2023/05/19

前回までのあらすじ

大腸のおよそ3分の1を切り取る3時間の腹腔鏡手術から目を覚ますと、喉が痛い、患部も痛い。水を飲むのも歯磨きも人の手を借りないと出来ない状態。術後1日目に食べたおかゆの上澄みは身体に沁みわたり、エネルギーが湧いた。2日目は支えてもらってなんとかトイレにも行けた。リンパ転移がないかどうかの生体検査の結果が気になりながら過ごした入院生活、その結果は……。


術後3日目は友達がわたしの大好きなあんこのデニッシュを2つも買ってきてくれ、調子に乗って2つとも食べたら、案の定お腹を壊してしまいました。今考えてみると、なんて無謀なことをしたんでしょう……。術後はしばらく空腹感と満腹感が感じにくいそうなので、なにをどれだけ食べるかが難しかったです。

そのあと直腸がんサバイバーのEさんもお見舞いにきてくれて、自身の入院エピソードなどを話してくれました。他にも会いに来られないかわりに大好きなTWGのマカロンやお茶、お花などを差し入れでいただき、毎日ゆっくり、入院中なりに楽しくすごくことができました。

ひとつ残念だなあと思うのは、あまりナースとの交流がないこと。日本では出産の時しか入院したことがないですが、ナースと雑談をした記憶があるので、香港はちょっとその辺はドライだなあと思いました。

退院前日は、待ちきれず髪を洗いました。入院してから4日間シャワーも浴びられないので、髪の毛がぼさぼさすぎていやだったので、髪を洗っただけですっきり。椅子に座って前のめりになってすごく洗いにくかったですけどね。わたしはメイクも大好きなので、この日はちょっとメイクもして、たくさん廊下をウォーキングしました。

廊下の壁には、患者さんから届いた感謝のカードが展示されています。残念ながらほとんどが広東語で読めなかったけれど、ドクターやナースって本当にすごいなあと感激しました。わたしも良くなったらカードを送ろうかな。

さあ明日はいよいよ退院!ドクターPは毎晩12時前後に回診に来ますが、入院最後の夜に生体検査の結果が分かればいいなあと思い、とりあえず眠りにつきました。そして案の定夜中にドクターがやってきて、生体検査の結果が出たと告げられます。その結果は……リンパ転移のないステージ2!抗がん剤も必要ないとのこと。もう、嬉しくて飛び上がりたいほどでした。

夜中だったので、誰にも電話できず、海外に住んでいる姉妹には時差の関係で電話することができました。まわりのベッドの方たちに聞こえないように、布団にもぐって嬉しい報告をしました。そして翌日、退院の準備をしているとパートナーが来たので、嬉しいお知らせを伝えて、二人で泣いて喜びました。ああ、やっぱりわたしって運がいいんだなあ、と心底思いました。

さあ、退院してからはじっとしていられず、歩いて1分の距離にあるスパに行ったり、モールを散歩したり、カフェで乳がんサバイバーのお友達とお茶をしたり、すごく充実した時間を過ごしました。

そしてクリスマスイブ。わたしはクリスチャンなのですが、大人になってからは滅多に教会には行きません。でもクリスマスは特別、そして今回はがんの手術が無事に済んだことを感謝したくて、お祈りに行きました。パートナーに支えられながら、ゆっくり歩いて教会へ着くと、ミサの始まりにクリスマスの歌を歌います。どうしたことでしょう。涙がとめどなく溢れてきました。自分でも止められないくらい。感謝の感情が溢れてずっと泣いてしまいました。また顔がぐしゃぐしゃに。自分でも経験したことのない、感情でした。

ミサが終わると、パートナーと一緒に準備をしたささやかなディナー。幸せでした。しかも明日サプライズゲストが来るというのです。誰だろう……。
そして12月25日当日。サプライズゲストは母でした。わたしには26日に日本から来ると言っていたのに!当たり前ですが、娘のがんの発覚を人一倍心配してくれていた母。これから3週間も香港に滞在しお手伝いをしてくれるとのこと。母がそばにいてくれると心強いです。おいしいクリスマスディナーも、この日はお腹いっぱい食べることができました。

しかし、翌日のこと……前日食べすぎたせいで朝からお腹がすきません。お昼にかろうじて、自分で作った失敗気味のライ麦パンと、母がもってきてくれた郷土料理のきのこの入った水餃子を食べたら、なんとお腹がどんどん痛くなってきたのです。そういえば、ライ麦もきのこも食物繊維。大腸がん手術後は食物繊維はもってのほか。少量ならいいかと思ったのが間違いでした。

このあとお腹の痛みはどんどん増し、四つん這いでかろうじて呼吸できるくらいひどくなったので、ドクターPに連絡をすると、旅行先から返事をくれ、念のためすぐ同僚のいる病院へ救急で行くように言われました。パートナーに支えられながら、病院へ行くと、コロナのテストやらでバタバタしましたが、念のため検査もかねて一晩入院することになってしまいました。母にもパートナーにもかなり心配をかけてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。今後は食べる物に本当に気を付けないといけない。なにもないといいな……。

つづく


福山さき

2012年、東京から香港に移住。フリーランスインストラクター。小学生、中学生のママ。趣味は、料理とピアノ。


 

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