに違いない、とわたしは想像します。
国の枠を超えて、地球に良いこと、人類に良いことを一丸となって取り組めたら、大きな問題も解決できるように思います。

【そのエコ、ほんとのエコじゃないかも……】
本書にあるコラムも目からウロコでした。エコ活動に関する、一般常識の落とし穴が紹介されており、正しい知識と情報を得て行動しないと、良かれと思ってしていることが無駄になってしまうということが分かります。
例えば、お馴染みのエコバッグ。これを1枚作るためにかかるエネルギーは、レジ袋600枚分に相当。単純計算しても、最低2年は1つのエコバッグを使い続けないとエコにはならないそうです。
また、マイ箸と割り箸も、どちらがエコなのかは状況によりけりという事実。マイ箸をお湯や洗剤で洗う時、お湯を沸かしたり浄水場で水をきれいにしたりするエネルギーを考えたらエコなのは割り箸なのだとか。
与えられ慣れているわたしたちは、「これはエコなんですよ」と言われれば、あまり考えずに受け入れてしまうし、新しい商品の方が、よりエコなんだろうとも思いがち。その物だけを見るのではなく、生産から廃棄までを俯瞰して見ることが、本当のエコに繋がるのだといいます。

【明らかな未来へ向けて】
その他にも本書は、村木さんが機構長を務める研究機関、CRRA(シーラ/一般社団法人 炭素回収技術研究機構)で進められている、「そらりん計画」(ひやっしーで回収した二酸化炭素を利用して燃料を作り、陸、海、空、宇宙の輸送を可能にする計画)や「二酸化炭素経済圏」(二酸化炭素を多く集めた人が報われる社会システム)の構築など、驚いちゃうけど「それ、いいね!」と思える未来の計画が色々と書かれています。
村木さんの夢へ向かうエネルギーや発想力、実現力には圧倒されてしまうけれど、みんなそれぞれが色んな角度から出来ることがあるはずです。本書を読んで、親子で、みんなで、これからの地球のために出来ることを考えてみませんか。
村木さんはこう断言しています。「この本を読んだ皆さん全員が今日から思いついたアイデアを実行すれば、必ず地球を守り、火星を拓くことができるのは明らかです」。

(著者プロフィール)
村木 風海(むらき かずみ)
一般社団法人 炭素回収技術研究機構(CRRA)代表理事・機構長。2000年生まれの化学者兼発明家。専門はCO2直接空気回収(DAC)、CO2からの燃料・化成品合成。現在は東京大学に在籍する傍ら地球温暖化解決と火星移住を実現すべくCRRAで独立した研究開発を行っている。2021年より内閣府ムーンショットアンバサダーに就任。また、同年よりポーラ化成工業(株)フロンティアリサーチセンター特別研究員、(株)Happy Quality科学技術顧問、トーセイ・アセット・アドバイザーズ(株)科学技術顧問を兼任。代表的な発明にCO2回収装置「ひやっしー」や、「そらりん計画」「成層圏探査機もくもく」などがある。夢は「地球温暖化を止めて地球上の77億人全員を救い、火星移住も実現して人類で 初の火星人になる」こと。

CRRA公式サイト https://www.crra.jp/

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