2024/05/15
近年、街を歩いていると、一昔前の香港では見られなかった光景が目に飛び込んでくることがよくありますが、その1つが香港の動物たち、特に飼い犬の多さです。香港のど真ん中、中環や銅鑼湾のようなコンクリートジャングルエリアでも、大型犬を連れている人や、オープンカフェで犬と過ごす人をよく見かけるようになりました。昨年オープンしたカイタックのモールAIRSIDEもペットフレンドリーで、もはや犬と一緒に過ごせることが売りになっていたりします。
しかし、動物を飼う人が増えると、捨て犬、世話の放棄、虐待、やむなく手放すなどの問題も増えてきてしまいます。香港はアジアのハブとして出入りの激しい場所。長く住むはずだったけど、移動することになり、ペットを連れていけないから貰い手を探したいというSNS投稿も時々見かけます。飼ってみたけど、思ったより世話が大変だった、思ったよりお金がかかった、思ったより躾ができなかった、家族が動物アレルギーだったなど……それぞれの理由で手放す人も多いのが現実です。
そこで今回は、助けが必要な動物たちにわたしたちが出来ること、その実例と方法をご紹介したいと思います。まずは、LEI編集スタッフが保護犬のフォスターファミリーとなった体験記からお読みください。
保護犬フォスター体験記
「Fabulous ファビちゃんがやってきた!」
1)保護犬、ファビちゃんがやってきた!
2)受入れプロセス、わたしの心のプロセス
3)猫を被る犬、ファビちゃん。正体を現す。
4)サリバン先生も驚く、ファビアン先生の厳しい躾
5)“Adopt. Don’t shop” 『買わないで。引き取ってあげて』
6)バイバイ、ファビちゃん
動物たちの現状(5月19日公開)
レスキュー団体について
Kirstine’s Zoo
Suppaw
わたしたちができること
フォスターファミリーになるという選択
どんな動物のフォスターになれる?
期間は?審査は?
香港を移動することになった!どうする?
保護犬フォスター体験記
「Fabulous ファビちゃんがやってきた!」
1)保護犬、ファビちゃんがやってきた!
今年1月。我が家に生後5ヶ月の柴犬、ファビアンがやってきました。『ファビアン』だなんて、日本犬なのにおしゃれな外国人風な名前! 実は彼、動物保護団体に保護された犬で、新しい飼い主が見つかるまでの間、我が家でフォスター(一時預かり)をすることになったのです。
事の始まりは、わたしが昨年コラム「香港ぶらり、漢字横丁(帳)」の中で動物保護団体を取り上げたことでした。いくつかのサイトを見て情報収集をしている際に、引取り家庭を探している柴犬の子犬達を発見してしまったのです。
香港が永住の地ではない我が家は、「今は犬を飼わない」と夫婦間で決めているのですが、写真で見た愛らしい子犬達にどうしても会いたくなってしまったわたし。夫に「『Adoption Day(引き取りイベント)』というのがあるのですが、そこに行って、ボランティアの人々や保護犬と実際に会い、命の大切さについて考えることは子ども達にとって意義のあることだと思います!」と、子どもをだしにし、これが教育の一環であるかのように説得し、家族全員で子犬達に会いに行くことになりました。
イベントに行くと、いました、いました! 他の保護犬と共に、愛らしい柴犬の子犬達が! 保護犬は全部で10匹ほどいたでしょうか。人懐っこい子、恥ずかしがり屋さん、色々な犬がいますが、やはりファビアンを含む4匹の柴の子犬たちが圧倒的に行き交う人々の目を引いています。「すぐに引き取り家族が見つかるに違いない」、そんなことを思いながら、その日は『ふれあい農場』よろしく、子どもたちと共に子犬達を心ゆくまでヨシヨシして帰ってきました。
その後も、子犬の可愛さに魅入られてしまったわたしは、動物保護団体の活動をFacebookで追っていました。すると、ある時なんと『柴犬の子犬ファビアンを一時預かってくれる家庭を緊急で募集します』との書き込みを発見したのです。
