2024/01/08

あけましておめでとうございます。

日本はまだ寒いところが多いですが、香港はだんだん暖かくなってきました。もうすぐ春が来る気がします。

 

九龍公園の中にある香港文物探知館も、12月の中旬から新しい期間限定イベントを開きました。古代や近代建築が好きの方がいたら、ぜひ参考にしてください。

 

香港文物探知館の建物は香港有数の文化財で、19世紀イギリススタイルの兵舎です。今は公共文化センターとして、無料公開しています。

 

イベントのタイトルは「同一屋簷下:嶺南傳統建築源流與藝術」。日本語にすると「ひとつ屋根の下:嶺南伝統建築の源流と芸術」です。中国大陸の嶺南地方の建築についての芸術と美学を紹介してくれます。古代の瓦をはじめ、柱やタイルなども近距離で見られます。

 

嶺南って、南の方を指すのでしょうか?

 

ネット上の情報によると、「嶺南は、古代は百越の地と呼ばれた。中原とは言葉が通じず風習も異なる南方諸民族(百越族)が住んでおり、呉や越を通じて中原ともわずかながら交渉を持っていた」ということです。今で言う「華南」地域のことを指します。

 

わたしが知っている限り、中国大陸は今も地方によって食文化や建築のスタイルが大変異なっています。例えば四川省は辛い食べ物が大好きですが、わたしを含めて辛いものを全然食べられない香港人はたくさんいます。

 

いったい、昔の建築スタイルはどうだったのでしょうか?

 

わたしは元々お寺などに行く時は、瓦を観察するのが好きです。タイル張りがきれいな床も、とても魅力的だと感じます。

南越王國獸面瓦

皆さんもご存知だと思いますが、長沙灣駅の近くには1955年に漢墓が発見されました。墓の中は副葬品が多くて、嶺南地方の漢代文化が明らかになりました。その中に、小さいおうちがあります。それは、広州の南越王墓で見つけた副葬品のおうちとカタチがすごく似ていると認定されています。

樓閣式陶屋東漢時代(25-76年)

おうちのモデルだけでなく、建築材も北の地方と違います。嶺南は温帯夏雨気候に属して、北は乾燥で、南は大雨が降ることが多いです。

 

ずっと昔から、地下土管を使って排水していたことも発見されました。排水技術レベルも、想像より高いです。

 

時代は違いますが、土管と言ったら、日本の場合は中部空港隣の常滑市が有名です。

 

今年の1月(つい数日前です)、わたしは奈良の東大寺と春日大社へ行って、初詣に参りました。東大寺の瓦は、東大寺の文字が刻まれていることに気付きました。

東大寺の鬼瓦
東大寺の文字

いつもの名城めぐりでも、いつも桃と鬼の瓦が見られます。それぞれも、深い意味が含まれているそうです。

 

昔の中国は縁起が良いものに惹かれ、建築材もその影響を受けていました。花瓶は平安など、今も昔のままです。驚いたことに、嶺南地方は「千秋萬歲」、「大吉」の文字の瓦がたくさん使われています。ご先祖様、とても正直です(笑)。

廣州南越王國文字瓦

しかも、時がたっても瓦は昔のままきれいで、職人技の素晴らしさにびっくりです。

 

古代の次は、近代の明、清、民国時代の建築材です。また驚くべきことがあります!

 

うちの祠堂廖萬歌堂の「中進封簷板」(扁額の下にあるとても長い木造飾り。日本で言う破風板だと思います)と陶獅子が、探知館で展示されています。え? どういうことですか? もしかしてこちらの扁額が偽物?

廖萬石堂獅子

館長鄒興華さんが、「それは違います。伝統上、祠堂は木造の部分は時代とともに変更する習慣があります。こちらの展示品は、キリさんのご先祖様が木造飾りと陶器を新しいものに変換する時譲ってくれたものです」と説明してくれました。

 

館長の話は続きます。「日本は木造文化財がたくさんあります。文化財を維持する上に、色々な知識や技術が必要です」

 

わたしは伊勢神宮の橋を思い出しました。確か、20年ごとに新しくする話があります。

 

確かに、大切な建物で使われている建築材にはこだわりがあるはずです。世界諸国も同じだと思います。

 

探知館の庭園には、仮設建築物ができました。

 

中には「番禺神楼」か入っています。こちらが、この度の目玉展示品です。言葉の通り、神様を祭る祭神聖な建物です。

番禺神楼

こちら、47トンの重さの神楼は清の宣統元年(1909年)にできた木造文化財で、166個で分けられています。毎日神様を祭ることはないので、使わない時は箱に収納していたそうです。

 

この度も箱で香港に来て、職人の手で一つ一つ組み立てられています。1番難しいのは、100年前は写真がなかったため、丁寧に正しく組み立てるのは職人の経験が必要となってくるところです。

 

*建築の知識も日本語の力も足りないので、この展示会の素晴らしさがうまく伝えられていないのではと心配しています。

 

でも、この展示会場に行ったら、もっと嶺南建築文化がわかりますので、皆さんもぜひ行ってみてください。

 

展示会は2024年6月2日まで。

入場無料。水曜日休館。

無料体験浮世絵葉書

 

わたしが作ったインスタ動画リンク(繁体字):

https://www.instagram.com/reel/C003ES3PcQX/?igsh=MWY4bGdqMGJrbTU5dA==

 

豆知識:

同一屋簷下の意味は「ひとつ屋根の下」で、1993年香港で大人気になった日本ドラマと同じタイトルです。わたしは見たことがないですが、酒井法子と江口洋介が出たことは知っています。

 

参考:

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/嶺南_(中国)

https://www.amo.gov.hk/tc/news/index_id_146.html?year=2023


キリ
日本語教師で旅行作家。唎酒師と観光ガイド資格。特に日本が大好きで年に10回以上は訪れる。著書に『Kiri的東瀛文化觀察手帳』(2017)、『日本一人旅』(2019)、『爐峰櫻語』(2022)がある。香港の誠品商務三聯などの書店で購入可能。
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