2025/04/06
香港の老舗の歴史にまつわるお話を香港老舖記錄冊 Hong Kong Historical Shopsさんとのコラボでご紹介したいと思います。香港老舖記錄冊さんは、Facebookなどで香港の歴史的なお店を独自で取材して発信しています。香港文化の象徴として老舗の存在は欠かせない、老舗が存続していくことが香港の文化を盛り立てることだと言います。香港を愛するHong Kong LEI編集部のわたしたちもまた、昔から愛され続けている香港で誕生した商品が、どんな会社によって作られ、どんな背景で誕生したのか、また、どんなところで、どんなふうに作られていたのかなどを垣間見たくなりました。題して「香港オタクのための愛すべき香港老舗の歴史をたどる」です。でも長いのではしょりまして(笑)「香港老舗の歴史をたどる」と命名いたしました。どうぞよろしくお願い申し上げます。
今回ご紹介するのは、九龍城にある「冠和酒行」です。昔ながらの中国酒や醤油、食品雑貨を販売していたお店です。時代とともに商品の需要が減り残念ながら2025年2月で閉店したそうですが、それまでのお店の移り変わりを見ていきましょう。
冠和酒行 – 九龍城
創於:1945年
經營:醤油・雑貨の販売
地址:九龍城衙前塱道48號地下
撰文:Ian Ma
攝影:Easy @chilllifehk
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1945年、調源醬園(醤油工場)の経営者である呂佳氏が「冠和酒行」を創業しました。店内では醤油や涼果(ドライフルーツ菓子)も販売していたため、輸送の利便性を考慮して、土瓜湾にある調源醬園の近くである九龍城に店舗を構えました。一方、酒造工場は粉嶺にありました。
1950~60年代の香港では洋酒がまだ広まっていなかったため、中国酒の販売が盛況でした。さらに、当時は啓徳空港や九龍城寨が存在し、衙前圍道周辺は多くの人で賑わっていたことから、酒行(酒屋)の商売も現在よりはるかに好調でした。現店長の何氏によると、当時、衙前圍道の本店と衙前塱道の支店を合わせて6~7人の従業員がいたそうです。しかし、2000年になると、店舗の家主が2軒の賃貸契約を終了し、同年、冠和酒行は侯王道93号へ移転しました。
侯王道に移転後も、店舗の経営は比較的安定していました。新店舗は九龍塘に近かったため、購買力のある顧客がわざわざ訪れることもありました。当時、店内では瓶入りの白酒のほかに、量り売りも行っており、街の住民が2両の米酒を購入し、その場でHK$2を支払ってゆっくりと飲みながら、馴染みの店員と世間話を楽しむという光景がよく見られました。また、醤油や涼果も地元住民や常連客に人気がありました。
しかし、このような風景もすでに過去のものとなってしまいました。かつての常連客は高齢化し、若い世代は中国酒をほとんど飲まず、家庭で料理をする機会も減っています。時代とともに人々の生活も変わり、店舗の場所も変わる運命にありました。2021年、侯王道93号の古い建物が不動産開発会社に買収され、冠和酒行は衙前塱道48号へ再び移転しました。
現在の店舗では、以前ほどの賑わいはなく、従業員はフルタイム2名とパートタイム1名のみとなりました。2度の移転を経ても、経営スタイルは大きく変わることなく、主に酒類と醤油を販売し続けています。取り扱う中国酒には、赤米酒、白糯膠、三蒸酒、高粱酒、花雕紹興酒などがあります。さらに、茶葉、涼果、ピーナッツ、梅菜、その他の食品雑貨も取り扱っています。
また、1870年代創業の調源醬園の醤油製品も販売しており、特級生抽、草菇鮮抽(生抽)、一級生抽、特級醤油(老抽)、紅標醤油(老抽)などが店頭に並びます。しかし、取り扱う商品の種類では、深水埗の姉妹店「泰興公司」には及びません。
それでも、冠和酒行には唯一無二の存在価値があります。それは、店長の何氏が昔ながらのレシピをもとに、店舗の奥で手作りしている3種類の特製醬です。それは「豆瓣醤」「酸梅醤」「柱侯醤(羊肉醤とも呼ばれる)」で、どれも評判の高い一品です。特に冬場には売れ行きが良く、遠方からわざわざ買いに来る客も少なくありません。
しかし、残念ながら、冠和酒行は農暦新年を過ぎると閉店する予定です(訳者注:2025年2月28日閉店)。この店ならではの独特な味も、まもなく歴史の一部となってしまうでしょう。
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