2025/02/15

鹹魚肉片籠仔飯

(ハムユーヨッピンロンジャイファン:廣東語発音)
アンチョビと豚こまの広東風蒸籠蒸しご飯

最近、日本では蒸籠を使った料理がトレンドになっています。
レシピサイトや料理系SNSでは「せいろ蒸し」の投稿が増え、人気の飲食店でも蒸籠を使ったメニューが登場。さらにはキッチン用品店で蒸籠が売り切れることもあるほどです。

香港では、蒸籠は点心(ディムサム)レストランでは欠かせない存在ですが、家庭ではあまり使われません。
広東料理(廣東菜・グォンドンチョイ)において「蒸す(蒸・ジェーン)」という調理法は非常に重要で、料理の中心を担っています。
広東料理は「清淡(チンダム)」、つまり素材の味を活かすことを大切にする文化があるため、シンプルな蒸し料理が多く、調味料を最小限にして素材の旨味を引き出すのが特徴です。
飲茶(ヤムチャ)でおなじみの「燒賣(シウマイ)」や「蝦餃(ハーガウ)」は、蒸籠で提供されるのが定番。また、家庭では「蒸魚(ジェーンユー/蒸し魚)」「蒸水蛋(ジェーンソイダン/広東式茶碗蒸し)」「蒸肉餅(ジェーンヨッベン/豚ひき肉の蒸しハンバーグ)」などが日常的に作られます。
特に「蒸魚」は、葱、生姜、醤油などを使い、最低限の調味料で魚の甘みを引き出すシンプルな料理ですが、広東料理の神髄を体現しています。
また、蒸すことで食材の水分を閉じ込めながら調理できるため、ジューシーで柔らかく仕上がり、胃に優しいのも特徴です。特に、病み上がりや体調が優れないときに蒸し料理はよく食べられます。
さらに、蒸し料理は手間が少なく、火にかけておくだけで調理が完了する「ほったらかし調理」が可能なのも魅力です。

香港での独特な蒸し文化

香港では、電子レンジを使いたがらない人が意外と多く、「電子レンジの放射線は体に良くない」という根強いイメージがあります。そのため、料理の温め直しにも「蒸す」方法が好まれます。
余裕がある家庭では、ドイツの「Miele(ミレー)」のテーブルトップ型の電気蒸し器を導入することも人気で、実際にわたしの実家でもMieleの蒸し器を使っています。
一般家庭では、蒸籠よりも中華鍋(鑊・ウォッ)に蒸架(ジェーンガー/蒸しラック)を置いて蒸す方法が主流です。これは、香港の家庭のキッチンが狭く、大きな蒸籠を置くスペースが限られるため、鍋ひとつで済む方法が便利だからです。

日本の蒸籠ブームと香港の蒸す文化の違い

最近の日本では、蒸籠が家庭での調理ツールとして注目されています。しかし、日本の蒸籠ブームは、香港の蒸し文化とは少し違う方向性を持っているように思います。
香港では、蒸籠は飲茶文化に根付いており、「プロの料理人が使うもの」というイメージが強いです。一方、日本では「家庭での手軽な調理器具」として、見た目の美しさも重視されながら人気が高まっている印象があります。
香港の一般家庭では蒸籠を使うことは少ないですが、例外的に「籠仔蒸飯(ロンジャイジンファン)」という料理があります。
これは、小さな蒸籠(籠仔・ロンジャイ)にご飯と具材を詰め、一緒に蒸し上げる料理です。

代表的な具材

・臘腸(ラップチョン):中華腸詰
・肉片(ヨッピン):薄切り豚肉

この料理の魅力は、一皿でご飯とおかずが同時に完成すること。
下の層にはご飯、上の層には具材がのり、具材の旨味が蒸気とともにご飯に染み込みます。シンプルながらも奥深い味わいが楽しめ、炊飯と調理を同時に行うため、手間も減り、洗い物も最小限で済むのも大きな利点です。

今回紹介するのは鹹魚肉片籠仔飯(アンチョビと豚こまの広東風蒸籠蒸しご飯)。
鹹魚(ハームユー)は、塩漬け発酵魚で、その強い旨味が豚肉(肉片・ヨッピン)とご飯に染み込みます。シンプルながらも食欲をそそる一品です。

日本の蒸籠ブームの中で、ぜひ試してほしい香港の蒸しご飯です!

 

Tips:今回は、日本で手に入りやすいアンチョビを代用したレシピを紹介します。

 

材料(2人分)

ご飯

タイ米 1合

水 180ml
(通常より少なめに)

 

具材

豚こま肉 150g

 

豚肉の下味

アンチョビ 1切れ(刻む)

塩 1g

日本酒 小さじ1

生姜汁 小さじ2

胡椒 少々

ナンプラー 小さじ1

砂糖 小さじ1/2

溶き片栗粉 大さじ2

ごま油 小さじ1

 

トッピング

アンチョビ 1切れ(粗みじん切り)

青ネギ(小口切り) 適量

 

作り方

1,米を蒸籠で炊く準備
米を洗い、30分ほど浸水させた後、水を切る。
蒸籠の底にクッキングシートを敷き(漏れ防止)、米と水を入れる。

2,具材の下準備
豚こま肉は薄切りにし、下味の調味料を加え、最低10分漬ける。

3,蒸す
蒸気の上がった蒸し器に蒸籠をセットし、中火で15分ほど蒸す。
米がふっくらと炊けていればOK。豚肉を米の上にのせ、さらに10分蒸す。

4,仕上げ
火を止め、蒸籠を開けたらトッピング用のアンチョビと青ネギを散らし、熱々のうちにいただく。

 


雲姐(ワンジェ)

料理研究家。香港に生まれる。幼少期、平日は祖母、週末は料理が趣味だった父の手料理を食べて過ごす。オーストラリアへ移住を経て、結婚を機に日本へ移り20年以上。中国国際薬膳師、発酵食品ソムリエ、発酵ライフアドバイザーの資格を持ち、中華圏および日本の食文化への造詣も深い。現在は、日本の人々に香港料理を伝えるべく東京で活動中。

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