2023/09/14

前回までのあらすじ
再発率を下げるため、抗がん剤のゼローダ(カシペタビン)を服用することになったさきさん。3サイクルまでは特に副作用もなく家族で旅行を楽しんだ。しかし身体に薬が蓄積してきたのか、手荒れや足裏の腫れなどの症状が出てきた。4月に帰国した際には足の親指の爪あたりが痛くなり、香港に戻ってからクリニックに行くことに。


足の親指の痛みについて、様子を見ましょうと主治医に言われてから、日に日に状態が悪くなり、素人の目で見てもこれは抗生剤を飲まないと治らないくらい化膿しているな、と思えたので、週の途中にもう一度主治医のところへ行きました。片足を引きずって歩かないといけないほど痛く、すぐに皮膚科専門医のところへ紹介状を書いてもらい、予約を取ってその足で皮膚科へ行きました。やはり抗がん剤で免疫が落ちた関係で、ちょっとした雑菌でも化膿しやすくなってるとのこと。抗生剤をもらいました。

さて、ここで少し保険のお話をしたいと思います。健康保険のシステムというのは、国によってだいぶ違うので、香港と日本でも全く違います。香港ではまず、日本のような国民健康保険というシステムは存在しません。個人、会社経由で保険に入るか、入らないかの二択です。
わたしのまわりには健康保険に入ってない人がかなり多いです。そういう人はどうするかというと、なにかあった時は、公立病院に行きます。難点としては、待ち時間が長いこと。利点は、かかる費用がものすごく安いこと。例えば私立病院で出産すると100万円以上かかるところ、公立病院では一万円以下らしいです。ただし、ちょっと具合が悪いとか、病気になったとか、緊急性が低いと、予約がなかなか取れなかったりとか、すぐに診てもらうことが難しいです。

そして、個人でお金を払って入る健康保険は会社がたくさんあり、選ぶのも大変です。そのため保険ブローカーというものが存在して、ニーズに合わせてその人に合った保険会社やプランを探してくれます。そしてもちろん毎月払う金額によってなにがどこまでカバーされるかも変わってくるので、ちょっとややこしいです。
わたしが入っている保険の話ですが、保険会社の指定するドクターリストに載っているドクターのところに行けば保険カードを提示するだけで、基本料金が発生しないんです。プライベートのドクターはどこも診察代が基本1万円を超えるので、お金を払わずに診察が済むのはとても助かります。なにか検査が必要になった時など、クリニックが保険会社にカバーされるかなど確認もしてくれます。
今回のわたしの大腸がんの手術・入院も日本円にすると約400万円ほどかかりましたが、保険で90パーセントほどカバーされました。さすがに全額カバーされるプランじゃなかったようです。そして術後の抗がん剤治療も、毎回お金がかからず、唯一自分で払ったのは白血球増発剤の注射(一回2万円ほど)と副作用緩和のためのマウスウォッシュ、ハンドクリーム代くらいでした。
もしも保険に入っていなかったら、大腸がん発覚するために必要だった大腸カメラもきっと何か月以上も予約できなかったはずだし、手術が必要と分かっても一体どれだけ迅速にできたのかは不明です。全て私立のクリニックのドクターだったおかげで、予約はすぐにとれ、対応も早かったと思うと、本当に保険に入っておいてよかったなあと思いました。

さて、足の化膿は抗生剤を一週間飲み切ってもなかなかよくならず、抗がん剤5サイクル目は一週間遅らせてやることになりました。そして副作用がひどくなったのを考慮して、今まで朝晩4錠ずつだったのが、3+1/4錠に変更されました。勝手に半分くらいの量まで減薬されると思ってたので、こんなに中途半端な減らし方なんだあ、となんだか驚きました。しかし、減薬のおかげか、確かに5、6サイクル目は特にトラブルもなく、手足の赤み、痛みが軽くあったくらいで済みました。
この間40歳の誕生日も迎え、友人30人を招待して盛大にお祝いもし、ほぼ飲んでいなかったお酒も少しだけ解禁しました。会う人みんなに「元気そうで、抗がん剤治療中に見えない、がんだったなんて信じられない」と言われました。

大腸がんになったことは、ショックだったし悲劇ではあったけれど、なぜかここにきて、大腸がんになってよかった、これもいい経験になっていると思えるようになっていたのです。がんになったことで気づけること、周りに教えてあげられることも増えたし、治療も思ったほどつらくないし、やっぱり自分はラッキーなのかな? と常にポジティブでいられました。
あと2サイクル残っている抗がん剤。夏休みに差し掛かるけれど、なんとか乗り越えられますように・・・

つづく


福山さき

2012年、東京から香港に移住。フリーランスインストラクター。小学生、中学生のママ。趣味は、料理とピアノ。


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