2026/07/08
長年日本を往復してきたわたしにとって、老舗という言葉の捉え方は一般の香港人とは少し異なります。それでも宇治橋に佇む通圓(つうえん)茶屋が永暦元年・1160年に創業していることには大変驚かされました。
6月、紫陽花が咲き誇る宇治から香港へ戻ってまもなく、粉嶺(Fanling)の老舗西洋料理店「Deluxe Restaurant」(雅士餐廳)が閉店するというニュースをネットで知りました。

日本では1981年創業と聞いても古い部類には入らず、街中の喫茶店でも50年近く続く店は珍しくありません。一方香港は店舗賃料が非常に高い上、粉嶺は中国本土への買い物客流出の影響を強く受ける地域です。数十年、時には千年近く続く店が存在する日本の文化に慣れているわたしにとっても、45年営業してきた西洋料理店の廃業はとっても残念だと思います。

香港新界北部粉嶺の古い市場・1949年に設立された聯和墟(Luen Wo Hui)にあるDeluxe Restaurantは1981年に開業し、当初は近隣に住んでいた英軍関係者が主な客層で、新界のステーキ店として賑わっていました。
店内は80年代当時の雰囲気が残り、地元から「粉嶺のAmigo」と呼ばれています。
「Amigo」というのは、ハッピーバレーにある香港を代表する老舗フランス料理店です。高級感のある内装と伝統的な西洋料理に定評があり、富裕層や著名人に人気があります。Deluxe Restaurantは内装や雰囲気が似ていることから、「粉嶺のAmigo」と地元で呼ばれています。


看板メニューはボルシチ、エスカルゴグラタン、アンガスビーフステーキで、都心の高級店より価格が抑えられ、長年常連に愛されてきました。
定番メニューも充実していますが、わたしのお気に入りはミートソーススパゲッティと、一風変わった独特な名前のオリジナルドリンク各種です。店内の雰囲気は昭和レトロな路線の日本の洋食店とよく似ていると感じます。
日本の洋食が独自にアレンジされたように、香港の西洋料理もこの土地ならではの特色が溶け込んでいます。


2026年6月、家賃大幅値上げに伴い、7月31日で閉店することが発表されました。植民地時代の食文化を伝える貴重な店の廃業は、多くの香港人に惜しまれています。
このレストランのことはずっと紹介したいと思っており、写真も撮ったものの、書きませんでした。このたびは、閉店の前に皆さんに紹介したいと思います。
写真は2年前の2024年のクリスマスのときに撮影したものです。
大変遅くなりましたが、ぜひその素敵な雰囲気をご覧ください。

【店舗情報】
店名:Deluxe Restaurant(雅士餐廳)
開業:1981年
閉店予定:2026年7月31日
電話:2675 7861
愛称:粉嶺Amigo
人気料理:ボルシチ、エスカルゴ、アンガスステーキ
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キリ
日本語教師で旅行作家。唎酒師と観光ガイド資格。特に日本が大好きで年に10回以上は訪れる。著書に『Kiri的東瀛文化觀察手帳』(2017)、『日本一人旅』(2019)、『爐峰櫻語:戰前日本名人香港訪行錄』(2022)、『爐峰櫻語:戰前日本人物香港生活談』(2023)、『悠遊日本』(2024)、『在水一方——在日本尋找中國歷史』(2025) がある。香港の誠品商務三聯などの書店で購入可能。
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