2023/05/29

香港在住のみなさんのご両親は、今どちらにお住まいですか。どのくらい頻繁に連絡を取られていますか。ご両親の健康のことや地域のこと、どこまで知っていますか。親の介護について考えたことはありますか。

 

初っ端から質問攻めで失礼いたします。わたしの両親は約32年間海外生活をしていましたが、5年前から日本に住んでいます。週に3回はプールで泳ぎ、お散歩や書道などを楽しんでいるようで、月に1~2回はラインでビデオコールをして近況を話してくれていました。飛行機で4時間の距離、1時間の時差は離れているけれど、両親は日本で元気に暮らしている、介護なんてまだずっと先のこと、両親のことは何でもわかっているつもりでした。

実際に介護するようになるまでは!

 

2022年9月末、新型コロナの香港入境後のホテル隔離規制が緩和されて2年半ぶりに一時帰国したあの日から、突然親の介護がはじまり、現在に至るまで心身ともにジェットコースターに乗り続けています。超スピードで進んでいく激動の介護生活、海外に住んでいる子に何ができるのかなど、わたしの体験談が少しでも参考になり、お役に立てると幸いです。なお自治体や医療機関によって内容が変わることもあり、あくまでの個人の体験談であることをご了承ください。

falconhk

ビデオコールからはわからない親の現状

両親の家の門のところで唖然としました。庭の草がボーボーに伸びきっていて、季節の花を植えるのが大好きな母とその写真を撮ってインスタグラムに投稿するのが趣味の父からは考えられない荒れよう。ここ1年くらい投稿の回数が減って気にはなっていました。玄関で出迎えてくれた母は少し老けたように見えましたが、いつもの明るい笑顔でホッとしました。安堵の思いは続かず、リビングルームに行くと、ソファベッドで寝ている一回り小さくなった父の姿がありました。ベッド脇には息を吸うたびに音がでる酸素の機械があり、鼻には管が入っていました。父は海外在住時にはテニスや釣りをしていて、健康そのものでした。え? 酸素機にお世話になってるほど体調悪いなんて知らない、、、父にどうしたのか聞くと、

「息するのが苦しくなったから病院に行ったら、家でこれしなさいって言われたんだよ。2週間前からしてるけど、なんだか吸いにくくてねえ」

どこが悪いのか、どうして酸素機が必要なのか聞いても答えてくれません。主治医をやっとのこと聞き出し、病院に電話して話を聞くことにしました。総合病院は予約を取るのが難しいようですが、患者の娘で海外に住んでいて、数日しか日本に滞在しないんです、と説明したら2日後にアポを入れてくれました。

冷蔵庫を開けると、開いてるマーガリンが4箱あったり、醤油が3瓶あったり。バスルームのシンク下にはハンドソープの買い置きが7袋もあったり、そうかと思えばシャンプーはなかったりと、あれ? がいくつも目につきました。何かおかしいと思っているときに言われた母の一言が衝撃的でした。

「あら、あなたは今どこに住んでいるんだったかしら。ここに一緒に住んでいるんだったかしら」

滞在時間数時間で、前回一時帰国したときから色んなことが変わってしまったというのがわかりました。

 

突然の介護、まずは福祉課か地域包括支援センターへ

ショックで頭がぐわんぐわんと回っている中、まずはマインドフルネス呼吸法で息を整えてみました。よし、とにかく情報を集めて、助けを求めよう。そんな時、たまたま父の昔からの友人から電話がありました。調子が悪いって聞いていたから、心配してかけてきてくれたそうです。わたしが小学生のころから家族ぐるみで旅行などもしていて信頼できる方なので、父と母の現状を説明して、どうしたらいいのか相談してみました。以前高齢者施設に関連する仕事をしていた彼は、地域包括支援センターか、それがなかったら市役所の福祉課に行ってみるといいと教えてくれました。両親の家があるところは○○郡○○町。調べてみると町役場に福祉課があり、高齢者の相談窓口があることがわかりました。地域によって区役所だったり、市役所だったりするようです。

この土地にわたしは住んだことがなく、両親もずいぶんと前に家を購入したもののずっと海外生活だったので、住んだことがあるのは約30年前に2年くらいだけ。土地勘がなく、誰も知らないこの町で、町役場を頼りに行ってみることにしました。町役場の場所をグーグルマップで調べ、福祉課では両親の保険証を見せて状況を説明しました。自分は海外に住んでいること、両親が病気っぽい、保険や介護のことだけでなく町や病院のこと一切わからないから助けてほしいと、涙目で訴えました。興奮と緊張で大声を出していたにもかかわらず、「大変でしたね。地域のケアマネージャーさんを紹介しますね。彼女になんでも相談してください。ひとりで抱え込まなくていいんですよ」と温かく対応してくださった職員さんはまさに救世主で、心から救われました。

 

次回は福祉課で紹介されたスーパーウーマンと介護保険についてです。


りんみゆき
カノッサ病院日本人通訳/グリーフケアアドバイザー2級/メディカルアロマインストラクター

香港を含め30年以上の海外生活体験と語学力を生かし、香港では医療通訳としてカノッサ病院で活動する傍ら同病院の日本語ケアラインサービスという無料のお悩み相談窓口もチームの1人として担当している。趣味はマラソン。著書に「海外のいろんなマラソン走ってみた!」(2019年5月、彩図社)がある。

どんな小さなことでも1人で悩まずにご相談ください。
無料日本語ケアラインサービス
電話:2825-5849 (月9:00-13:00、水13:00-16:00、土10:00-12:00)
カノッサ病院への日本語によるお問い合わせ
https://www.canossahospital.org.hk/ja/

IG:canossahospitalhk_jp

 

コメントをありがとうございます。コメントは承認審査後に閲覧可能になります。少々お待ちください

意見を投稿する

Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。

Translate »