2023/02/14
蓮子百合紅豆沙(百年好合)
(リン ジ バッ ハップ ホン ダウ サー : バッ リン ホ ハップ)
【蓮の実とゆり根入りの香港小豆汁粉】
「香港のバレンタインにはどんなチョコを男性にプレゼントしますか?」と日本の友人に聞かれた。
「香港の女性たちはお姫様だから何も男性に上げませんよ~」...というのが香港の事情です。
香港の男性は女性につくすタイプがほとんどです。お金に恵まれた香港の特徴なのか、男性の方が多いからなのか、バレンタインは豪華なお祭りと化しています。香港の友人に尋ねたら、豪華なブランド品をプレゼントしてもらったり、一流のレストランで食事をしたり、大きな花束をもらっているらしいです。
豪華なのはバレンタインだけではなく、結婚式もそうです。披露宴の会場デコレーションをはじめ、ゲストの服装まで、全て金ピカでキラキラ。そして赤い。もちろんお酒もたくさん飲む香港の結婚式では酔っ払いを見物するのが恒例の行事だったりします。
香港での縁起担ぎは伝統的な信仰の一つです。すべて縁起がいいものにしたくなるのです。結婚式の披露宴でのメニューは、結婚後の幸福にまつわる内容がちりばめられています。最後の締めくくりでよく出るのデザートは『蓮子百合紅豆沙』(リン ジ バッ ハップ ホン ダウ サー)【和訳:蓮の実とゆり根入りの香港小豆汁粉】。メニュー上ではおそらく『百年好合』(バッ リン ホ ハップ)として表示されているはずです。香港のおめでたいメニューには四字熟語で書かれた料理名が多いと思います。『百年好合』の広東語の意味は「永遠に共に寄り添う」。蓮の実を入れる理由は子孫繫栄を表す『蓮子』、ゆり根は「永遠に共に寄り添う」を表す『百合』。
香港の小豆汁粉は日本の作り方と全く違います。香港の作り方は小豆のデンプンを早く糊化させ、にごらせます。にごるから「沙」のように見えるので『紅豆沙』(小豆の沙)と言うのかもしれません。このデザートは『陳皮』と一緒に煮ることが一般的です。廣東の『新會柑』(サン ワゥィ ガム)という品種のみかんの皮を乾燥させて、5年以上熟成させると『陳皮』になります。5年以下のものは単に『果皮』(ゴ ペイ)と言います。みかんの皮が入ることで、体の血流循環を良くすだけでなく、小豆から生まれるおなかの中にたまるガスを中和してくれる役割もはたします。むくみ対策にもよいと考えられます。
『陳皮』は古ければ古いほど高価なものになり、高級ブランデーに似たようなものになります。20年の『陳皮』は35gでHK$220(約¥3500)になります。わたしは陳皮のわたを取らないタイプです。白い部分は「ヘスペリジン」が含まれていて、抗アレルギー、抗ウィルスなどの効能があるといわれているのでそのままにします。
Tips: 小豆を煮るのは実に難しい。短時間に煮るコツは小豆を炭酸水で煮ること。皮が早く柔らかくなります。豆の中のでんぷんは早く膨らむ為にいったん浸水したまま冷凍庫へ。急激に加熱することによりでんぷんが膨らみやすくなるからです。
材料 (2〜3人分)
小豆……………………………….. 100g
陳皮………………………………….. 2g
炭酸水…………………………… 1000㏄
水…………………………………. 1000㏄
塩…………………………………. 1g
蓮の実(乾物)…………….. 10g
ゆり根(生)……………….. 20g
糖分は煮えた汁粉の重さにより計算する。
黒糖………………………………. 10%
砂糖…………………………………2%
溶き片栗粉……………….. 適量
<下準備>
1.小豆と陳皮はさっと洗った後、容器に入れ、被る程度の水(分量外)を加え、蓋をしてから冷凍庫へ凍らせる。
2.蓮の実は水に戻してから、鍋で柔らかくなるまでゆでる。
3.ゆり根を外側から一枚ずつ剥がしてから洗う。大きい目のゆり根は半分に切る。変色した部分は切り落とす。
<作り方>
1.分量外の少量の水を沸騰させ、凍らせた小豆と陳皮はそのまま入れ、溶けたら、ゆでこぼす。
2.小豆と陳皮を高さがある鍋に戻して、炭酸水、水と塩を入れて、沸騰する。中火から強火の火加減で豆が柔らかくまで煮る。一粒を取り出して、指で簡単につぶせるならOKです。
3.粗熱を取ったらハンドミキサーをザックリかける(かけ過ぎないように)。
4.中身の重さを計って、黒糖と砂糖の量を決める。
5.黒糖と砂糖を汁粉の中に入れ、火をかける。糖が溶けたら、蓮の実とゆり根を鍋に入れ、ゆり根が柔らかくなったら、とろみをつけて出来上がり。
雲姐(ワンジェ)
料理研究家。香港に生まれる。幼少期、平日は祖母、週末は料理が趣味だった父の手料理を食べて過ごす。オーストラリアへ移住を経て、結婚を機に日本へ移り20年以上。中国国際薬膳師、発酵食品ソムリエ、発酵ライフアドバイザーの資格を持ち、中華圏および日本の食文化への造詣も深い。現在は、日本の人々に香港料理を伝えるべく東京で活動中。
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