2022/10/22

10月半ばの香港、暑さと湿気がだいぶ和らいできましたね。コロナ感染者数も落ち着き、ついに香港入境の際のホテル隔離もなくなり、出入りが少し楽になってきました。

 

コロナ渦のなか、わたしが感じたこと。香港では清潔という概念に案外無頓着な人から、異常に気にする人までの幅がすごく広いのではないか、ということ。

街市(市場)でお買い物をする人たちは、鮮度を確認するために生きている魚を指でツンツン、貝をツンツン、生の豚肉を指でつまみ、ひっくり返して裏面までチェック。食用カエル売り場では、おばさんが素手でカエルを掴み、その頭をばさっと切り落とし、ばりっと皮を剥ぎ、その手で客とお金の受け渡し。彼らの手にはなんらかの菌がついていないのか…。わたしの心配が無用であることを祈ります。

対してセントラル付近で見かける人々は綺麗好きを通り越し潔癖な人が多い印象です。携帯用消毒液を常に持ち歩き、またトイレのドアの開け閉めや、エレベーターのボタンなどを押す際に、手が直接触れないように、紙やペンを使う人を多く見かけます。ある時など、自分がこれから座るベンチに消毒スプレーをかけている女性を見かけました。ズボンを履いているお尻から一体なんの菌が入り込むのか…。もし仮にそんな菌が町中に蔓延しているのなら、逆に怖いです。

 

さて、そんな香港では清潔が進行します。

『清潔進行中』

 

この看板が立っているところでは、ジェット噴射の水で道路の汚れを吹き飛ばしながら掃除をしています。清潔が威風堂々と前進するわけです。でも正直わたしは、ジェット噴射の水で飛び散る道路の汚れ(謎のバイキン類を含む)が足元に跳ね返るのがすごく気になります。

 

ちなみにこの看板の近くのお店で求人広告が出ていて、『求む、清潔女工』とありました。まぁ誰だって不潔女工は雇いたくないですからね! と冗談はさておき、これは多分『清潔』と書いて『清掃』という意味なのでしょう。

 

そして綺麗好きな香港の皆さんの心を掴むため、お洗濯用洗剤の商品名もなかなか力強いものが多いです。

『威潔33』『快潔』

 

『威潔33』は勢いよく汚れを落としてくれそうですが、スピードはあるものの雑な仕上がりで、結果33%しか汚れが落ちない印象を与えてしまうのが残念です。

次の『快潔』の方は、気持ち良い仕上がりになる印象がある上に、日本でならさらに「『快潔』を使えば、頑固な汚れも全て『解決』!」って、駄洒落で攻められますから二重丸です。

 

 

それからもう一つ見つけた洗剤はこちら。

『潔白物語』

なんと。商品名もここまでくると、もう単なる洗濯用洗剤とは思えません。犯罪小説のタイトルかのよう。もしくは犯した覚えのない罪に問われた時に身の潔白を証明してくれる、魔法の粉のようではないですか! 冤罪をかけられ、裁判所で自身の潔白を証明することが必要になった場合、是非この洗剤で洗った真っ白いシャツを着て行きましょう!

 

罪といえば、香港ではコロナ感染者数が落ち着いた今でも、いろんなことが『罪』に問われますね。

ご存じのように、まず外でマスクを外して歩いたら、罪!警察に捕まって罰金5000ドル(約9万円)! それから香港入境後のPCRテスト。2022年10月現在は入境時及び、入境後2、4、6日目にPCR検査が科されていますが、それを受け忘れても、罪!! こちらはマスクよりも重罪で、罰金額が10,000香港ドル!(約18万円)。人間だからうっかり忘れることもある?そうでしょう、そうでしょう。でも過去に戻って検査を受けることはできませんので罰金を払うしかありません。問答無用。

また屋外でマスク着用して集まれるのは12人まで。グループとグループの間は1.5メートルの社会的距離を保たなければなりません。この人口密度の高い香港で。ちなみに屋内でのパーティーの入場制限は240人。パーティーでは飲食しますからマスク着用していません。もちろんワクチンパス適用ですが、ワクチンも感染を100%防げるわけでないのは周知の事実。

外で13人以上がマスクをつけて集まるのは極めて危険な行為で、屋内なら240人マスクなしでも安全なのか…と疑問を感じるのはわたしだけではないはずですが、前者は罪です!いくら『潔白物語』で洗った白いシャツを着ていても警察にしょっ引かれますので注意してください。

さて話を清潔な香港に戻しましょう。清潔な場所は気持ちがいいですし、大切なことです。ただ目に見えない『菌』との戦いにおいて、恐怖に駆られ盲目的に消毒剤を撒き散らしたり、大量の使い捨てプラスチックで過度な防御対策をすることは本当に意味があることなのか。『科学』という道具を使って、少し冷静に考えることも必要ではないでしょうか。

 

そんなわたしは『沈黙の春』(レイチェルカーソン、1962年)、『複合汚染』(有吉佐和子、1979年)の愛読者で、『潔白物語』よりも『そこそこ洗って日光に当てれば大丈夫物語』くらいの粉石鹸が環境にも家族にも優しくていいんじゃない? と思っています。

 

それではまた次回!


小林杏 (Anne Kobayashi)


東京都出身、青山学院大学仏文科卒。ニュージーランド、日本、フランス、英国での就業経験あり。ロンドンでの出産子育てを経て、2020年に来港。今まで住んできた土地のように、香港も愛おしい場所となりつつある今日この頃。趣味は読書、舞台芸術鑑賞とカンフー映画鑑賞。


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