教えて!正しい食のお話 vol.32

    本物の食材を求めて。日本の伝統調味料をお伝えするコラム
    酸味を薬膳の視点でみてみよう 

    お酢といえば、酸っぱい味が特徴です。この酸味について、香港ならではの薬膳の視点で見てみたいと思います。
    東洋思想の考え方に、陰陽説と五行説というものがあります。香港では、お寺や占いなどで見かける、白と黒のマーク(大極図)としておなじみの方も多いのではないでしょうか。(陰陽でみるお酢については1回目のコラムに書いていますのでそちらをご覧ください。)

    陰陽とは、森羅万象 自然界に存在するすべてのものに、陰と陽というエネルギーがあると考えます(太陽と月・男と女など)。五行説とは、その中で自然界のものは「木・火・土・金・水」という五要素に分類され、これらがお互いに絶えず補完、抑制しあいながら、運動・変化を繰り返していくという考え方です。身体も心も、自然界や現象などすべてのものを陰陽五行で表すことができ、その中で味覚も【五味】酸・苦・甘・辛・鹹 の5つに分類されます。

    「酸味」は五行説の五味では木の要素に分類されます。木のカテゴリーを季節や臓器、症状が現れる部位や働き、感情などでみてみると、「木・春・風・肝・筋・爪・目・怒・青・酸・収…」などがあります。一例として、春には冬に貯めこんだ老廃物を解毒する臓器の肝(臓)が疲れ、肝は血を蔵する働きがあるため血が不足し、目が疲れ、風が吹くようにめまいがし、目の下やふくらはぎなどの筋がぴくぴく痙攣し、青筋が出やすく、怒りっぽくなる…というような症状が出やすくなります。
    自然界をみてみると柑橘類は春にかけてが旬。これは冬に貯めこんだものを出したい春に、タンパク質や油脂の消化分解を促してくれる柑橘類がたくさん出てくるという自然の恵みです。お酢も同じように消化分解を促す働きを持っていますので、身体に老廃物を貯めこんで肝臓が疲れている人やイライラしやすいような人は、柑橘やお酢を好む傾向があるともいえますね。

    では、みなさまに質問。酸っぱいものを食べると身体はどうなりますか?

    顔や口がすぼんで身体が締まる感じになるかと思います。これは五行説の中の5つの働きとして「収・堅・緩・散・軟」があり、酸味が及ぼす働きは「収」、収斂固渋の働きがあるとされています。収斂は引き締める作用、固渋はものを固め出し渋らせる作用をいいます。この酸味のもつ働きをうまく利用するのが、下痢をした時の梅干し。梅には殺菌作用もあるので、昔の人がお腹を下した時に梅干しを食べていたのも納得ですね。

    この酸味の収斂作用をぜひ利用してほしいのが、今回の香港LEIのテーマにもある更年期の症状、ホットフラッシュというようなのぼせ、多汗などの時です。首の裏から汗が大量に出る、顔からの汗が恥ずかしいなど、汗が止まらなくて困ったときに私がおすすめしているのが、酸っぱいジュース。ジューススタンドでレモンやキウイなどの酸っぱいジュースを飲むと、収斂の引き締める働きから、漏れ出た汗が収まりやすくなるので、ぜひ試してみてくださいね。

    この酸味の働きを普段の食事に利用しているのが暑い国々。タイやベトナムなどの暑い国では、甘酸っぱい味のものをよく食べます。薬膳では「酸甘化陰の法則」といって、酸っぱい+甘い味は身体の陰(体液)をつくり、汗をとめてくれる働きがあるとされています。甘酢っぱい味は、汗をかいて体液を失いやすい国ならではの味付けなのですね。

    このように身体が熱く汗をかきやすい人には酸っぱいものがおすすめ。逆に冷え性でむくみがあったり、身体に水が溜まっているような人には、お酢は控えた方がいい場合もあります。
    味覚は体調や体質により変わるので、冷え性の人は酸味を欲しないことも多々ありますので、自分や家族が酸っぱい物を好むかどうかもみてみましょう。ご自身の陰陽体質をみて、自分にあっているかどうかを考えてみてくださいね。

    次回は、私のおすすめのお酢、香港でぜひ使ってほしい梅酢についてご紹介したいと思います。


    ~毎日のごはんが、明日の自分をつくる~
    薬膳マクロビオティック教室 国際薬膳師・陰陽五行・野菜料理研究家 KYOKO

    教室では料理+考える力も大切にしています。薬膳、マクロビオティック、栄養学、生理学、腸内環境、ローフードなど多角的視点で、体調・体質・季節にあわせた食材の選び方や調理法を学びます。基本の陰陽調理を学ぶマクロビオティック教室、陰陽五行をきちんと理解し身に着ける座学教室、オーガニック食材を使った薬膳教室なども開催しています。


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