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2025/04/04

Hong Kong LEIライターのリンダと杏が、ぴーちくぱーちくお喋り感覚で最新の香港映画をご紹介するコラム《リンダと杏の香港映画ぴーちくぱーちく》。
映画評論家ではないけれど、香港映画に対する愛と情熱では誰にも負けません! と言うリンダと、気になる映画に関しては、とことん知り尽くしたくなる杏。そんな二人が、香港在住者の視点で、映画の背景となる香港の文化的事情やその歴史、そして知ると楽しいトリビア等を楽しく語り合い、読者の皆様にご紹介します。これを読めば香港映画が、そして香港が、もっともっと楽しめるようになること請け合いです!

Photo courtesy of Lost Atlas

コラム第2回は、香港ドキュメンタリー映画『Four Trails(フォー・トレイルズ)』(邦題未定、中題『香港四徑大步走』)です。昨年12月に公開されると、チケットは連日完売。上映劇場数を増やしたところ、興行収入は当初の予想を30倍も上回るHK$900万(日本円訳1億6千万円*)を達成! ロビン・リー監督はこの作品で香港映画監督協会から実行委員特別賞を受賞し、また4月27日に行われる第43回香港電影金像奨 では編集賞と新監督賞にノミネートされています。

あらすじ

香港にある4つのトレイルコース計298キロ(!)を3日3晩走り続ける「フォー・トレイルズ・ウルトラ・チャレンジ」の挑戦者たちを追うドキュメンタリー映画。60時間で走り切ればFinisher(完成者)の、72時間以内で走り切ればSurvivor (生還者)の称号が与えられるこのレースに、コロナ禍の2021年、前回までのSurvivorとFinisherたちが招待を受け参加する。スタート地点に立った18人の走者たち。果たして彼らは再びこの過酷なレースを完遂することができるのだろうか……。

Photo courtesy of Lost Atlas

観る前、そして観た後の衝撃

杏:正直、観に行く前は、「他人が298キロと言う長距離を走るのを見るってどうなんだろう? 途中で飽きちゃうんじゃないかな?」と思ったの。そしたら……それぞれの挑戦者の魅力に引き込まれ最後までのめり込むように見入ってしまったな。

リンダ:わたしは、周囲に強く「オススメ!」と言われて、どう面白いのかと興味を持ったの。LEI編集長なんて「感動して号泣した!!! 走るだけの映画かと思ったら人生そのものの映画だった。まるで自分も一緒に走り切ったような気分になって、次の日は寝込んだ!」って言っていたし(笑)

Photo courtesy of Lost Atlas

杏:でも、確かに座って鑑賞しただけなのに、彼らと共に走ったかのような気持ちの良い疲労感、そして達成感があり、そして人間ってすごい! って圧倒されるよね。

リンダ:見た後、今度は自分たちがみんなにお勧めしたくなっちゃうよね。我らが香港映画の大スター、チョウ・ユンファ(周潤發)さんも絶賛しているしね!

 

映画『Four Trails』から見える香港

Photo courtesy of Lost Atlas

杏:まずは香港の4大トレイルとその距離をご紹介。我が家もだけど、香港にいる人なら誰でもこれらのトレイルの一部区間をハイキングしたことがあるはず。

  • 1、マクリホーストレイル Maclehose Trail  100km
  • 2、ウィルソントレイル  Wilson Trail   78km
  • 3、香港トレイル  Hong Kong Trail  50km
  • 4、ランタオトレイル Lantau Trail 70km

 

リンダ:この映画を勧める理由の一つは、走者達と共に、香港の緑豊かな素晴らしい自然が映し出されているからだよね。香港と言えば高層ビルと雑踏……そんなイメージが先行しているけれど、それを良い意味で壊してくれるよね。

Photo courtesy of Lost Atlas

杏:走者にとっては大変だけど、コースには300メートル(高層ビル60階相当)以上の高さになるところもいっぱいあって、絶景なんだよね。あとトレイルから次のトレイルへの移動に、走者は車、地下鉄(MTR)、フェリーなどを使う。その時に映し出される、香港の日常の風景、そしてそれと対照をなすかのような走者達の疲れ切った表情もいいよね。

