2024/06/30

Photo: Lok Cheng|Image courtesy of M+, Hong Kong

M+展覧会
Henry Steiner:The Art of Graphic Communication

1960年代からグラフィックデザイナーとして活躍し、「香港におけるグラフィックデザインの父」と称されるヘンリー・スタイナー(Henry Steiner)氏。彼を記念したM+の展覧会「Henry Steiner:The Art of Graphic Communication(ヘンリー・スタイナー:グラフィックコミュニケーションアート」が2024年6月15日から11月10日まで公開されています。

この展示は、歴史的に重要な人物や瞬間を取り上げる新しいシリーズ「パオ=ワタリ展」の第2弾。M+コレクションとスタイナー氏個人コレクションから200点以上を展示し、60年以上にわたる香港の発展の軌跡をたどる彼の最も象徴的なプロジェクトを紹介。

御年90のスタイナー氏は、今回の展覧会に際して、「アジアに根ざした視覚文化を称える著名な美術館であるM+での個展で、わたしの個人的な創作の旅と作品に立ち会えることは、この上ない喜びです。わたしの故郷である香港は、長年にわたりわたしのプロジェクトにとって常にインスピレーションの源でした。この回顧展を通して、香港のビジュアル文化の一部としてのグラフィックコミュニケーションアートを世界中の観客に理解してもらい、再認識してもらうことで、様々な面で香港の変容的な成長に貢献できたことに大きな誇りを感じています」とコメントしています。

Photo: Lok Cheng|Image courtesy of M+, Hong Kong

1934年、オーストリア生まれのヘンリー・スタイナー氏は、1961年から香港に住みました。彼が目にした香港は、複雑な文化で活気に満ち、製造、貿易、金融、レジャー、観光の国際的な中心地へと変貌を遂げようとしていました。1964年には自身のグラフィックデザイン会社を設立。そこから現在に至るまで、香港に住む人々の生活に深く浸透している数々のデザインを手がけました。

HSBCの赤と白の六角形のロゴ、スタンダード・チャータード銀行の紙幣デザイン、香港を拠点とする多くの有名企業のロゴなど、彼のグラフィックデザインは、著名なアメリカ人デザイナー、ポール・ランド(Paul Rand)に師事した際に学んだ原則に基づいています。その後、彼は複数の文化的要素を視覚的な鋭敏さで巧みに並置する(類似したものを並べる)グラフィックコミュニケーションという新しい形式を開拓しました。彼のデザインは遊び心に富み、意外性があり、見る者を惹きつけます。

Henry Steiner Logo mock-up, The Hongkong and Shanghai Banking Corporation ca.1984 enamel paint and metal
M+, Hong Kong Courtesy of HSBC
Henry Steiner Packaging for Amoy peanut oil 1972 tinplated mild steel, enamel, plastic Gift of Henry Steiner, 2021 © All rights reserved
Photo: M+, Hong Kong

展覧会は2つのセクションから構成されています。

第1部は、スタイナー氏の初期をたどり、彼の独特なスタイルを支えている背景を紹介。1938年、スタイナー一家はドイツに併合されたオーストリアを離れることを余儀なくされました。ニューヨークで教育を受けたことで、当時を代表する芸術家たちに触れ、後にイェール美術学校で著名なアメリカ人デザイナー、ポール・ランドに師事しました。その後、スタイナー氏は1961年に香港に派遣され、『The Asia Magazine』誌の香港支局開設に携わります。そして1964年、自身の会社 Graphic Communication Ltd.(現 Steiner&Co.)を設立。その後、都市の発展を象徴する大規模なインフラや産業プロジェクトから、旅行やレジャーの目的地としての香港の成長を反映したものまで数々のデザインを生み出しました。 香港の繁栄期を通してスタイナー氏の活動を紹介することで、香港の独特な視覚文化におけるグラフィックデザインの重要性を詳しく知ることができます。

Henry Steiner Progress Hong Kong poster 1975 offset lithograph Gift of Henry Steiner, 2017 © Hong Kong Trade Development Council
Photo: M+, Hong Kong
Henry Steiner 十.Y.P.三 poster for Morisawa Inc. 1991 offset lithograph Courtesy of Morisawa Inc.
Photo: M+, Hong Kong

