2023/05/15
公司三文治
(ゴン シ サム マン ジ)
【クラブハウス サンドイッチ】
最近、コロナ政策の緩和と共に、日本に来る観光客は非常に多く、京都ではインバウンド観光客の為、戸建住宅を改装してこじんまりとした「やどや」がたくさん出来、ようやく経済の活性化が見えて来ました。もちろん「西洋系ホテル」もよく観光客が利用していると思います。
香港は以前、日本人にとって非常に人気がある旅先でした。自分の記憶をたどっていくと、1980年代香港のホテルは、九龍の尖沙咀(チムサーチョイ)に集中していました。入口に重たいガラスドアがあり、天井は高く、エントランスのキラキラシャンデリア、広いロビー、大理石の床壁、ぷんぷん香水をつけた人……、海外から来た旅行者たちが利用する高級施設のイメージが強かったです。
小4頃でしょうか、自分がレストランでジッと座れるようになってからでしょうか。その頃から母はよく我が3姉妹を大型ホテルに連れて行きアフタヌーンティーをしました。当時、九龍サイドでの大型ホテルは、尖沙咀にある喜來登酒店(Sheraton Hotel)、香港凱悅酒店(Hyatt Regency Hotel 移転前の住所:尖沙咀彌敦道67號)、 香港麗晶酒店 (Regent Hotel)、假日酒店 (Holiday Inn Hotel 現:香港金域假日酒店 Kowloon Holiday Inn Golden Mile)、美麗華酒店(Miramar Hotel)などなど。
人生初、『公司三文治』(ゴン シ サム マン ジ :クラブハウスサンドイッチ)を食べた場所は喜來登酒店(Sheraton Hotel)のロビーラウンジでした。4切れのクラブハウスサンドイッチだったから、三姉妹と母、丁度一人につき一切れ分がありました。こんな高さがあるサンドイッチを食べたことがなかった当時の自分はどのように食べたら良いのか分からず、とりあえず上からのトーストされた食パンを食べて、その次の層の具を食べていました。まさかサンドイッチを手でしっかり掴んで食べ、ましてや口を大きく開け一気に三層を食べることなど考えられませんでした。
トイレタイムは更に新鮮でした。母にトイレに連れられると、中に「トイレのおばさん」がいました。もう今は多分いないと思いますが、以前、高級施設のトイレに(主なホテルですが)サービスしてくれるおばさんがいました。
手を洗った後に白いハンドタオルをくれたり、トイレを常に清潔にしてくれたり、この様な職業がありました。外にでる前に、母は小銭入れからエリザベス2世の肖像があるHK$5コインをシルバーのトレイにチップとして置きました。シルバーのトレイの上にはHK$5以外に、HK$2とHK$1もありました。わたしたち子どもも含めトイレを利用した人数が多かったせいか、母は多めにチップを置いたのかもしれません。
初めてクラブハウスサンドイッチを食べた感動は未だに忘れていませんでした。具だくさんでチキン、トマト、レタス、チーズ、ベーコン、しっかりバターを効かせたトーストされた食パン。食べ応えがあり、なんとも言えない満足感がある洋食でした。付け合わせのフレンチフライも子どもたちの大好物でしたから、いまだにクラブハウスサンドイッチはホテルで食べるものとわたしの中では位置付けられているのです。
香港ローカルカフェ、いわば「茶餐廳」にもクラブハウスサンドイッチがありますが、中の具はチキンの代わりにスパムを挟んでありました。コスト削減と長期保存出来る肉というのが理由なのでしょうか? 『公司三文治』の『公司』は、「会社」の意味です。なぜクラブハウスサンドイッチは「会社サンドイッチ」というふうになったでしょうか? いろんな説があり、一説には会社員は忙しい為、イート・イン(店内で食べる)する暇もないので会社のデスクで食べられるように、しかもおなかいっぱいになるサンドイッチとしてクラブハウスサンドイッチのようなものが作られたようです。そこから『公司三文治』という名前になったようです。
Tips: 角型の厚さ1㎝のパンを使うと作りやすく食べ応えがあり、おすすめです。レタスを真ん中におく理由は、フライパンで加熱してもレタスまで火が届かずシャキシャキがキープ出来るからです。
材料 (2人前)
角型食パン……………………….3枚
ゆで鶏モモ肉…………………….1/2枚
卵…………………………………….1個
(牛乳1大さじ+塩少々)
ベーコン…………………………..2枚
トマト…………………………….. 1/2個
レタス……………………………..2枚
チーズ…………………………….1枚
バター(常温)………………..適量
マヨネーズ………………………適量
粒マスタード……………………適量
<下ごしらえ>
ゆで鶏:
鶏のモモ肉を一枚、1/2小さじ塩をすりこみ、1時間ほどマリネする。鍋に水600㏄、生姜5g、ネギ5cm、塩1/2小さじ、胡椒少々を入れて沸騰させ、鶏もも肉を入れ、再沸騰したら20秒で火を止めて、そのまま冷ます。冷めたらペーパーで水気を取り、厚さ5㎜のそぎ切りにする。
卵:
ボウルに入れ、ほぐして、牛乳と塩を入れ、混ぜる。フライパンを熱して、サラダ油を少々入れ、卵液を加える。半熟になったら、取り出す。
ベーコン:
カリッと焼く。
トマト:
トマトは厚さ5㎜の輪切りにする。ペーパーの上に置き、少々塩を振って、しっかり水気を取る。
レタス:
レタスをさっと洗って水気を切り、綺麗にくるむようにする。
<作り方>
1.パン片面にバター、マヨネーズ、粒マスタードの順に塗り、塗った面にチーズをおいてからトマトを4隅におく、さらに卵を乗せる。
2.2枚目のパンは、バターを塗ってない面を下にし、レタスをくるみながら置く。その上にチキンをおく。
3.3枚目のパンは、バターを塗ってある面を下にし、手で優しくしっかり押さえる。
4.フライパンを熱し、バターを入れ、溶かしたら、サンドイッチを焼き、キツネ色になったら取り出す。再度バターを入れ溶かしたら、反対の面を置き、さらに焼く。焼き色が付いたら取り出す。
5.楊枝を対角線に4か所刺し、パンを押さえる。手でパンを軽く押さえながら、パンの耳を切り離す。パンナイフを対角で4等分に切り分け、好みで好きなサラダや、フレンチフライ、ポテトチップスを添える。
雲姐(ワンジェ)
料理研究家。香港に生まれる。幼少期、平日は祖母、週末は料理が趣味だった父の手料理を食べて過ごす。オーストラリアへ移住を経て、結婚を機に日本へ移り20年以上。中国国際薬膳師、発酵食品ソムリエ、発酵ライフアドバイザーの資格を持ち、中華圏および日本の食文化への造詣も深い。現在は、日本の人々に香港料理を伝えるべく東京で活動中。
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