2021/06/04
日本山椒葉風味 煎封左口魚
(ジン フン ジョ ハウ ユ)
【ヒラメの香港スタイル木の芽照り焼き】
もし、香港人のお友達がいらっしゃるなら、「そのお友達は2重国籍を持っている」というのはよく耳に聞く香港 事情です。 自分が香港人だからこそ言えますが、香港は特別な場所です。 香港特別行政区のパスポートを持ちながら、もう一つの国籍を持つことが可能な場所です(現2021年5月時点での法律による)。ちなみに、日本の国籍法は、単一国籍が原則です。その特別な制度があるために、たくさんの香港市民は海外に移民しても自分の本籍を破棄しなくて済んでいるのです。更に、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスなどの国は、二重国籍を可能とする国であり、香港人にとって人気な移民先となっています。
香港人は様々な理由によって、海外へ移民する選択を選んでいます。海外への移民ブームは香港の特定な言葉で「移民潮」(イ マン チウ)、英語なら “Waves of Mass Migrations from Hong Kong” と呼ばれています。
私も「移民潮」の波に乗った一人です。自分自身も海外に行った香港人の一人です。海外に行っても家族の食事は変わらぬ香港の家庭料理で、移民先の国で得られた食材を活用して、香港料理にアレンジすることが一般的です。チャイナタウンやアジア圏のスーパーにて、調味料を調達し、記憶を辿ってみると、よく作った料理はサーモンを「煎封」(ジン フン)という調理法で作った魚料理でした。
「煎封」とはフランス料理のムニエルと和食の照り焼きを掛け合わせた調理法と説明すれば良いでしょうか? まず、食材を片栗粉か小麦粉(粉無しもあり)でまぶしてから焼き、醤油、砂糖などを合わせて煮詰めた甘辛いたれで食材に味をつける調理法です。特定なレシピがなく、その家庭により調味料の配合が変わってくるもの、要するに「家庭の味」ですね。
香港なら、恐らくサーモンを使わず、マナカツオ(鯧魚)、イトヨリダイ(紅衫魚)や鰆(鮫魚)を使うでしょう。 香港の「街市」(ウェットマーケット)ではどれだけの種類の魚があるでしょうか。廣東語が分からなければ「街市」で魚を買うのはやや難易度が高いかもしれません。英語で魚の名前を教えてくれる人がいないし、日本で見たことがない魚もたくさんあり、香港にいる駐在日本人は一般的には日系スーパーで食材を買われているようで、「街市」での買い出しはかなりの勇気が必要となるでしょう。
初春の日本、旬のヒラメをスーパーで見かけ、ヒラメでこの調理法を用いてみました。ヒラメの口は左寄りですので、廣東語はそのまま「左口魚」(ジョ ハウ ユ)と呼ばれています。春だから、木の芽もあり、和のアクセントを加え、薬膳では春は発散すべき季節なので、シトラス系のさわやかな香りで体内の気を巡らせましょう。
これは、香港家庭料理と日本の「おふくろの味」が融合した一皿となりました。
食べ物は、生きるために食べなければならない必要不可欠なものでもありますが、「美味しく食べたいという欲 望」、「良い人と食べたいという欲望」、「自分が食べなれた味で食べたいという欲望」。そして、最も少ない労 力とコストでたくさんの欲望を一気に満たすのが食事ではないでしょうか?
Tips: 魚を少々塩麹で締めてから調理すると身が締まり、崩れにくくなります。 さらに、臭みは水分と一 緒に魚から流されます。 |
材料 (2人分)
ヒラメ……… 二切れ
塩麹………. 1小さじ
(無ければ塩少々)
片栗粉……… 適量
サラダ油……. 適量
たれ:
生姜……………………. 10g
葱……………………… 5cm
木の芽…………………… 少々
パクチー……………………. 少々
*甘麹……………………… 3大さじ
(無ければ砂糖2大さじ)
醤油……………………… 1.5大さじ
ケチャップ………. 1小さじ
リーぺリン………. 1小さじ
(ウスターソース)
水………. 100cc
胡椒………. 少々
*米麹:水 1:1
<下処理>
魚を綺麗に洗い、水気を取ったら、塩麹を薄く塗って、30分程置く。キッチンペーパーで水気を拭き取り、魚を片栗粉で薄くまぶす。
生姜は薄くスライスして置き、葱は斜めに切って置く、木の芽を粗みじん切りにしておく。
<作り方>
1.サラダ油を多めにフライパンに入れ、魚を入れて表面がかりっとなり、9分ほど一通り火が通るまで焼き揚げる。取り出す。(油が気になるならキッチンペーパーで余分な油を取る。)
2.綺麗なフライパンにサラダ油大さじ2を熱し、生姜、葱、木の芽を入れ、香ばしくなったら、砂糖、醤油、ケチャップ、リーペリンを一沸騰させ、キャラメル化にしたら水と胡椒を加え沸騰させる。
3.1の魚をフライパンに戻し、煮汁がほぼなくなるまで煮詰めたらできあがり。木の芽とパクチーを天盛りして盛り付けます。
雲姐(ワンジェ)
料理研究家。香港に生まれる。幼少期、平日は祖母、週末は料理が趣味だった父の手料理を食べて過ごす。オーストラリアへ移住を経て、結婚を機に日本へ移り20年以上。中国国際薬膳師、発酵食品ソムリエ、発酵ライフアドバイザーの資格を持ち、中華圏および日本の食文化への造詣も深い。現在は、日本の人々に香港料理を伝えるべく東京で活動中。
人在東京 Prime Kitchen Labo
Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。
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