MTR駅構内のエスカレーターで。疲れ果てた表情の走者。Photo courtesy of Lost Atlas

リンダ:それから、監督や走者達の文化的背景にも香港らしさを感じるよね。監督は香港生まれ香港育ちの西洋人。走者には西洋人も東洋人もいる。映画の中では英語、広東語、そしてフランス語もちょっと聞こえてきたり……。まさに香港の縮図って感じがする。

杏:そうだね。いろんな人がいる。人種、性別、年齢、職業もバラバラだし、走り方にもそれぞれ個性があるよね。でもみんな目的は一つ。走り切って最後、ランタオ島のゴール地点である緑のポストにチューする、っていう。

ゴール地点で緑のポストと完走者 Photo courtesy of Lost Atlas

杏:この過酷なレースを最初に思い立ったのは、香港在住ドイツ人のアンドレ・ブランバーグさん。彼は40歳を前に体重が100キロを超え、医者からはコレストロールを下げる薬を勧められた。そこで一念発起して、酒を一切やめ、走り始めた、と。そして2年後2012年の旧正月に「4トレイルズを4日間で走り切ってやる!」と思い立ち、やり遂げたらしい。それが4トレイルズ・ウルトラ・チャレンジの記念すべき第1回というわけ。

リンダ:その彼が今もレースの主催者なんだってね。毎年、旧正月にやっているって、お正月にやる日本の駅伝と似ているね!

杏:日本といえば、日本人走者の活躍も目覚ましいよ。2025年は三人の日本人がFinisherの称号をもらったし! すごいよね!

 

走者達の魅力、映画の魅力

リンダ:走者の中で誰が好き?

杏:ネタバレになるから言えない! でも、ヒュン(Hyun Chan Chung)さんは明るくて好き。彼が「誰に頼まれたわけでもない、なんのために俺はこんな辛いレースやるんだ」って言うの。わたしも本当にそう思う。でも走るんだよ。どうしてだろう?

(左)走者Hyun Chan Chungさん (右)Nikki Hanさん Photos courtesy of Lost Atlas

リンダ:答えはないのかもね。賞金もメダルもない。あるのは自分が走ったという事実だけ。ただその事実のためだけに走るのかもね。

杏:主催者のブルームバーグさんはある新聞**でこう言っていたの。「このレースは、人生そのものであり、挑戦であり、自分のゴールを設定することであり……そして何かを敢えてする、ということだ」って。

リンダ:なるほどね。ちなみにわたしは、サロモン(Salomon Wettstein)さんが好き。走るペースを綿密に計画して、でもレースでは思い通りにいかなくなるけど……、と続きはみなさん劇場で。

杏:わたしは同じ女性としてニッキー(Nikki Han)さんを尊敬している。映画の中で、淡々と走り続ける彼女、トークイベントでは「 “できるかどうかやってみよう” ではなく “わたしは、これをやる” って言う意思を持ってやらないとできないわ」言ってた。

リンダ:意思の強さ。これは映画を通して、ずっと感じることだよね。

杏:そう! 映画を見て、人間は強い意志の力があれば、自分の体力の限界を超えることができるんじゃないかな、って思っちゃった。

リンダ:最後の方、走者達は、極限まで体力を使い果たして、ボロボロの姿を晒している。そんな彼らの言動が「素」だからこそ、見ているものの心に直接響くものがあるんだろうね。

Photo courtesy of Lost Atlas

杏:香港でこの映画が流行ったということは、様々な文化的背景の人に受け入れられる可能性が高いと言うことだと思う。わたしはスポ根ものの人気が根強い日本でもこの映画は絶対流行ると思ってるんだ! ぜひ、この映画が日本で公開され、いつもと違う角度から見える香港の素晴らしさが伝わったらいいな、と願ってる。

杏・リンダ:いやー香港映画っていいですね! ではまた来月!

 

*(HK$1=18JPYで換算)

** https://www.bloomberg.com/news/newsletters/2025-01-23/no-garmins-no-spotify-the-300km-trail-run-that-few-can-finish

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