2023/06/22


前回までのあらすじ

結腸がん手術後の入院生活最終日、告げられた生体検査の結果は、リンパ転移なしのステージ2で抗がん剤も必要ないとのこと。パートナーと喜び合って2022年のクリスマスを迎えた。日本から母親も来て、楽しくクリスマスディナー。しかし翌日、食物繊維が入った物を食べてしまい呼吸もできないほどの腹痛に。緊急入院することになった。


病室に案内されるまでもずっとお腹の痛みはなくなりません。ようやくCTスキャンをとることになったのが22時を過ぎたころ。CTスキャンは仰向けで20分くらいかかるのですが、お腹が痛いわたしにはこれが拷問でした。かろうじて足を曲げさせてもらい、深呼吸をしながら検査に堪え、病室へ行って結果を待つことに。しばらくすると、主治医の同僚の若いドクターからスキャンと血液検査の説明がありました。大きな問題はなく、おそらく便がつまり、食物繊維を食べた影響で腸に負担がかかっていたとのこと。下剤を処方され、痛み止めのかなり強い薬を注射されました。これがモルヒネに近いものだったようで、注射された瞬間からふわーっとなり、すぐ眠ることができました。次の日は、なんとかお粥を食べ、トイレに何度も行きお腹を空っぽにして休んでから退院することができました。日本から来ている母をPCR検査に連れて行かなければならなかったので、退院できて良かったです。

この日を境に食べ物にさらに気を付けるようになりました。日本から注文した大腸がんの患者のためのレシピブックがかなり役に立ちました。お腹に優しいレシピがいっぱいで、お粥や野菜スープなどを中心に毎日ゆっくり食べました。母がもう無理はしちゃだめだと、毎日犬の散歩や料理をしてくれて、本当に助かり頭が下がる思いでした。子どもが産まれてから母と2人でゆっくり時間を過ごしたのは、きっと初めてだったんじゃないかと思います。

さて、退院から1週間がたつと、主治医ドクターPのフォローアップ検診がありました。ここでは、特に問題なく、念のため手術で取った腫瘍の生体検査をして、遺伝的要素のあるがんかどうかの検査をすることになりました。そして、前から気になっていた腫瘍科のドクターの診察も受けることにしました。直腸がんサバイバーのEさんもおすすめしていた腫瘍科のドクターR。母とパートナーと3人で、ドクターRの勤務する病院へ。ここでなんともショックなことを言われることになったんです。

生体検査のレポートを読み上げながら、「あなたの腫瘍は大腸の壁をほぼ突き破るまで進行していた(腫瘍の壁深達度がT3だった)。なので、再発率を下げるために3か月間点滴と錠剤の抗がん剤を勧める」と言われたのです。わたしたち3人、抗がん剤はいらないと安心しきっていたので、空いた口がふさがりませんでした。この時は抗がん剤=体への負担がすごく大きい、髪が抜ける、副作用がつらいなどの悪いイメージしかなかったので、正直信じられない気持ちでした。

「今すぐは決められません」と伝え、他にもセカンドオピニオンが必要だと感じ、すぐにリサーチして、年明けの予約を2件入れました。年末年始はずっと抗がん剤に関するリサーチばかりしていました。

わたしの母もがんに効くと言われているものを日々リサーチしてはわたしに試させようとしてくれていました。紫キャベツとビーツのジュース、プロポリスのエキス、漢方のお茶など・・・。漢方のお茶は、母の友人の身内が研究していたことのあるもので、なんと自然の抗がん剤と呼ばれるくらい効くらしい。そこで、香港なら簡単に手に入るはずと思い、母と一緒に上環(ションワン)という、漢方のお店がたくさんある所へ出向きました。広東語で書いたお茶の名前のメモを渡すと、すぐに出してきてくれました。大きな袋で2種類のお茶。お値段もお買い得。2種類を混ぜ合わせ、決められた量を2時間以上煮出して作ります。味は、なかなか悪くなく、抗がん剤をやるかやらないか決まらない間、毎日このお茶を飲むようになりました。

2022年大晦日は、もちろんお酒も飲めず、パートナーと母と3人でポーカーをして過ごし、なかなか楽しい思い出ができました。この頃はまだお腹の調子がまちまちで、トイレに行く度に痛かったり、お腹が張ったりすることが多かったです。年が明けるとフランスに行っていた子どもたちが帰ってきました。初めて長く離れた今回、久しぶりの再会にこみあげてくるものがあり、涙が止まりませんでした。子どもたちもわたしの元気そうな様子に安心したようでした。

さあ、子どもの学校も始まり、早起きとお弁当作りも始まります。仕事はまだお休みしていたので、子どもが学校の間はまだまだ母とゆっくりすることができました。最初は2週間の予定だった母の滞在が3週間に延長され、その3週間もついに終わりがきました。わたしも仕事へ復帰できるほど体力が回復し、またわたしが無理をするんじゃないかと心配しながら、母は日本へ帰国しました。そして、腫瘍科のドクターのセカンドオピニオンを聞きに行く日が訪れます・・・。

つづく


福山さき

2012年、東京から香港に移住。フリーランスインストラクター。小学生、中学生のママ。趣味は、料理とピアノ。


 

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