2021/08/31
你呢排點啊? 今日は通称「叮叮(ディンディン)」。そう、香港トラムがこのたびギネス世界記録に認定されたニュースと、香港と日本の観光にまつわるお話です。
息子たちの通うインター校は、先週、新年度がスタートしました。約1ヵ月半続いた夏休みは、もう終わり。昨年に続き、結局、一度も飛行機に乗ることなく夏休みは終了してしまいましたが、子どもたちは近所のプールとビーチで真っ黒に日焼けし、ちょっぴり逞しい顔つきになって、それなりに夏を満喫した様子です。
今年の夏、我が家の一番の遠出となった石澳(Shek O)ビーチ。はしゃぐ次男。
ちょうど2年前の2019年8月。来港後、初めての学校の登校日。長男のクラスメイトの親御さんたちに囲まれ「日本から来た」と言ったら、「Fukuokaはご飯がおいしかったわ」とか「Nisekoは人が多すぎたから、去年はHakubaにスキーに行って来たよ」とか、Tokyoではない地名がポンポン出てきて驚きました。因みに、1学年5クラス100人中、日本人と外国人のミックスの生徒は長男を含めて2人だけ。ルーツはなくても、皆がどれだけ日本に親しみを感じているかを象徴するような出来事でした。
コロナ禍。お嬢さんと長男が同じクラス。香港に来る前はRoppongi Hillsのオフィスで働いていたというアメリカ人のパパは、この間「ぶらぶら歩くだけで楽しい街や、ちょっとした美味しいお店がたくさんあったよね。日本、帰りたいよ」と溜息をついていました。日本政府観光局から発表されている訪日外客数によると、コロナ前の2019年。香港から日本への旅行者数は年間229.1万人。2018年220.8万人、2017年223.2万人と、ここ数年はコンスタントに220万人を超える数字が続いていました(注1)。
夜の中環。大好きな香港の風景。2階建てトラムの車窓から。
一方、日本から香港への旅行者数。香港政府観光局によれば、コロナ前の2019年は107.9万人。この年はデモの影響で若干、数が落ち込んだものの、2018年は128.8万人、2017年は123.0万人と、120万人を超える数字が続いていました(注2)。香港で生活する人々の日本好きには及ばないかもしれませんが、 “香港ファン、香港に夢中”という意味合いの「香港迷(ホンコンマイ)」という言葉があるように、東洋と西洋、古いと新しいが融合する香港は、観光地として日本でも根強い人気を誇っています。
そして、ここ香港が誇る観光資源、香港トラム。香港政府からは5月末にコロナ第4波が収束したことが発表され、香港に渡ってきて2年越し。「イエーイ!ダブルデッカー!僕、2階に行くー!」香港の風と音を目いっぱい体感できる2階建てトラムに、我が家の乗り物大好き少年たちは、この夏、晴れて乗車デビューを果たしました。
自転車は歩道でも車道でもなく、トラムの線路を走ります。
さて、このトラム。チンチンチン、ガタン、コトン、ガタン。一体、香港に何両あるか、皆さんはご存知でしょうか? ジャ、ジャーン。答えは165両。イギリスやエジプトにも2階建てトラムがありますが、1日に20万人もの乗客を運び、どこまで乗っても大人料金HK$2.6。安価な“市民の足”ともなっている香港トラム。開業から117年の時を経た今年7月、香港トラムウェイズ社は「現役の2階建てトラムの保有規模が最大」であるとして、ギネス世界記録に認定をされました(注3)。
車両が製造された時期により、トラムの内装も様々です。停留所間の距離はおよそ300~400メートルほど。うっかり乗り過ごしてしまっても大丈夫です。
今でこそ、走る広告として、トラムの車体には色とりどりのラッピングが施されていますが、戦後、新たに製造された2階建てトラムの車体には、戦時中に大量に残されたダークグリーンの塗料が塗られていたのだそうです(注4)。今回、ギネス認定の記念として、香港トラムウェイズ社と色見本『Pantone』の生みの親、パントン・カラー・インスティテュート社は「HK Tram Green」という名前の新色を発表しました(注5)。100年以上に渡って人々の生活に慣れ親しんだ乗り物の名前が、国際的に使用される色見本の色の名前のひとつになるだなんて、香港に来てまだ日の浅い私にとっても、感慨深いものがあります。165両ある香港トラムの中でも珍しい冷房車、数字の縁起も良い88番トラムの車体には、現在、この「HK Tram Green」色が塗られていますので、幸運にも街中で巡り合うことができたら、チェックしてみてくださいね。
HK Tram Greenのカラーキーワードは次の4項目
・Sustainability(持続可能性)
・Innovative Mindset/Open-mindedness(革新的なものの見方、オープンマインド)
・Lively/Refreshing/Natural/Fertile(生き生きとした、さわやかな、自然な、肥沃な)
・Calming/Comforting/Balanced/Harmonious(落ち着き、心地よさ、バランス、調和)
翻って日本。2020年のお正月以来、わたしの実家の両親には、もう1年半以上会えていない長男と次男。実家の近くの商店街には、東京さくらトラム(都電荒川線)が走っていて、調べてみたら、都電の前身となる東京電車鉄道は、香港トラムの開業(1904年7月30日)とほぼ時を同じくする1903年8月22日。品川―新橋間で運行がスタートされたそうです。「じぃじとばぁばと一緒に、東京のチンチン電車見に行ったの、覚えてる?」と尋ねたら、困った笑顔を浮かべてる少年たち。そうだよね、5歳と2歳のときの話じゃ、無理もないか。寂しさが急に込み上げてきて、せめて、子どもたちの香港トラム初めて体験を日本の両親に伝えてあげねばと、わたしは携帯を手に取ったのでした。
香港国際空港を飛び立つ飛行機。世界を自由に往来できる平穏な日々が早く戻ってきますように。
香港と日本。香港トラムと東京さくらトラム。近くて遠い。物理的には勿論、離れているんだけれど、でも、妙に符合する色々な数字を見ていると、両者がしっかり繋がれているような気がして、少し前向きな気持ちになれた、ある夏の日。
Emi in HK。多謝收睇。下次見!
【出典】
※注1…日本政府観光局(JNTO)国籍/月別 訪日外客数(2003年~2021年)
https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/since2003_visitor_arrivals.pdf
※注2…香港政府観光局(HKTB)A Statistical Review of Hong Kong Tourism2019、A Statistical Review of Hong Kong Tourism2018、A Statistical Review of Hong Kong Tourism2017
※注3…香港トラムウェイズ社 プレスリリース資料
https://www.hktramways.com/media/files/press-releases/20210730_GWR_EN.pdf
※注5…注3に同じ
Emi
経済団体にて、経済産業省・法務省との折衝から、中小企業の事業転換・倒産回避の相談現場まで、多岐にわたる業務に従事。2019年6月、15年間の東京・丸の内オフィス生活に別れを告げ、夫の仕事の都合により香港へ移住。錆びついた英語と、初学者レベルの広東語・中国語を日々勉強中。気分転換は映画・ドラマ鑑賞、25年振りに再開したピアノ、甘い物。小学校、幼稚園、やんちゃ男児2人の母。
Twitter @emi_m_wang
E-mail emiinhkg@gmail.com
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