2026/06/28
香港に住んでいると、お隣の深センはとても身近な存在です。
以前のコラムでも触れましたが、友人たちは週末になれば、おいしいごはんやカラオケを目当てにひょいっとボーダーを越えていきます。最近ニュースなどでもよく耳にする、いわゆる「北上消費」というやつです。そんな彼らの熱量に背中を押されるように、わたしも久しぶりに深センへ遠出してみることにしました。
深センへ行くルートはいくつかあり、これまでも電車で行っていましたが、今回は初めて「バス」を使ってみることに。
まずは香港島から2階建てバスに揺られ、新界エリアの屯門を目指します。高層ビルがひしめく景色から、だんだんと緑が多く、のんびりとした風景に変わっていくのを眺めていると、それだけでちょっとした旅行の気分です。
この橋を渡ればそこは深セン
屯門に到着し、そこから深セン湾口岸へ向かうバスに乗り換えます。
海の上に架かる長くて大きな橋を渡りきると、イミグレーションの建物が見えてきます。いつもながら入国審査は緊張します。
特に今回は厳しい顔つきのオフィサーから念入りなチェックを受け、待っていると、彼はわたしの顔をじっと見た後、カタコトの日本語で突然「いいね!」と言葉をかけてくれたのです。思わず拍子抜けして、深センへと入境しました。
無事に手続きを終えて外に出ると、そこは今、深センで最も勢いがあると言われている「南山」エリアです。イミグレーションの場所場所で同じ深センでも雰囲気が違います。とにかくおしゃれなエリアです。ドローンでなにかを配達していたり、「深セン湾文化廣場」などアート・文化のランドマークがあったりと、ひと昔前に深センへ行っていた人たちから聞いていた「怖い街」というイメージとは、だいぶ違う景色が広がっていました。
入境後は雰囲気がガラッと変わり、とても近未来的
一歩足を踏み入れた瞬間に感じるのは、香港との圧倒的な「空間の使い方」の差でした。
香港の街が、人と看板と古いビルが肩を寄せ合う「ギュッとしたアナログな熱気」だとすれば、深センは「だだっ広くて洗練されたデジタル空間」です。道路はどこまでも広く、街路樹は綺麗に整備され、とにかく巨大でピカピカのショッピングモールが至る所に立ち並んでいます。ただ「どこを見てもモールばかりだな」と少し驚くほどですが、そんなだだっ広い街は歩くのがやっとで、暑さも相まってすごく疲れてしまいました。
次々と飛ばされて行くドローン配達
その中でも移動に欠かせないタクシーは相変わらず安く、気軽に乗れるのはありがたいポイントでした。
さらに驚くのは、街の「音」です。
香港を歩けば、トラムの走行音やバスのエンジン音など、良くも悪くもたくさんのノイズに包まれます。しかしここでは、走っている車のほとんどがEV(電気自動車)なので、不気味なくらいに静かなのです。ただ、その静かさが実は曲者で。幅の広い歩道を、音もなく電動バイクがビュンビュンと走り抜けていくため、うっかりしていると背後から轢かれそうになります。スマートな街並みに反して、歩道を歩く緊張感はかなりのものでした。「轢かれる」のではないかと。
噂には聞いていたけど、本当に炊飯ジャー出でてきたご飯は、熱々でおいしくいただきました
今回の遠征のもう一つの目的は、「食」です。
みなの北上消費の目的は食といっても過言ではないでしょう。多くの友人が食にフォーカスしており、期待度も高いです。その中で流行っているお店を、入念に調べましたが、まずは気になった2店舗から攻めてきました。1軒目は湖南料理の費大廚辣椒炒肉で各テーブルに炊飯ジャーが置かれ、炊きたてご飯が冷めることなくおいしいおかずと共に食べれるお店です。おいしくて病みつきになりそうです、開店と同時に入店しましたが、食べるのに夢中になっていたら、いつの間にか満席でした。
そして2軒目は野人先生というジェラート専門店です。毎日作りたてのジェラートを食べられると聞き、またお店の事を調べると中国内で面白い展開をしてきたお店だそうで、興味もおいしさも人一倍味わい深いものでした。
またの名を巨大Airpodsと呼ばれる深セン文化廣場
色々楽しんでいる中、やはり一番大変なのはスマホひとつですべての操作を完了させるという事です。財布も持たず完結するのは便利だけど、相変わらず慣れなくて悪戦苦闘でした。香港でも色々便利にはなってきていますが、いつ慣れるのでしょうか。でも、ありがたいことに皆優しくやり方を教えてくれます。そんな中洗練された空間で味わうグルメは、香港の茶餐廳で相席しながら食べるローカルフードとはまた違った面白さがありました。
ピンクのマクドナルドもあり、かわいかったです
そうして、程よく観光もしつつ、最先端のデジタル空間を満喫しながらも、わたしはずっとある「違和感」を抱えていました。
それは、どこのお店に入っても「エアコンの効きがとても弱い」ということです。最新の巨大なショッピングモールも話題のレストランも、なんだか空調が生ぬるく、香港のような凍えるほどの快適さがまったくありません。そう、わたしの身体は香港仕様なのです。
当日は久しぶりに天気がよく、気温もかなり高かったので全身汗だくになりながら南山エリアの探索を終え、帰りの深セン湾口岸へ。出境手続きを済ませて、香港側に一歩足を踏み入れたその瞬間——。
容赦なくガンガンに冷えた空気が全身を包み込み、わたしは思わずフフッと笑ってしまいました。
「ああ、帰ってきたな」と。
強烈なエアコンの風に包まれて安心した香港への入境
プロフィール
いんよん
2020年に来港。キラキラした観光名所や派手な出来事よりも、朝の湿気、ローカルの生活音など、日々の暮らしの手触りを愛する。憧れで移り住んだ街に、いつの間にか身体ごと馴染んでしまった自身の変化や、ガイドブックには載らない「等身大の香港」を綴る。好きな飲み物は、ペンネームの由来でもある「いんよん茶(鴛鴦茶)」。
Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。
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