2022/05/09

母親節快樂!母となって迎えた8回目の母の日。今日は、香港の病院での婦人科検診の受診についてお話したいと思います。

ここ香港でも、日本と同様、癌は深刻な疾患の一つ。1日平均96人の方が新たに癌との診断を下され、1日平均35人もの方の命が癌で奪われているそうです(注1)。特に中高年層では女性の新規癌罹患者数が男性を大きく上回るという気になるデータも。乳癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌など、性別に関係する癌の発生率が相対的に高いことが主因です。中年の定義が40歳からなのだとすれば、もう本格的な中年の域に達しているわたし。来港して3年。日本に一時帰国して婦人科検診を受けることができず、昨年、初めて香港の病院で検診を受診しました。「前回の受診から1年、そろそろ検診の時期ですよ」病院からのメール。日本への一時帰国はもう少し先のことになりそうで、検査を先延ばしにするわけにもいかず、わたしは今年も香港の病院で婦人科検診の予約をとることにしました。

かかりつけの病院。昨年、初めての婦人科検診受診の際は、長年、経過観察のため通院していた日本の病院で発行してもらった英文紹介状を持参して臨みました。

どんな結果が出るのか、現実と向き合うのが嫌で、検査前日はなかなか寝付けず決まって気が重くなります。当日、病院までの道のり。到着までの時間を少しでも稼ぎたくて、タクシーではなくトラムに乗ってコトンコトン。車窓からの風景をぼんやり眺め、湿気の多い香港の風を頬に感じながら、わたしは日本で迎えた初めての母の日、7年前の母の日のことを思い出していました。自分と似たような時期に出産をした大学時代の友人。復職前に会いたいと思い立って連絡すると、友人はお母様を乳癌で亡くされた直後だったことを知らされました。「お互い母親になったんだし、検査だけはしっかりするようにして、子どもに心配をかけず、長く楽しく暮らせたらいいよね」友人がくれた気丈な返信。その言葉は心に重たくずしんと響きました。初めての赤ちゃんの世話に毎日かかりきりになり、ついつい後回しになっていた自分の健康。友人の言葉がきっかけで受診した人間ドックで、わたしは自分の卵管と子宮が抱えている大きな問題について知ることができたのでした。

日本の癌検診受診率は先進国のなかで極めて低いのが実情です。男性においては胃癌、肺癌、大腸癌検診の受診率が4~5割程度、女性においては乳癌、子宮頸癌検診を含めた5つの癌検診の受診率が3~4割台となっています。(https://www.gankenshin50.mhlw.go.jp/campaign_2020/outline/low.html

さて、ほどなくして病院に到着。エレベーターで診察階に上がる間もトクントクン、不安で心臓の鼓動が早まります。診察を待っている方は数組で、身長と体重、血圧の計測と尿検査を終えると直ぐに看護師さんに名前を呼ばれてしまいました。「前回の検診から、自覚症状は特にありません」主治医の先生から生理の時期や体調に関する簡単な問診を受けた後、内診用の個室に通されます。

日本での婦人科の内診。先生と患者を隔てる診察台のカーテンの仕切り。下半身はバスタオル1枚で、下着をつけず無防備に足を広げた見えないカーテンの先で、先生や看護師さん、ときに実習中のお医者さんの卵たちが行き交い、話し声がするのが落ち着かなくて、日本にいた頃は婦人科はどうしても好きになれない場所のひとつでした。でも、わたしの行きつけの香港の病院の婦人科にはそんな仕切りはなく、緊張を解きほぐすかのようなアイボリー色の優しい色合いの壁紙。対面の壁にかかったモニターに映し出されるエコー画像を、診察の間、先生と一緒に見ながら、所見を聞くスタイルです。

検査用のガウンに着替え、子宮頚部細胞の採取と経腟エコー。「はーい、力抜いて」「次はこっち側の卵巣から排卵だわね。卵、見えてる?」「うん、綺麗、綺麗。大丈夫」時間をかけてチェックしながら、先生は看護師さんとは広東語で会話、わたしには嚙み砕いた英語で優しく語りかけてくれます。抱えていた持病はとりあえず悪化はしていないようで、まずは第一関門をクリア。

本日の婦人科検診のお会計合計HK$6,430也。日本円にして10万円を超える出費は懐に響いて「日本だともっと安いんだけど…、なんか、ごめんね…」夫に伝えると「健康に過ごすための年間予算でしょ!」と真面目な顔して返されました。

