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2026/04/08

Courtesy of the artist and WKM Gallery

世界的にも有名な写真家グレッグ・ジラード氏の展示会の初日に、なんと空港から直行でギャラリーに現れたジラード氏ご本人。直々に展示ツアーをしていただく貴重な機会に恵まれましたので、今回はHong Kong LEIの読者の皆様に彼の生の声をお伝えしようと思います。

写真家グレッグ・ジラード氏は、日本では少し前に大ヒットした香港映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』(原題:九龍城寨之圍城)にも描写される、九龍城砦で生活する人々の写真が有名です。映画のセットでもおそらく大いに参考にしたことでしょう。

そんな九龍城砦に生きる当時の人々の日常を撮った写真とエッセイが書籍化されており、日本語訳本も入手可能です。「九龍城探訪(City Of Darkness) 魔窟で暮らす人々」by グレッグ・ジラード、イアンランボット著

「Greg Girard HKG-TYO 1974- 2023」は、ジラード氏が1974年から2023年の間に香港と東京を撮った作品を展示しています。場所は、香港のギャラリーが集まる黄竹坑(ウォン・チュク・ハン)にあるWKM Gallery。5月23日まで。


WKM Galleryにて、空港から直接やってきたグレッグ・ジラードさんとオーナーのウィリアムさん Photo by Hong Kong LEI

それでは、ジラード氏のお話をお楽しみください。

「展覧会は香港と東京の生活を非常に個人的で、かつ普通のありふれた視線で捉えたものです。オーナーのウィリアムとは約一年ほど前に話し始めました。わたしはどういうわけかずっとこの二つの都市を組み合わせたいと思っていました。

1970年代後半から1980年代初めにかけて、若い写真家として東京で過ごしました。1982年に香港に移り、BBCの仕事に就けたことで、香港の街を隅々まで見てまわることもできました。1988年頃に独立して雑誌向けに写真を撮り始めました。長く雑誌の仕事が続き、その後は雑誌やジャーナリズムの世界から距離を置き、初心に戻るような気持ちで、自分のために写真を撮るようになりました。

キャリアの初期の80、90年代は香港で過ごしました。多くの人が今では「黄金期」と振り返る時代です。何が良いかは人それぞれですが、若さだけでも黄金期になり得ます。80年代初頭の香港を振り返ると、1997年に何が起こるのかという大きな疑問がありました。だから香港にいることは刺激的で重要な時期でした。多くの人が同じ疑問を抱えながら香港で写真を撮りました。

わたしはドキュメンタリー目的ではなく、街を歩き、見えてくる普通の生活を撮り始めました。ストーリーの枠に入れなくても良い、何気ない近隣の日常を撮ろうと常に意識しました。」

Mr. Greg Girard and WKM Gallery Installation Photo by Hong Kong LEI

「市内のあらゆる場所、特に名目上は目立たない場所を歩き回りました。かつての啓徳(カイタック)空港はすごかったし、今では非常に貴重でも、当時はごく日常の風景でただの空港でした。わたしはそこが素晴らしいと思い、その周辺での生活を撮りたいと思ったのです。

わたしは、普通のストリート目線で、見落とされがちな場所──評価されないどころか喜ばれもしないような場所に惹かれました。啓徳はまさにそんな場所でした。」

Mr. Greg Girard and WKM Gallery Installation Photo by Hong Kong LEI

「20年ほど雑誌写真家として精力的に働きました。Time、Newsweek、National Geographic など欧米の雑誌が中心でした。しかしそうした仕事を続けると、ストーリーありきとして見てしまう。自分が本当に撮りたい写真はかけ離れていきました。雑誌向けに撮影しても、本当に撮りたかった写真は掲載されず、それが転換になりました。自分なりのルールを作り、別のカメラを買い、そのカメラを持つときは、自分のためだけに撮ると決めました。雑誌の仕事は続けつつ、自分のために別の仕事も課したのです。」

Mr. Greg Girard and WKM Gallery Installation Photo by Hong Kong LEI

「1985年の上海街のWong Loi Teahouseの写真です。こういったものが今どれだけ残っているか分かりませんが、当時作品を載せてもらえる場所として就航誌や機内誌がありました。報酬は少ないですが、コンテンツに飢えていたため若手の作品が掲載されやすかったのです。これはキャセイパシフィック航空の機内誌で「鳥」に関する特集で掲載されました。」