ビビビと運命を感じました。「僕が君の面倒を一生見る!」と腹を括ることはできない我が家ですが、一時預かりならば十分お役に立てるはず! 早速、反対する夫(「俺は絶対、何もしないからな!」)を押し切り、大喜びする子ども達(「毎日散歩に連れて行くー!」)の声援を受け、保護団体に連絡を取ることにしました。
我が家で一時預かりをした保護犬ファビちゃん
2)受入れプロセス、わたしの心のプロセス
まずは保護犬の一時預かりに関する注意事項を確認します。
一時預かりの間、ファビアンは団体に属しており、医療行為などの必要性が発生した場合は、必ず団体に連絡をして指示を仰ぐことになります。医療費は団体が持ちますが、ファビちゃんの日常生活に必要な餌やベッド、おもちゃ等は我が家で負担することとなります。また、1ヶ月に2度、前述の『Adoption Day』に連れて行く義務があり、引き取り希望者が出てきた場合には、彼らにファビちゃんを会わせることも必要です。
これらを読んで、よし、大丈夫! と思い、フォスター希望のオンライン申請書記入を開始しました。
名前、住所、電話番号、家族構成、他のペットの有無、現在の住まいの広さ、ペット可かどうか等。スイスイと記入していきます。
次に、職業、就労時間、出張の頻度、ヘルパーの有無など。
ここで胸がざわつき始めます。家を空けることはできるのかしら? と不安になってきたのです。急な用事等で家に誰もいなくなることがあったら……ファビちゃん、お家でひとり、お留守番できるの? たった5ヶ月のおチビさんに?
そして極め付けの質問がこちら。
『散歩はどこに、一日何回、何分くらい連れて行けるのか』
ひるみました。我が家でファビ様にご満足いただけるだけの散歩量を、きちんと提供できるのか。ファビ様はお散歩量が足りないとちゃぶ台をひっくり返したり、暴れたりするのではないか?
申請書を記入する手を止め、今一度「本当に責任をもって一時預かりをやり遂げることができるのか?」と考えました。
昔飼っていた金魚やカブトムシなどは、餌やりと水槽や虫籠の掃除だけ。またハムスターならケージの中の回し車で勝手にクルクルしてくれそうだし、猫も散歩の必要はない。でも、散歩必須の犬ってどれくらい大変なんだろう? と思ったのです。
悩みに悩んだものの、「いくつもの家庭が犬を飼って平和に暮らしているんだから、不可能ってことはあるまい!」という結論に落ち着き、エイっと申請書の送信ボタンを押しました。
シャボン玉が出てくるのを待つファビちゃん
その後、団体から連絡が入り、提出した申請書に関して、更に詳細な説明を求められました。保護団体というのは不幸な動物たちを何匹も保護してきているのですから、フォスター先の環境を慎重に審査するのは当然なのでしょう。
わたしとしても、ここでファビちゃんを預かるチャンスを逃すわけには行きません!「ファビちゃんにとって最高の環境を整えてお待ちしております!」と大いにアピールしました。
最後に団体からファビちゃん飼育に関して丁寧なアドバイスをもらい、ついにファビちゃんが我が家にやってきたのです。
子ども達はもちろん大興奮。あまりのはしゃぎように、ファビちゃんを連れてきたお姉さんはわたしにそっと「ファビアンも緊張しているから、子ども達に、明日くらいまではそっとしておいてあげるように言ってください」と言い残していきました。まぁ……それは無理な話というもの。ファビちゃんは3人の小さいムツゴロウおじさんに「よーしよしよし」と嫌というほど撫でられ、ちょっぴり緊張しながら我が家での生活を始めたのでした。
フォスター初日。ファビちゃんの一挙手一投足に子ども3人釘付け
次に続く!
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