2022/09/14
道教、仏教、儒教の寺院である嗇色園黄大仙祠。今年の中秋節「花燈園遊會」の様子。
中秋節快樂!亜熱帯な香港も朝晩は暑さが和らぎ、頻繁にトンボの姿を見かけるようになりました。2ヵ月近い夏休み。兄弟2人でHK$3万を超えるサマースクール代は、結局、普段の月の学校授業料とほぼ変わらない額の出費となって我が家の家計にのしかかりましたが、ようやく新年度がスタート。今日は子どもたちの習い事と教育費についてのお話です。
今年度Year3に進級した長男。来港前、日本でインター幼稚園に通っていたときは、園からの脱走未遂で「次に同じことが起きたら退園です」園長先生から呼び出しを受け、お絵描きの時間に描いたという血の涙を流す雪だるまの絵にぎょっとし、ついには(それまで普通に喋っていたのに)吃音が出るようになりました。
お受験園だった校風が合わず苦しかったのか、担任の先生との相性が悪かったのか、クラスの雰囲気に馴染めなかったのか、英語と日本語を一度に詰め込もうとしたのがいけなかったのか。長期入院で2ヵ月間、わたしが家を不在にしたのが影響したのか、次男の誕生に嫉妬したのか……
区の相談室で話を聞いてもらったら、原因探しに意味はない、これからできることを探しましょうと諭され、発達関連の書物を読み漁り、育児セミナーを片っ端から受講し、同じような悩みを抱える知人と情報交換。小児科医や言語聴覚士に相談しながら、授乳中の次男を抱えて東奔西走していた日本での日々。
長男4歳、香港に来て最初の年。「自分の意見を述べようとすると、話し始めるときにどもってしまうんです。ボキャブラリーが少なくて頭の中で言葉を探しているのか、日本語から英語に変換しようとしているのか、吃音なのか、日本では診断がつかなくって」幼稚園の担任の先生に相談したら、週に何度か学校に来てくれるスピーチセラピーの先生を紹介されました。
セラピーの最後、頑張ったご褒美(?)で先生と対戦しているらしいUNO。自分のカードを出すときは必ず一言発さなければならないルールでこれもれっきとしたプログラムの一環なのだそう。夕食後の団欒は家族4人でUNOするのが最近の我が家のマイブーム。
1セッション30分HK$680。学校(または政府)の補助が出ているようで、先生の診療所で直接診てもらうより安い料金設定となっています。週1回、放課後、学校の保健室の隣の別室でスピーチセラピーを受けることになった長男。セッションは先生と1対1で行い、終了後に口頭かメールで過去との比較やその日の調子についてコメントをもらえます。加えて、宿題としてボードゲームを受け取り、両親とゲームに興じている様子を録画したビデオを送って家族との会話の様子を診てもらったり、担任の先生との連携のもと、学校の授業中の発言やお友達とのお喋りの様子を観察してもらったり。
ある日、息子のセラピーが終わるのを待っていたら、お隣のお宅の次男君が次の順番を待っていて、Hi!くったくのない笑顔で片手をあげてくれました。わたしには中東からやって来た彼の話す英語は滑らかで流暢に聞こえていたけれど…彼もセラピーを受けていたのかと驚きましたが、相手に自分の考えを明瞭に伝え聞き取ってもらうための話し方の練習、メトロポリス香港には英語を母国語としない人はたくさんいるし、セラピーを受けるのって英語の習い事みたいなもっと気軽な感覚なのかもしれないと、母親としての自分を責める気持ちがゆっくり解けていくのを感じました。
HSBCが15カ国を対象に実施した調査によれば、香港は小学校入学から大学卒業までにかける教育費が平均US$132,161(およそHK$100万!)と調査対象国中トップの金額だったのだそうです(注1)。出所は異なりますが、日本の小学校入学~大学卒業の教育費総額は1,219万円なのだそう(注2)。
教育熱の高い香港。香港のセカンダリースクールから英国の大学の医学部に進学されたお嬢さんのお母さんが「数学の家庭教師、お月謝HK$2万もしたのよ。本人も絶対に医学部に行くんだって頑張っているし、もう、必死になって稼いだわ」受験当時のことを話してくださり、1セッション30分HK$680で怯んでる場合じゃなかったとびっくり。
香港に来て丸3年。見守ってくれるスピーチセラピーの先生と、得意な科目を伸ばそうとしてくれる学校の姿勢と、海と山に囲まれた自然豊かな環境と、香港の(いい意味で)割と適当な感じが奏功したのか、気付いたら長男の吃音はほとんど消えてなくなっていました。
長男が将来就きたい職業は宇宙飛行士からロケットの設計士に変わりました(やっぱり宇宙!)
「火星にはフォボスとダイモス、2つの月があるんだけれども…」夕飯を作っている最中、必ず台所にやって来ては日替わりのテーマでレクチャーしてくれる長男。未熟児で生まれ、保育器の中でチューブに繋がれた我が子を前に「元気でいてくれさえすれば、他はもう、何も要らないよね」わたしの手をぎゅっとした夫の言うとおりではあるのですが、色んなことを経験して、知識を得て、本人が将来、目指したい道が定まったなら、夢は叶えて欲しいし全力でサポートしたいと思うのです。
来年からプライマリースクールに進学する次男も控えているし、香港100万ドルの夜景ならぬ、おひとり様100万ドルの教育費。まだまだ先は長くてくらくらしてしまいますが、さ、明日からも頑張って稼いで行きまっしょい。
Emi in HK。多謝收睇。下次見!
夏休みに訪れた香港ディズニーランドのナイトプログラム「モーメンタス(Momentous)」(2022年6月スタート)。プロジェクションマッピングの装置(むしろ、そっち?)に興味津々だった息子たち。
【出典】
※注1…The Value of Education,Higher and higher,Grobal Report,2017(HSBC)
※注2…小学校入学から高校卒業まで全て公立(476万円)で国公立大学に進学(743万円)した場合の金額。授業料、給食費、図書・学用品代、通学費、修学旅行費、習い事代(学習塾、家庭教師を含む)の総額。最も費用のかかるパターン(小中高全て私立(1,671万円)→私立大学理系進学(1,083万円)の場合)だと総額2,754万円。
平成30年度「子供の学習費調査」調査結果の概要(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxt_chousa01-000003123_03.pdf
令和3年度「教育費負担の実態調査結果」(日本政策金融公庫)
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_r03.pdf
Emi
映像プロダクション会社勤務。大学院修了後、日本・東京商工会議所にて、中小企業の資金調達支援から政策立案時の省庁との折衝まで多岐にわたる業務に従事。15年半の勤務を経て2019年、夫の仕事の都合により来港。2020年から現職。夢は日本と香港の合作映画の製作に関わること。気分転換は25年振りに再開したピアノ。インター校に通う7歳、4歳、男児2人の母。
Twitter @emi_m_wang
E-mail emiinhkg@gmail.com
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