そのままの流れで乳腺エコー。眉間にしわを寄せ、先生がマウスでカチカチ印を付けながらスクリーンショットする度に、どこか悪いのだろうかと気になって映し出されるエコー画像に必死に目を凝らします。でも、時間が経つにつれ「えーと、3時の方向…、次、6時の方向は…」説明を聞きながら、時計に見立てられた自分の乳房の上を時計の針がくるくる回る様を想像していたら、次第になんだかおかしくなってきて、呼吸が少し楽になりました。昨年受けたマンモグラフィは今年は受ける必要はないと告げられ、ここでやれやれホッと一息。念のためにと婦人科から放射線科にカルテを回され、別フロアの診察室で2人の先生による乳腺エコーがまたイチから順繰りに始まり、先程の婦人科の主治医の先生と合わせると合計3人分の入念な乳腺エコーを経て、ようやく検査の全工程が終了しました。

4つの慢性疾患(癌、心臓血管疾患、慢性呼吸器疾患、糖尿病)と人々の健康に大きな影響を与える4つの共通行動危険因子(不健康な食事、身体活動不足、喫煙、アルコール関連害)に焦点を当て、香港政府、学界等のメンバーから構成される専門の委員会が定めた2025年までの戦略とアクションプラン『邁向2025:香港非傳染病防控策略及行動計劃』(注2)。これに基づいて策定された『香港癌症策略2019』は香港で初めての癌の予防と制御に関する包括的な計画で、人々により適切でタイムリーな介入を行い、癌患者さんの苦痛や不安を軽減し、健常者を含むすべての人々のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高めることを目的としています。

乳癌は香港の女性に最も多く見られる癌。浸潤性乳癌を発症する生涯リスクは約6.8%で、およそ14人に1人が浸潤性乳癌との診断を受けているそうです(注3)。香港政府は2021年9月、乳癌のリスクを高める危険因子の特定の組み合わせを持つ女性(44~69歳)に対し、安価な検診サービスを提供するプログラムを実施すると発表しました(注4)。生活習慣を見直し、癌の予防にもつなげる啓発を行う大きなお腹が特徴的な政府のマスコット「匿獅Lazy Lion」の姿。皆さんも街中で見かけたことはありませんか?このライオン君、なんとFBInstagramのアカウントまで開設して普及活動を展開しているんですよ!(注5)

マスコット「匿獅(nei1si1)Lazy Lion」。広東語の「匿埋(nei1maai4)(隠れる)」と英語の「lazy(怠惰な)」をもじった名前が付けられています。運動をしない言い訳をいつも考えているお腹の突き出たLazy Lionが生活態度を改め変わることができるなら自分も変われるかもしれないと人々に思ってもらえるよう、敢えてアンチヒーロー型マスコットが起用されたのだそう。(MTR車内にて撮影)

検診の日から2週間。「今回のところ、異状は認められませんでした。1年後にまた来てくださいね」病院の看護師さんから電話がかかって来ました。わたしにとって春は定期検診の季節。そして、母の日は、母を想い、古い友人を思い出し、自分自身が母親となって一層増した責任感を感じながら、少し立ち止まって自分の生活と健康について考えてみる特別な日でもあったりします。

母の日用のプレゼントのディスプレイで賑わう店内(C!ty’super IFC店にて撮影)

きちんと検査を受けながら、先も長く周囲の大切な人々と一緒に笑顔で毎日を過ごすことができますように。Emi in HK。多謝收睇。下次見!


【出典】
※注1…『香港癌症策略2019』(香港特別行政區政府,衞生署・食物及衛生局・醫院管理局)
https://www.cancer.gov.hk/tc/about_us/hong_kong_cancer_strategy.html
※注2…『邁向 2025:香港非傳染病 防控策略及行動計劃』(香港特別行政區政府)
https://www.change4health.gov.hk/tc/saptowards2025/
※注3…https://www.cancer.gov.hk/en/bctool/index.html
※注4…https://www.info.gov.hk/gia/general/202109/02/P2021090100619.htm
※注5…https://www.news.gov.hk/chi/2019/04/20190417/20190417_122317_149.html?type=feature


 

Emi
映像プロダクション会社勤務。大学院修了後、日本・東京商工会議所にて、中小企業の資金調達支援から政策立案時の省庁との折衝まで多岐にわたる業務に従事。
15年半の勤務を経て2019年、夫の仕事の都合により来港。2020年から現職。夢は日本と香港の合作映画の製作に関わること。気分転換は25年振りに再開したピアノ。インター校に通う7歳、4歳、男児2人の母。

Twitter   @emi_m_wang
E-mail  emiinhkg@gmail.com

コメントをありがとうございます。コメントは承認審査後に閲覧可能になります。少々お待ちください

意見を投稿する

Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。