2022/03/07

こんにちは、希望(のぞみ)です。

3月5日は、二十四節気の驚蟄(啓蟄/けいちつ)でした。冬眠していた虫たちが土から出てくる時期で、ふきのとうの花が咲くころと言われています。もうすぐ春本番ですね。

香港では、驚蟄といえば「驚蟄打小人」です。

「打小人(ダーシゥヤン)」は、自分の周りにいる小人(不幸をもたらす人、邪魔をする人)を拝神婆(バイサンポー)が打ち払ってくれるという無形文化財の伝統儀式です。

日本のテレビの旅番組などで香港の一風変わった儀式として取り上げられたりするので、ご存知の方も多いと思いますが、拝神婆(という名はあるものの、外見はごく普通のおばちゃん)が、使い古されたハイヒールやサンダルで、小人の名前が書かれたお札をバシバシ叩いてボロボロにする儀式です。

驚蟄に小人も動き始めると考えられているため、この一年の魔除け、厄除けとして、この日に打小人をする人が多いのです。驚蟄の日、打小人のメッカである鵝頸橋の高架下(銅鑼湾と湾仔の間)にできる長蛇の列とそれを見守る警察官の風景は、季節の風物詩のように毎年新聞やニュースで取り上げられています。

わたしが打小人に行ったのは、2019年の驚蟄。春雷と大雨でしたが、本帰国が決まった友だちと香港の思い出にと行くことになったのです。普段の鵝頸橋高架下は、拝神婆が4、5人、それぞれのテリトリーに暇そうに座っていたり、貼り紙に書かれている番号に電話して拝神婆を呼び出すシステムになっていたりするのですが、驚蟄の日はまったく違っていました。狭い高架下が人でごった返していて、拝神婆もたくさん。どの列がどの拝神婆にたどり着くのか分からないほどでした。何も情報を持っていない初心者のわたしたちは、ほどよく列が出来ているところを選びました。列に並んでいると拝神婆の助手らしき人が、「これに自分の名前、こっちに小人の名前を書いて」と言って儀式に必要なもの一式を渡してきました。2019年時点で、1セットHK$50でした。下の画像は、自分の名前を書くお札です。

1時間並んでようやく番が回ってきました。書き入れ時の拝神婆は、勢いに乗ってオール広東語でリズミカルに儀式を進めます。わたしたちは何も分からず、拝神婆のジェスチャーの指示を真似するのみ。小人の名が書いてあるお札を拝神婆が靴で叩きながら何かを唱えている間、こちらも線香で小人退散を祈ります。紙の虎で小人のお札をつまみ(虎に食べられているイメージ)、火にくべます。さらに、自分の名前を書いた札も燃やして祈祷。最後に擲筊(筊杯/ポエ占い。半月型の対になった木片を投げて、落ちた形で占う)をします。わたしが投げた時は「OK啦」と言われ、そのまま終了。友だちの時は、落ちた形が良くなかったのか「ここにお賽銭して」とジェスチャーされました。わたしたちは言われるがまま状態でした。

儀式はあっという間に終わりました。目の前でおばちゃんがバシバシと音を立ててわたしのモヤモヤを叩いてボロボロ(ボコボコ?)にして、燃やしてしまう様は、視覚的に効果があります。自分の心の中で、文字通り「片が付く」感じを味わえます。

 

さて、肝心の、小人に誰の名前を書いたのかですが、わたしのことはさておき(汗)、列に並んでいた時にちらっと見えた前の人のお札には、「打身辺小人」と書いてありました。特定の人ではなく、周りにいる小人や邪気を我が身に寄せ付けないぞというお祓いの感じなのかなと思います。

新聞記事によると、当時の小人としてよく挙げられたのは、上司、同僚、恋敵、官僚などだそうです。2021年はコロナが多かったとか。さて今年は? と思いますよね。残念ながら、2022年の驚蟄は、感染対策の規制で、鵝頸橋高架下での打小人は全面禁止になってしまいました。
日常生活の中で、どこにもぶつけられない心のモヤモヤや、ぶつけたら角が立つ不満に片を付ける手助けをしてくれる打小人。呪詛という見方もあるようですが、苦しみの中にある心を少しでも軽くして、整えることができる方法の1つなのではないかと思います。

拝神婆にやってもらえたら一番なのですが、セルフ打小人ができるセットが街の神仏用品店のようなところで売っています。

興味本位で買ってしまいましたが、実際に拝神婆のところで使ったものとは微妙に違っていました。流派などがあるのか地域によって違うのか定かではありません。

(儀式では、上の画像の男女が書かれた紙に小人の名前を書き、靴でバシバシ叩いた後に、虎の紙でくわえて燃やします。)

そして、さすが香港!と思いますが、なんと打小人のアプリもありますので、ご興味のある方は探してみてください(※ 広東語アプリです)。

 



希望(のぞみ)
神奈川県出身。都内文学館で学芸員として6年勤務。出産後、大連2年、東京2年、香港6年の子育て生活を送る。大連では日本語教師、東京では司書を経験。香港ではライターとして活動中。

Instagram
@nozomi_crochet

 

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