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2026/04/24

香港に来てから、ずっと行きたかった場所があります。カラオケです。

もともと歌うのが好きだったのもありますが、コロナ禍による長い沈黙の期間、ずっとマイクを握る機会を失っていました。とはいえ、香港で日本式のカラオケ店を探すのは場所が限られていますし、システムも日本とは微妙に違います。「なんだかハードルが高いな」と、足踏みをする日々が続いていました。

しかし、この街に住んでみて気づいたことがあります。香港の人たちは、わたしが思っていた以上に、とにかく歌うことが大好きなのです。

街を歩いていても、イヤホンから流れる音楽に合わせて、すれ違いざまに気持ちよく熱唱している人によく出くわします。最初は「えっ?」と振り返ってしまいましたが、周りの人は誰も気に留めません。今ではすっかり見慣れてしまい、この街のBGMの一部のように感じています。

色々なジャンルの曲が聴かれていますが、そんな彼らがいざマイクを握ったときに好んで選ぶのは、感情をたっぷり込めた重厚なバラード系が多い気がします。

香港のカラオケでは日本の歌も歌えるけど、名前と写真がチグハグで笑うポイントが多いです
カラオケに必須のサイコロ遊び! は映画でもみてたけどようやく遊ぶ日が来ました

そして何より面白いのが、日本と香港のカラオケのルールです。

日本のカラオケといえば、なんとなく順番を回し、その場の空気を読んで選曲し、人が歌っている間は手拍子をして待つ……という暗黙の了解がありますよね。けれど、こちらではそんなものは一切関係ありません。

まず、順番なんて気にせず、思いついた人が誰彼構わずどんどん曲を入れていきます。そして驚くべきはここからです。他人の歌を聴いていて「ちょっと飽きたな」「つまらないな」とか、「早く自分の曲を歌いたい!」と待ちきれなくなったりすると、なんと勝手に順番を変えて、自分の曲を割り込ませてしまうのです。

なんなら、誰かが気持ちよく熱唱している途中の曲でも、平気で「ピッ」と強制終了して消してしまうことすらあります。日本ではちょっとしたケンカになりそうな暴挙ですが、誰も怒りません。「ああ、消されたか」くらいのもので、また平然と次の曲が始まります。この遠慮のない自由でカオスな空間が、最高に心地よくて面白いのです。これは香港人全員がそういうわけではないのでご安心を。

すごいのは、各カラオケ店でスマホからも選曲ができること!

わたしのよく遊ぶ友人の一人は、そのカラオケ愛が高じて、なんと自宅の一部をカラオケボックス化してしまいました。

一室に本格的なカラオケマシンをセットし、防音設備まで完璧に整えているという気合の入れようです。「いつでも遊びにおいで」という言葉に甘えて、いまでは数ヶ月ごとに機材の電源を入れさせてもらっています。

噂の個人宅カラオケルームです。防音と照明ともに完璧
自宅カラオケでは絶対食事も必須。鍋を食べながら歌い飲んで深夜まで楽しみます

そこで必ず盛り上がるのが、「日本の歌を歌って!」というリクエストです。

みな、何でも歌えると思って曲を入れられます、千昌夫の「北国の春」とか山口百恵の「ありがとう あなた」、YOASOBIの「アイドル」などと他にも、いろんな年代様々のジャンル曲をあげくるので、わたしは試されてしまいます。

香港で愛されている広東語のポップスの中には、日本の曲のカバーが驚くほどたくさんあります。わたしが原曲を日本語で歌うと、彼らが横から広東語歌詞で被せてくる。言葉はまったく違うのに、同じメロディの熱量だけで部屋の空気が一つになる瞬間は、何度味わっても鳥肌が立ちます。

こうしたカラオケへの熱気は、その友人だけに限った話ではありません。

ふと周りを見渡せば、同僚の家にもマイマイクが常備されていたりしますし、最近では「週末、カラオケしに深センまで行ってくるわ」と、歌うためだけにわざわざボーダーを越える猛者までいます。彼らの歌への情熱は、海も国境も越えていくみたいです。そんな話を聞いているうちに、今度はわたしも、深センまでカラオケ遠征してみようかな、なんて計画を立て始めています。何故ならば値段も安いのと、飲んで食べて、マッサージ付きなど夢のような環境でできると聞いたからです。

 

広東語の波が「ノイズじゃなくなった」。

友人宅で、マイクを両手で握りしめてバラードを熱唱する彼らの横顔を見ていると、この大音量の歌声もまた、わたしの香港生活を形作る大切な「生活の音」なのだと気づきます。

順番なんて気にしない。空気を読むより、今自分が歌いたい曲を入れるし、飽きたら消す。

そんな彼らの遠慮のない姿はなんだかとても逞しくて、その熱に当てられながら「やっぱりわたしは、この街の空気が好きなんだな」と、静かに、でも確かに実感しているのです。

 


プロフィール

いんよん

2020年に来港。キラキラした観光名所や派手な出来事よりも、朝の湿気、ローカルの生活音など、日々の暮らしの手触りを愛する。憧れで移り住んだ街に、いつの間にか身体ごと馴染んでしまった自身の変化や、ガイドブックには載らない「等身大の香港」を綴る。好きな飲み物は、ペンネームの由来でもある「いんよん茶(鴛鴦茶)」。

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