2022/09/20

つい最近、子どもが救急車で運ばれ、わたしも一緒に公立病院に2泊3日の検査入院をしました。我が家、香港に来てから救急車を呼ぶこと通算4回、わたしに至っては、出産や子どもの付き添い入院も含めると、私立・公立、併せて7回も入院をしています。
毎回、コンシェルジュも「何事か!?」と見に来るし、さすがに「嘘・大げさ・紛らわしい」で訴えられるんじゃないかと冷や冷やものです。

病院に運ばれ、毎回、思う事は、「身体・精神、両側面における健康に勝る幸せはない」ということ。逆を言えば、機に応じて、この観点に立ち戻ることで、自分の幸せを再確認する事ができます。

子育てをしているお母様方の中には、出産・子育てを経験して、自分自身の価値観が大きく変化した、という方も多いのではないかと思います。
もちろん、わたしも、自分自身の中で音を立てて崩れたもの、そこから更に創られた価値観があります。
この価値観の崩壊と創造の繰り返しが、「幸せ」の鍵を握っているのではないかと思うのです。
今回は、ご自身の「幸せ」について、少し一緒に考えてみませんか?

 

知っている方も増えていると思いますが、心理学ではアブラハム・マズローが提唱した「欲求5段階説」という考え方があります。
「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生き物である」という考えで、人間の基本的欲求をピラミッド型の5段階図にしたものです。上位に「自己実現欲求」があります。最下層には「生存(生理的)欲求」、そして順に「安全欲求」、「社会的欲求」、「尊重(承認)欲求」、「自己実現欲求」と続きます。
下位の欲求が満たされると、その上の階層の欲求が出てくるというものです。また、「自己実現欲求」の更に上に、「自己超越」という段階があると言われています。

では、階層を一つずつ、簡単に見ていきましょう。

①生存(生理的)欲求: 食事・睡眠・排泄など、生きていく為に必要最低限の欲求。

②安全欲求: 心身の安全や健康、経済的に安定した生活への欲求。

③社会的欲求(所属と愛情欲求): グループへの所属欲求、友情や愛情の欲求。

④尊重(承認)欲求: 他者から評価されたいという欲求、自分自身への承認欲求。

⑤自己実現欲求: 下位4層が満たされた上で、自分らしく生きたい、あるべき自分になりたいという欲求。

+自己超越欲求: 時間や他者の評価からの超越、痛みの超越など極度の集中状態を特徴とし、他者や社会への貢献欲求が高まる。

 

子育てが、なぜ時に辛かったり、苦しく感じるのか?
それは、保護を必要とする存在(子ども)に、自分の「生存(生理的)欲求」を脅かされているからです。

普段は、子どもが可愛くて癒しの存在と感じられていても、子育てにおいては、その存在が脅威にもなることがあります。
今まで自分のタイミングで食べられていたご飯が食べられない、夜泣きが酷くて朝まで抱っこで睡眠不足、後追いが酷くてトイレを我慢せざるを得ない、行けてもドア全開……など、子どもと長時間過ごしたことのある方なら経験したことがあると思います。

ここで、「今まで出来ていたことが出来ない」という事実を前に、可愛いだけではない子どもの存在を感じ、価値観の崩壊が起こっていると言えます。

一見、このことはネガティブなことに思えますが、この経験から得られるものがあります。それは、「極端に幸福レベルが下がる」という現象。
嬉しいような悲しいような……ですが、子どもの手が少し離れ、友人とご飯が食べられたり、トイレにゆっくり行けたりするだけで、何だかすごく幸せに思えるものです。
そう、新しい価値観の創造が起こるのです。

冒頭でのわたしのお話しは、「安全欲求」が脅かされる経験だった訳ですが、やはり、何度か経験しても、普段、生活を送るうちに忘れ、「安全」であることが当たり前になってくる。そうすると、次から次へと高い欲求が顔を出します。
だからこそ、たまには立ち止まって、今、自分がどの階層にいるのかを確認しつつ、より低い欲求が満たされなかった時のことを心に留めておかなければならないと感じるのです。

 

パートナーの仕事の都合で香港赴任になった場合、帯同する側は仕事を辞めるケースがほとんどです。以前、バリバリ働いていた人は、香港に来て、欲求5段階の③、④が満たされず不完全燃焼を起こしている場合が多い印象を受けます。

「幸せ」や自己充足をただ追求すると疲弊します。「幸せ」のハードルを下げることで見えてくる世界があります。今、自分がどの段階にいるかを確認し、得られているものに目を向けたり、角度を変えて見てみる。
でも、これが難しい、そこで、カウンセラーの存在が必要になることもあるでしょう。

また、パートナーと価値観が違う時、お互いに目指している階層が違っていたという事もよくあります。
カウンセラーの存在を借りて、自分や相手の欲求を詳しく確認することで、お互いに求めている物をはっきりさせると、擦り合わせが叶う事もあります。

 

自己実現をした人が完璧な人ではないし、世の中に完全な人間は存在しません。
個人個人の人生における成長段階に応じて、欲求段階や幸せの在り方も変わってくるでしょう。
100%言えるのは、他人との比較の中に、幸せは存在しないということ。
大切なのは、自分が今、どの立ち位置に居るかを確認しながら、今、持っているものに目を向けてみることではないでしょうか。



河合 まり絵

臨床心理士。日本ではスクールカウンセラーとして、不登校児童や別室登校児童、発達に偏りのある児童への心理的サポートや、精神科クリニックで、パニック障害、PTSD、うつ病、摂食障害などの個別カウンセリングを実施。リワーク外来では、精神疾患などで休職中の患者に対し集団療法を、また、復職後の企業内フォローアップ・カウンセリングを実施。刑務所内では、グループ矯正教育をするなど、教育、医療、産業、司法の分野で臨床経験を積む。香港に移住してからは、3児の子育てに追われるも、縁あって精神科クリニックに復職。

 

OT & P Healthcare/ Mind WorX Clinic
MindWorXはOT and P Healthcareが運営する精神科専門のクリニックです。
中環駅(セントラル)から徒歩2分の場所に位置しており、簡単な日本語を話せる医師と、日本人の臨床心理士が在籍しておりますので、薬の処方と共にカウンセリングを並行して受けることが可能です。投薬はしたくないけれど、カウンセリングを受けたいという方もご相談下さい。

以下のようなことでお困りの方は、是非、一度、ご相談下さい。
・夜、なかなか眠りにつけない、または、朝、早くに目が覚めてしまいすっきりしない
・不安や心配な気持ちがいつも頭を離れない
・過度に食べ過ぎてしまう、または、食欲がない
・子育てに疲れている
・コロナ禍でストレスが溜まっている
・夫や妻、パートナーや他者との関係に悩んでいる など

初回予約の際に日本語でのサポートが必要な方は、marie.kawai@otandp.comにemail を頂ければ、日本語での対応が可能です。

Mind WorX Clinic
OT&P – Internationally Accredited Medical Clinics in Hong Kong (otandp.com)
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