2024/02/24

 

今回から5回に渡り、香港の老舗の歴史にまつわるお話を香港老舖記錄冊 Hong Kong Historical Shopsさんとのコラボでご紹介したいと思います。香港老舖記錄冊さんは、Facebookなどで香港の歴史的なお店を独自で取材して発信しています。香港文化の象徴として老舗の存在は欠かせない、老舗が存続していくことが香港の文化を盛り立てることだと言います。香港を愛するHong Kong LEI編集部のわたしたちもまた、昔から愛され続けている香港で誕生した商品が、どんな会社によって作られ、どんな背景で誕生したのか、また、どんなところで、どんなふうに作られていたのかなどを垣間見たくなりました。題して「香港オタクのための愛すべき香港老舗の歴史をたどる」です。でも長いのではしょりまして(笑)「香港老舗の歴史をたどる」と命名いたしました。どうぞよろしくお願い申し上げます。


さて、今回ご紹介するのは、これ!


Photo by Boris Lee

いわゆる万能オイルと言われているもので、打ち身、痒み、鼻詰まり、頭痛、車酔いなど用途は人それぞれさまざまです。みなさん1回は、このかわいい缶にそそられて、空港のドラッグストアーなどでお土産に持ち帰ったことがあるのではないですか?ばら撒きようには小さいものを、本気自分用には大きいのを。缶のデザインも、ザ・香港という感じでよだれが出ます(笑)。

肝心のオイルはとってもユニークなんです。よくあるのはメンソールが入ったサロンパスのようなちょっとスッとする香りです。でもこれはスッとするよりもまずはシナモンの香りが鼻をつきます。浅田飴の薬版といったところでしょうか。なんとも形容し難い飴のような甘い香りがします。塗った後はシナモンの香りからメンソールの香りがより強く感じられます。オイルの色もおいしそうな飴色です。でも決して飲まないように!

オイルの塗り方は他のコラムでもご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

香港暮らしで見つけた、ちょっといいもの!第3回「万能オイル」


では、オイルが生まれた保心安藥廠 (ポーサムオン メディスン ファクトリ)のお話に移りましょう。

 

社名:保心安藥廠 (ポーサムオン メディスン ファクトリ)
https://www.posumon.com.hk/zh-hant/

設立:1907年

事業内容:独自の漢方薬

住所:九龍九龍王竹杭王竹杭路28號浦仔工業大厦12-13樓

製品:保心安油、保心安膏及追風活絡油

地元の製薬会社の多くが小売店を持たない中、保心安(ポーサムオン)は上環皇后大道中191號に店舗を構えています。 伝統的な内装の小さな店で、店内に入ると、色とりどりの木彫りの子どものロゴが目に入ります。 昔はこの「子ども」を見ると、自然と保心安オイルをすぐに思い浮かべたものです。 地元の製薬会社に関する情報を照合し、佛山で設立された李忠信堂、ベトナムの二天堂、シンガポールで設立された嶺南藥廠、広州で設立された何濟公藥廠など、数百年の歴史を持つ中国独自の製薬会社の多くが、保心安を除いて、もともとは外国で設立されたものであることに気づいたのは、つい最近のことです。

 

1907年に郭兆樞によって香港で設立された保心安の本店は、中環利源西街3號にあり、1階には保心安の医薬品を専門に販売するマーケット部門があり、中2階には顧客と業務提携の交渉ができる会議室がありました。 工場ではさまざまな種類の薬用オイルや軟膏を製造しており、なかでも有名なのは色々な用途で使用できる「保心安油」。筋肉痛、関節痛、めまいや頭痛、胸部のうっ血、軽い腹痛、虫刺され、皮膚のかゆみ、風邪やインフルエンザの際の鼻づまりなど、幅広い用途に使用できます。 

 

かつては、銅鑼湾路162号(現在のクイーンズ・カレッジの敷地に隣接)にある「保心安製造工場」で製造されていました。3階建ての建物で、1階は店舗、2階と3階は住居用となっており、道路側には「保心安製造場」と刻まれていました。 作業場はベランダの奥にあり、そこに行くには1階の店舗を通らなければならなかったそうです。 工場から提供された情報によると、工場のあった場所は現在、民間の住宅地となっています。 当時、工場には40人以上の従業員がおり、薬用オイルや軟膏のほか、下剤や育毛オイルを製造していました。

 

1970年代、家業は四男の郭文勳と末っ子の郭文忠に引き継がれました。 中でも郭文忠は海外市場の開拓に着手し、製品が各国で人気を博す基礎を築き、現在ではアメリカ、カナダ、シンガポール、インドネシア、オーストラリアで販売されています。 黃竹坑の製薬会社も1998年にオーストラリアからGMP認証を取得し3種類の製品を製造しています。その中で、「保心安油」は4ml、5.6ml、18.6ml、30mlと最も多くのサイズがあり、10mlのロールオンタイプの「保心安油」もあり、顧客が好みに応じて選択するのに便利です。 クリームのパッケージは、紙袋からアルミフィルムに変更され、耐久性が増しました。 

 

工場は長年操業しており、生産水準は非常に高く安定しており、ユーザーからも高く評価されています。 しかし、3代目の舵取り役である郭子明によると、現在工場のスペースが不足していることが、保心安の事業発展を制限していると言います。 製造工程が完全に自動化されるにつれて、将来的には機械がより多くのスペースを占めるようになり、新しい製品を作るためには新しい生産ラインが必要になり、土地の需要は増すばかりだから、保心安社は早晩、より広い工場に移転する必要があるでしょう。 ですが、周知の通り、香港では工業用ビルの供給が乏しく、GMPの規定を満たすには問題点もありまが、すでに4代目も入社しており、新しい発想と伝統的な知恵と経験が融合して、さまざまな問題も解決していくことでしょう。

 

次回もお楽しみに!

 

 

 

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