2026/04/02
ⒸCourtesy of Golden Scene Co. Ltd.
香港の庶民の哀歓をすくい取る、心に深く突き刺さるような、切ない映画が間もなく公開されます。この『我們不是什麼』は『拆彈專家』など、ハリウッド映画を彷彿させる迫力の大型アクションで知られる、香港映画界の鬼才、ハーマン・ヤウ監督の最新作。作品の公開を前に、映画ファンならずとも知っておきたい、彼の作品の魅力に迫ります。
ⒸLinda Hung-Hom
ハーマン・ヤウ(邱禮濤)監督
30年以上のキャリアを持ち100本とも言われるほど多くの作品を世に送り出す。アンディ・ラウ(劉德華)主演の爆破アクション大作『SHOCK WAVE ショック・ウェイブ 爆弾処理班』(原題:拆彈專家)のシリーズはハリウッド的スケールと称され、ワールドワイドで愛されている。一方で社会派作品や、カルト的人気を誇る作品も手掛ける。文化研究の博士号を持ち、香港の地元文化への造形も深い。
『我們不是什麼』作品あらすじ
2月14日、バレンタインデーの夜。香港の繁華街で二階建てバスが爆発、多くの死傷者が出る大惨事となった。警察はベテラン鑑識専門家の「龍Sir」(フィリップ・タム/譚耀文)を捜査に加えた。犠牲者の中には、身元が判明しても家族に引き取られなかった2つの遺体があり、1体は、複雑な家庭で育った暉仔(アンソン・コン/江※生)、もう1体は父に居場所を奪われたIke(アンソン・ビーン/陳毅燊)。焼け焦げた現場、少ない物証をもとに緻密に検証を続ける「龍Sir」が辿り着いたのは「雪崩が起きるとき、無実の雪の結晶など一片もない」という言葉が掛かれたドア。香港という街で、二人の若者が見ていた景色とは――。
ⒸCourtesy of Golden Scene Co. Ltd.
Hong Kong LEI
『我們不是什麼』の公開がいよいよ近づいてきましたね。昨年からの公開延期を経て、この日を心待ちにしていました。おめでとうございます。別作品ですが、監督とアンディ・ラウさんがタッグを組んだ人気シリーズ『拆彈專家3(Shock Wave 3)』のティーザーポスターもちょうど今日発表されました。日本のファンもさっそくSNSで話題にしています。
ヤウ監督
僕も見ましたよ。『拆彈專家3』は、今年末から撮り始めるので、さほど近日というわけじゃないですが。
Hong Kong LEI
監督といえば「アクション大作」のイメージですが、今回の『我們不是什麼』はかなり異なる雰囲気の作品ですね。
ヤウ監督
『我們不是什麼』が僕にとって新しいタイプの作品という訳ではないんですよ。確かにここ6,7年は大作アクション映画のリリースが続いていましたが、実は初期の頃や、最近撮った未公開作にもアクション以外の作品もたくさんあるんです。例えばアンディ・ラウが医師を演じた作品、そしてアニメも撮りました。これら作品の公開はまだですね。
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Hong Kong LEI
この作品を作った背景を教えてください。
ヤウ監督
香港の庶民の生活の苦境を伝えられたらと思うんです。香港は非常に抑圧感の強いイメージですよね。でも、あまりに抑圧されていたらガス抜きが必要になるものです。みんな心構えを……、大きな悲劇がいつか起きるかもしれない。だから見て見ぬふりはよくないと言いたいのです。
ⒸLinda Hung-Hom
Hong Kong LEI
今回は中国との共同制作ではなく、自主制作(インディペンデント)でした。
ヤウ監督
共同制作には使える人員も多いし、報酬も多いという、(恵まれた)制作環境です。でも、僕はそういうのに慣れっこにはなりたくないんですよね。つまり元に戻れなくなりやしないか、と心配なんです。お金がなくても耐えられる人間なので、ブレないとは思いますけどね。
Hong Kong LEI
主演には、香港で絶大な人気を誇るボーイズグループ「MIRROR」のアンソン・コン(江※生)さんと、若手歌手のアンソン・ビーン(陳毅燊)さんを起用されましたね。
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ヤウ監督
理屈ではなく、直感で彼らがぴったりだと思ったんです。彼らは(演技の世界では)新人ですが、全く初めてではないですし。僕の(彼らへの)接し方はアンディ・ラウを撮る時と同じ。特別なことはせず、脚本への理解を深く話し合う、という方法です。結果? 合格点どころか、二人とも最高級、Aグレードの演技を見せてくれました。そして彼らが出てくれたことで新鮮な感じが出せたと思います。
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Hong Kong LEI
香港映画に関心を持ち始めた日本の観客に、今回の作品をどのように観てもらいたいですか?
ヤウ監督
もっと香港を知ってもらいたいですね。作品のストーリーは香港のものですが、そこに漂う苦境や感情は、国籍を問わず心に響くものがあるはずです。
Hong Kong LEI
今日はありがとうございました。
ⒸLinda Hung-Hom
後記
監督の言葉から伝わってきたのは、映画づくりに対する揺るぎないストイックさ。大作を手がけながらも、恵まれた制作環境に安住することなく、作品と真摯に向き合うその姿勢に、並々ならぬ情熱を感じました。香港のリアルな姿を撮りたい、そこに生きる人々の苦悩までをも撮りたいという誠実な思いが、言葉の端々からにじんでいました。
『我們不是什麼』
(香港4月3日公開予定)
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取材・文:紅磡リンダ(編集部)
通訳・翻訳:大澤真木子
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