第2部では、M+の「ヘンリー・スタイナー プロジェクトアーカイブ」から選りすぐりの資料を展示し、スタイナー氏がデザインしたものが、いかに香港の街そのものの発展や人々の日常生活の変化を反映しているかを紹介。オーシャン・ターミナルなどの重要なランドマークから、香港のプロモーション・キャンペーン、銀行、ホテル、プライベートクラブまで、香港の最も永続的なブランド・アイデンティティが勢ぞろいしています。

中でも見逃せないのが、スタンダード・チャータード銀行の紙幣デザインです。並外れた色彩感覚の持ち主であるスタイナー氏が試作を重ね、細部にまでこだわっていたことが分かる資料が展示されています。

展示されていたスタンダード・チャータード銀行のHK$500紙幣デザイン案。細かい指示が書き込まれています。
同じくスタンダード・チャータード銀行のHK$500紙幣デザイン案。細かい線で緻密に書かれています。

展示解説をしてくれた M+の香港視覚文化担当キュレーター、ティナ・パン(Tina Pang )さん。「この展覧会は、芸術とデザインにおけるモダニズムの訓練と、アジアの歴史や風土言語に対する深い知識と感性を融合させることに長けた、多文化・異文化のコンテクストのためのデザインの先駆者、ヘンリー・スタイナー氏を詳しく紹介するものです。一般にはあまり知られていない彼の形成期やビジュアル・アートとの関わりを辿ります。彼の主要なデザイン・プロジェクトの紹介を通して、スタイナー作品がいかに香港のビジュアル・アイデンティティを形成し、過去数十年にわたる香港の社会的・経済的発展を反映してきたかを発見していただきたい」

 

ヘンリー・スタイナー(Henry Steiner)46歳頃のヘンリー・スタイナー ©1980 John Nye

1934年、オーストリア生まれ。世界有数のグラフィックデザイナー。香港のグラフィックデザインの父として知られ、1961年から香港に住み、1964年に自身の会社Graphic Communication Ltd.(1990年代にSteiner&Co.と改名)を設立。HSBCのリブランディングで国際的に知られる彼の作品は、香港の日常生活に織り込まれ、紙幣から建物まで香港の至るところに存在している。スタイナーのデザインは知的で明瞭、そして簡潔だ。彼のアプローチは、予期せぬ並置やユーモア、視覚的なストーリーテリングを用いることが多く、1950年代にイェール芸術学校で師事した著名なアメリカ人グラフィックデザイナー、ポール・ランド(Paul Rand)から学んだ原則に基づいている。1995年には『Cross-Cultural Design: Communicating in the Global Marketplace』を出版。これは、デザイナーが自文化の外、あるいは多文化的な文脈の中で仕事をすることの成果に関する初期の出版物のひとつである。デザインとブランディングの実践に加え、スタイナーは香港の教育者であり、香港のデザインをより国際的に認知させる上で主導的な役割を果たしている。

 

 

展覧会のオープンに合わせ、M+ショップでは、トートバッグやTシャツなど、ヘンリー・スタイナーの代表作をモチーフにしたスペシャルグッズを発売する。グッズは館1階のM+ショップまたはオンラインショップで購入できます。

Henry Steiner | M+ Shop | Worldwide Shopping (mplus.org.hk)


M+
West Kowloon Cultural District, 38 Museum Drive, Kowloon

開館時間
火曜~木曜、週末 10:00-18:00
金曜日 10:00-22:00
月曜日 休館日
祝祭日は開館

一般入場券は大人HK$120、特別入場券(※)はHK$60
すべてのギャラリーに入場できる特別展入場券は大人HK$140、特別入場券(※)はHK$70

※特別入場券(コンセッションチケット)はフルタイムの学生、7歳から11歳までの子ども、60歳以上の高齢者、障害者とその同伴者1名、包括的社会保障援助(CSSA)受給者が利用できます。

Henry Steiner: The Art of Graphic Communication | M+ (mplus.org.hk)

 

 

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