Mr. Greg Girard and WKM Gallery Installation Photo by Hong Kong LEI

「九龍城砦は今や香港の神話的存在になっていますが、比較的最近の歴史です。かつては「行ってはいけない場所」として親が子どもに言い聞かせるだけの存在でした。ある夜、滑走路近くで夜間の航空写真を撮ろうとしてある角を曲がったとき、不思議な建物群が目に入りました。香港の建築にそぐわない、まるで中世のSFのような景観で、九龍城砦に行かなければと思いました。

入ってみると圧倒されました。初めて訪れた年は、路上にバラック村が広がっていて、そこを通り抜けて中に入るような感じでした。自分の前でドアがバタンと閉まったり、人が物を投げたりすることがあり、多少敵意を感じることもありました。三脚とカメラを持っているとメディア関係者のように見え、住民は警戒することもありました。」

九龍城砦 WKM Gallery Installation Photo by Hong Kong LEI

「写真を撮っていくうちに、危険や麻薬、暴力、ギャングといったイメージばかりではなく、人々が生計を立てようとしている場所だとわかってきました。生活するには非常に複雑で厳しい場所ですが、子どもは学校に行き、職人や工房で人々がものを作り、なんとかやっているのです。わたしはそれを別の視点で撮ろうと決めました。

当時見られた九龍城砦の写真は白黒が多く、記者や写真家が危険や貧困、異質さを強調していました。わたしはカラーで撮影することにしました。学校の制服を着た子どもたちや、九龍城砦で生産された貨物が他の地区へ運ばれていく様子など、普通の生活があるということでした。九龍城砦は条約の関係で香港の植民地行政の枠外に置かれており、そこでは一部の商売が法の枠外で行われていたため、診療所や工場を比較的始めやすい場所でもありました。」

香港の夜のネオンサイン WKM Gallery Installation Photo by Hong Kong LEI

「わたしはネオンサインへの郷愁は根強く、若い頃は特に惹かれました。わたしが育ったバンクーバーもかつて北米で最もネオンが集中していた都市の1つでしたが、70年代初めには既にネオンは衰退しており、市当局が不適切と見なして禁止していきました。1974年に初めて香港に来たとき、ネオンの光景は圧巻で日常の一部としてそこにありました。

70年代後半に東京に着き、寄るだけのつもりが気に入って滞在することにしました。いわゆる『ブレードランナー』的な近未来のアジア都市像が注目される前から、香港や東京には既にそのような雰囲気がありました。飛行機を降りてこのような街を発見するのは素晴らしい経験でした。

美しい青色に魅せられて撮影したと言う日本のスナックのブルーチェア Courtesy of the artist and WKM Gallery

「最近のプロジェクトです。日本にある「スナック」と呼ばれる特定の種類の飲み屋についてのものです。ご存知かもしれませんが、スナックは最もファッショナブルではない飲み屋で、仕事仲間と一杯飲むような場所です。凝ったカクテルなどはなく、ビール、焼酎、ウイスキーとカラオケが中心。客は常連客が中心です。入るときに「入っていいですか?」と訊ねるのが礼儀です。」

左:スナックさくら(日本) 右:九龍城砦内部(香港)WKM Gallery Installation Photo by Hong Kong LEI

「わたしは70年代に日本をヒッチハイクしていて偶然こうした店を知りました。どの町にも必ず「スナックさくら」という店があり、日本各地の「スナックさくら」を巡り、本にまとめました。」

スナックのインテリア Courtesy of the artist and WKM Gallery

「単にスナック文化を見ているだけでなく、偶然の記録でもあります。時間の許す限り、旅をしながら、午後にスナックに行き、三脚を立てて空いている店内で数枚撮る、というやり方で長年続けてきたものです。

わたしは写真を始めた頃から今も夜に撮影します。少しおかしな言い方かもしれませんが、当時はまるで自分だけがよく見える電球を持っているような気がしていました。夜の風景は平凡でありながら劇的で美しかったのです。」

WKM Gallery
黄竹坑
2026年5月23日まで。

 

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