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2025/07/18

香港の老舗の歴史にまつわるお話を香港老舖記錄冊 Hong Kong Historical Shopsさんとのコラボでご紹介したいと思います。香港老舖記錄冊さんは、Facebookなどで香港の歴史的なお店を独自で取材して発信しています。香港文化の象徴として老舗の存在は欠かせない、老舗が存続していくことが香港の文化を盛り立てることだと言います。香港を愛するHong Kong LEI編集部のわたしたちもまた、昔から愛され続けている香港で誕生した商品が、どんな会社によって作られ、どんな背景で誕生したのか、また、どんなところで、どんなふうに作られていたのかなどを垣間見たくなりました。題して「香港オタクのための愛すべき香港老舗の歴史をたどる」です。でも長いのではしょりまして(笑)「香港老舗の歴史をたどる」と命名いたしました。どうぞよろしくお願い申し上げます。


今回ご紹介するのは、麻雀用品の老舗「英發祥麻雀象牙」です。中環・威靈頓街は、かつて「麻雀街」と言われるほど麻雀牌店が軒を連ねていました。その中でも特に歴史が長いお店で、今は三代目が営んでいます。


英發祥麻雀象牙– 中環

創業:1920年代以前
業種:麻雀用品の販売
住所:中環・威靈頓街99號 威基商業中心104室
文:Ian
写真:Easy @chilllifehk

先日、旺角道と上海街の交差点を通りかかった際に、「公友祥」という少し珍しい名前の店舗を見かけました。麻雀用品を専門に扱う老舗で、少し調べてみたところ、かなり長い歴史を持つお店であることがわかりました。また、香港の麻雀牌店には「祥」という字が使われている店名が多いことにも気づきました。たとえば「新發祥」「廣發祥」「同發祥」などがあります。その中でも特に歴史ある店として知られているのが、中環にある「英發祥」で、現在は三代目が営んでいます。

英發祥は、広東省三水出身の耀溪氏によって創業されました。最初の店舗は中環・威靈頓街140號にありました。かつての威靈頓街は「麻雀街」と呼ばれており、通りには10数軒の麻雀牌店が軒を連ねていました。1950年代の『華僑日報年鑑』によると、威靈頓街には以下のような店があったようです:美豐雀牌(99號)、廣發祥(111號)、正元雀牌(138號)、英發祥雀牌(140號)、協鑫(158號)、勝泰隆雀牌(162號)、德聚成(164號)、嵩山齋福記雀牌(176號)

これは一部の記録であり、実際にはもっと多くの店舗が存在していた可能性もあります。

当時、麻雀牌はすべて職人による手彫りで作られており、多くの彫刻師が働いていました。その多くは氏の親族や、広東省三水の出身者だったそうです。彼らは店の裏手で麻雀牌を彫刻しており、「前店後工房」という形式で営業していました。1970年代までは手彫りが主流でしたが、1980年代に入ると機械製の麻雀牌が普及し、1990年には最後の職人が引退。それ以降、麻雀牌はすべて中国本土の工場から仕入れるようになりました。

店名「英發祥麻雀象牙」に「象牙」と入っていることからも分かるように、かつては象牙製品も取り扱っていました。創業当初は麻雀用品のみを販売していましたが、二代目の沛榮氏の時代に象牙細工の人気が高まり、象牙製の麻雀牌や箸、米粒彫刻、人形、象牙球などを製作するために、専属の職人を雇ったそうです。しかし、1976年に香港がワシントン条約に加盟し、1990年1月18日から国際的な象牙取引が禁止されました。そのため象牙製品は次第に減少し、2021年12月31日をもって販売を終了しました。

––(中略)––

創業以来、英發祥は3度の移転を経験していますが、いずれも元の店舗が取り壊されたことによるものです。最初は威靈頓街140號で開業し、134號、103號を経て、2008年に現在の99號に移転しました。現在はビルの一室で営業していますが、今も多くの来客があります。

現在の店主は三代目の國樑氏で、初代の耀溪氏、二代目の沛榮氏の志を継いでいます。國樑氏によると、コロナ禍の影響で多くの香港市民が暇つぶしとして麻雀を始めたことで、若い世代の来店も増えたそうです。とはいえ、売上の約6割は現在も海外からの観光客によるもので、Googleレビューを見て来店する外国人観光客も多いとのことです。

商品販売だけでなく、カスタマイズにも対応しており、顧客の要望に応じて牌の加工も行っています。國樑氏は今も自ら麻雀牌を加工職人のもとへ運び、完成品を受け取って店に戻っています。ただし、70歳を超えており、体力的にもこの作業をいつまで続けられるかはわかりません。「できる日はやる」という気持ちで続けているそうです。息子さんたちはそれぞれ別の仕事に就いており、現時点で家業を継ぐ予定はないとのことです。

英發祥は長い歴史を持つ名店ですが、やがて幕を下ろす日が来るのかもしれません。麻雀の対局に終わりがあるように、どんな宴にも別れの時は訪れるものです。

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