2022/05/24

普段はジーパンにTシャツとカジュアルないでたちのわたしですがごくワンピースなんて着て高層ビルの立ち並ぶ香港の中心地まで出かけ、ちょっとお上品な気分になることもあります。そんな、わたしにとってちょっと珍しいある日、セントラルから九龍サイドへと向かうバスの中で目に飛び込んだこの看板。

んまぁ!!!

なんですか、『美股』『港股』『A股』って!?『股』などと品のない言葉三連発です。ビートたけしの『コマネチ!』じゃあるまいし、お下品じゃないですか!! せっかくお洒落して都会に出て来たわたしの気分台無し! そして広告の中のこの一見爽やかで仕事の出来そうな若者。黒いジャケット羽織って格好つけているのはいいけど、ニヤニヤしながら携帯電話の画面で君は一体何を見ているのか、いやらしい!! しかもHAPPY HOURだと!? 怒りがこみ上げてきましたこういう見かけのいい男は口先ばかり達者で、いろんな女性を口説き、絶対 二股とか三股とかかけているに違いないです!

 

それにしても、都会の真ん中の大きな看板に『股』って漢字を堂々と使うのは、いかがなものか、っていると、なんと携帯電話に迷惑メッセージが入りました。タイトルが


『H股交流学習群』

ウブなわたしはひっくり返りそうになり、もう香港は怖すぎる、早く家に帰ろう、と思い地下鉄に向かうと、地下道にまたまた出てきたではありませんか!『股』広告!

黄色い文字で『美股交易』! 香港も含め中国語圏ではエッチな雑誌を『黄色刊物』と言ったり、ポルノ映画を『黄色電影』などと言うと教えてもらったことがあるのですが、この広告もやはり何かいかがわしいものなのか……(ちなみに日本ではこんな場合は『ピンク』を使用しますね。『ピンク映画』とか)。でも……エッチな広告なら、もうちょっと色気のある写真があってもよさそうですが、なんだか文字ばかりで漢字以外、視覚に訴えてくるものがあまりありません。もしかして、香港で使う『股』という漢字は日本語話者のわたしの想像するものと全然違うものなのでしょうか。

 

調べてみました。『股とは『株式』のことで『股市』は『株式市場』、『股票交易』で『証券取引』という意味なのそうです。『美股』は『アメリカ株』、『港股』は『香港株』そして気になる『H股』は『H株といい、wikiによりますと“中国本土を登記地とする会社が香港証券取引所に上場して発行する株式銘柄”などという小難しいものでした。ただ皆様。世界的に流行したオミクロン株は『オミクロン股』とは訳しませんよ!それはまた別の株の話ですから。

 

さてあんなに下品なんだと怒っていたわたしですが、『股』と書いて『株』と読む、と理解したあとで1枚目の写真をよく見返してみると……確かに、『基金』とか買賣(買売)』とか書いてありますしHAPPY HOURに目を奪われて目に入らなかったのですが、その前に『投資』あり、いかにもお金の話の広告ですね

この黒ジャケット青年は、別にいかがわしい黄色電影を見ていたわけではなく、株価が上がって上がりまくってニヤニヤしていたのです。勝手にいやらしい男だと思ってごめんなさい! ちなみに香港は税率また税制度がシンプルなことで知られていますが、関税、消費税、相続税などがないのと同時に『股』で儲かったお金にも税金がかかりません。ですので広告のお兄ちゃん儲かったお金が全部自分のポッケに入るわけです。そりゃ、ニヤけますね!

 

私のように、街中で結構『股』広告が目につな、実は気になっていた方いらっしゃいませんか? それもそのはず、Finderの調査(2021年8月)*1 によると、実に香港の成人の57%が株式を保有しているという結果が出たそうです。成人の半数以上が株を保有しているとはすごい数字ですね。個人での株式購入の手続きが日本に比べると簡単多くの香港人が株式に興味がある。だから『股』と書いた広告街中で目にするのかもしれません

 

香港の友人に、日本人から見ると『股』広告は刺激的だ、という話をすると、彼女は笑ってこう言いました。「確かに、なんで株式に『股』なんてお尻のことを表す漢字を使うのかしらね!」とお尻? 聞くとどうやら香港では『屁股』と書いて、お尻のことを意味するのだそうです。ただこの表現は友達同士で使うならいいけど、あまりお上品ではないわよ、とのことでしたので、もしお尻が痛くてお医者さんに診てもらうようなことがあったら、日本と同じように『臀部』が痛いというように伝えてください

 

漢字を知っているわたしたちは、一つの漢字を目にすると、そこから色々な世界が広がります。『股』という漢字から、香港人はお金持ちになることを夢見るかもしれませんし、また桃のような可愛いお尻を想像するかもしれません。はたや、日本人のわたしは、子どもの頃にお茶の間を賑わせたビートたけしを思い浮かべそこからそれを真似する小学校時代の悪ガキのことなどを懐かしく思い出していました。

今日もこんな風に香港漢字横丁にふらりと迷い込んだわたし。いやぁ〜、やっぱり漢字って奥が深いですね〜、なんて一人お昼の点心の残りをつまみつつ普洱茶(プーアール茶)を啜りながら、雨に濡れた香港の夜を過ごしております。

 

湿気の多く、蒸し暑い季節がやってきましたが、皆様も是非、ニモマケズ、風ニモマケズ、香港の街中で面白い漢字を探してみてくださいね!

 

それではまた次回!

 

*1 https://www.finder.com/hk/share-trading-statistics

 


小林杏 (Anne Kobayashi)


東京都出身、青山学院大学仏文科卒。ニュージーランド、日本、フランス、英国での就業経験あり。ロンドンでの出産子育てを経て、2020年に来港。今まで住んできた土地のように、香港も愛おしい場所となりつつある今日この頃。趣味は読書、舞台芸術鑑賞とカンフー映画鑑賞。

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