2023/11/12

袋:袋(ふくろ)とは、物を入れる容器の基本的な形状の一つ。(中略)英語のbag(バッグ)やsack(サック)で呼ばれることもある。(Wikipedia「袋」の項より抜粋)

 

環境問題やごみ問題を背景に、香港でもスーパーや小売店などでビニール袋の有料化が進んでいます。日々買い物に行く際マイバッグや、エコバッグを持っていくという方も多いのではないでしょうか。一方で、袋はそのお店のロゴやメッセージが込められている、お店の自己主張の場のひとつでもあります。今回は高級ブランドの袋にも負けない(かもしれない)、茶餐廳で見つけた素敵な袋や小物たちをご紹介します。

 

焼き立てパンの香りが漂ってきそうな「偉強咖啡奶茶」の紙袋

 

最初に紹介するのはこのテーマを書こうと思ったきっかけ、モリモリたまごが挟まったサンドイッチと、紅豆冰で有名な新界北部・上水の「廣成冰室」の紙袋。1962年創業の老舗でいつも通り紅豆冰を楽しんでいたある日、相席になった目の前のご夫婦が店員さんより受け取った紙袋に、わたしは目が釘付けになってしまいました。

袋に描かれているのは中文と英文の店名、所在地、電話番号、そしてイラストという定番の構成ですが、イラストのみっちりとした書き込まれ具合と、「選料上乘/調製適宜/清香可口/經濟實惠」という他の店ではあまり見かけない四字熟語の組み合わせに惹かれてしまいます。イラストの中にはお皿からはみ出そうなほどロールケーキ、パン、ケーキの類が載り、後ろにあるコーヒーカップは浮いているようにも見え、さらに花まで飾られています。その姿はまるで、茶餐廳版アフタヌーンティー!

 

イラストの書き込まれ具合が素敵な「廣成冰室」の袋

 

イラスト以外にも魅力的な要素を持つ茶餐廳の袋があります。今はなき、堅尼地城(ケネディタウン)の「祥香園茶餐廳」のビニール袋にはイラストこそありませんでしたが、茶餐廳らしからぬピンク色の文字で記された歴史を感じさせる中文の店名と、少し浮ついた感じの英文店名がちょっとおしゃれな香港島の風を届けてくれていました。昨年秋に閉店してしまったこのお店の名物といえば、クッキー生地のエッグタルト。袋にもしっかり「馳名蛋撻(名を馳せているエッグタルト)」という文言が踊っています。

 

ピンク色の文字が特徴的な「祥香園茶餐廳」の袋

 

エッグタルトといえば一個一個に紙が敷かれていますが、この敷紙もお店ごとのデザインが光ります。「祥香園茶餐廳」のそれは真ん中にホットドリンク、それを囲むように上半分は中文、下半分は英文で店名と所在地、電話番号が記載されていました。

 

「祥香園茶餐廳」のエッグタルトの敷紙。お店の名前が「餐廳」になっていました

 

おいしいエッグタルトを食べた後に、この敷紙をぼーっと眺めるというもうひとつのお楽しみがあったこと、今改めて思い出してはこのお店のことを偲んでしまいます。

 

「祥香園茶餐廳」のエッグタルトたち

 

香港の茶餐廳の中でわたしが最も好きな袋が、葵涌の古い商店街にある「新香冰廳餅店」のもの。ここのビニール袋は原価が高いらしく、サンドイッチなど特別なメニューを買ったときだけ提供され、ちょっとしたタルトやケーキをテイクアウトする際は普通の白い袋に入れられてしまいます。それもそのはず、単色刷りがほとんどの他の店と違って、「新香冰廳餅店」の袋は青と赤の二色刷り!シックな青と、レトロな赤とのコンビネーションがたまりません。

イラストはお皿に載ったロールケーキやタルト、そして立ち上る湯気の香りが実勢に感じられそうなコーヒーカップに、クリームソーダか紅豆冰でも入っていそうな瀟洒なグラス。左下にぎっしり書き込まれた四字熟語たちも思わず読み上げたくなるほど賑やかです。

 

香濃咖啡 香り豊かなコーヒー

冷熱飲品 アイス・ホットのお飲み物

名貴西餅 名高いケーキ

出爐麵飽 焼き立てのパン

熱辣蛋撻 あつあつのエッグタルト

整日供應 終日提供しています

 

このお店、今ではあまり見かけなくなった古いケーキ、クッキー類を店頭で元気に販売している穴場店です。二色刷りの袋が出てくるかどうかは店員さんの気分次第のようでもありますが、袋目的でなくても、十分に味をお楽しみいただけることでしょう。

 

「新香冰廳餅店」の素敵な袋

 

食べ物や飲み物の味や種類、店内の雰囲気だけでなく、袋や敷紙からも香港らしさ、レトロなかわいさが感じられる香港の茶餐廳。店内で食べるのもいいけれど、たまにはパンやエッグタルトをお持ち帰りして、素敵な袋を愛でてみませんか?


akiramujina

九龍を拠点に「茶餐廳愛好家」を勝手に名乗り、ほぼ毎日茶餐廳や冰室に足を運んでいる在港日本人。
趣味は旅行と茶餐廳めぐり。コロナ禍で旅行ができない今は年100店以上の茶餐廳訪問と、年300杯以上の港式奶茶を目標にしています。
どこへでも行くフットワークの軽さが自慢ですが、どこででも食べてばかりいるせいで自身の重さが悩み。
TwitterとInstagramでも食べ物の話ばかりしています。

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