2022/05/20

はじめまして、セントラルにあるMind WorXという精神科クリニックで臨床心理士をしております、河合まり絵と申します。Hong Kong LEI  vol.50のCover Storyに、恥ずかしながらも載せて頂き、今回からコラムを始めることとなりました。

臨床心理士ってなんぞや?という方も多いかと思います。一生のうちで出会う確率は低いかもしれない、でも、心がうまく働かなくなった時、頭の片隅で覚えておくと良い職業No.1ではないかと、勝手にわたしは信じています。平たく言えば、心の専門家ですが、実際の仕事は多岐に渡っており、精神科、心療内科クリニックでの、所謂、カウンセリングや精神療法だけでなく、学校に勤務しているスクールカウンセラーのほとんどがこの資格を有していますし、乳幼児健診に同席して子どもの発達に携わることもあります。また、会社で労働者のメンタルヘルス向上のための活動をしたり、刑務所で矯正教育にあたったりすることもあります。数は少ないですが、社会の様々な場所に潜んでいます(因みに、現在、心理職として日本で社会的に認知されている資格は、臨床心理士の他に2017年から施行が開始された公認心理士という資格もあります)。

さて、ここで皆さんに質問ですが、日々、生活している中で、ストレスが溜まり過ぎてパートナーに不機嫌な態度をとってしまうこと、仕事に追われて普段よりも食欲が無くなったり、笑顔が減ってしまったり、子どもの言動が理解不能過ぎて頭の中が「はてな???」で溢れ、理解できない自分を責めてしまうこと、ありませんか?

声を大にして言いたい!

わたしはあります!!!

ええ、ありますとも。どんなに心の働きを学び、訓練で自分の特性を理解し、いい大人になり状況判断能力があったとしても、まだまだ、生身の人間、仙人には程遠く……何か気持ちに引っ掛かりがある、不安で頭がもやもやして考えがまとまらない、考え始めると夜も眠れない、自分がおかしいの? あの人がおかしいの? わたしの心、どうしちゃったの!? というとき。誰かにこの気持ちを聞いて欲しい! でも誰に? どこに!? そんな時、皆さんはどうされていますか?

夜眠れないから、気持ちが晴れないからと言って病院の精神科や心療内科を受診するのは敷居が高いし、薬は飲みたくない、友達に話してその場は少しすっきりしても、結局、堂々巡り、そんな時に思い出して欲しいのです、臨床心理士という存在を。

臨床心理士は心の専門家であり、話を聞く訓練を積み重ねています。もちろん、不眠や精神的な落ち込みが激しければ、お薬を飲んだ方が良いケースもあります。しかし、不調が小さなうちに気付き、メンテナンスをし、手当てしてあげることで大きくしない、ということはとても大切なこと。

以前、精神科クリニックでお会いした方に、自宅から数時間かけて新幹線で会社勤めをされている女性がいらっしゃいました。香港では考えられないくらいの長距離を、毎日、朝4時半に起きて出勤し、また22時ごろに同じ道のりを帰る。ご両親に介護が必要で、平日はお姉さんが、休日はご本人が介護を担っていました。そんな生活を続けているうちに、会社に来ても思考がうまくまとまらなくなり、作業にミスが続き、朝も起きられなくなった末に、やっとの思いで精神科クリニックを受診し、休職が決定しました。後で振り返った際に仰っていたのは、「心も身体も悲鳴を上げていることに気が付いてはいたけれど、会社や家族に申し訳なくて言い出せなかった」とのこと。真面目で、周りへの気遣いに繊細な方ほど、自身の不調を言い出しにくい傾向にあるように思います。しかし彼女はカウンセリングを通して、自分の性格への理解が深まり、健全に他者に「甘える」ことを知り、「今後、また、同じように不安や心配が募ったときは、なるべく早くにカウンセリングを受けます」と仰って下さいました。

身体の不調を感じたときにかかりつけ医に行くように、心の不調を感じた時、気軽に気持ちを整理しに行ける、そんな場所があっても良いと思います。それは、自分の心の弱さではなく、自分への愛です。自分をより良く理解すること、他人をより良く理解すること、自分が置かれているライフステージや状況への理解、これらは生涯をかけて取り組むことのできる壮大な課題であり、成長の種です。症状の緩和はもちろん、自分を労り、愛するために、臨床心理士の存在やカウンセリングという場を、もっと身近な場所として利用して欲しい、そんな思いでこのコラムを書いていきたいと思っていますので、気が向いたときに流し読みして頂けると嬉しいです。

次回は、実際にカウンセリングでどんなことをするのか、カウンセリングの流れなどをご紹介していきたいと思います。

(*コラムの中でご紹介させて頂く事例は、個人の特定を防ぐ為、実際の事例とは一部異なりますことをご了承下さい)



河合 まり絵

臨床心理士。日本ではスクールカウンセラーとして、不登校児童や別室登校児童、発達に偏りのある児童への心理的サポートや、精神科クリニックで、パニック障害、PTSD、うつ病、摂食障害などの個別カウンセリングを実施。リワーク外来では、精神疾患などで休職中の患者に対し集団療法を、また、復職後の企業内フォローアップ・カウンセリングを実施。刑務所内では、グループ矯正教育をするなど、教育、医療、産業、司法の分野で臨床経験を積む。香港に移住してからは、3児の子育てに追われるも、縁あって精神科クリニックに復職。

 

OT & P Healthcare/ Mind WorX Clinic
MindWorXはOT and P Healthcareが運営する精神科専門のクリニックです。
中環駅(セントラル)から徒歩2分の場所に位置しており、簡単な日本語を話せる医師と、日本人の臨床心理士が在籍しておりますので、薬の処方と共にカウンセリングを並行して受けることが可能です。投薬はしたくないけれど、カウンセリングを受けたいという方もご相談下さい。

以下のようなことでお困りの方は、是非、一度、ご相談下さい。
・夜、なかなか眠りにつけない、または、朝、早くに目が覚めてしまいすっきりしない
・不安や心配な気持ちがいつも頭を離れない
・過度に食べ過ぎてしまう、または、食欲がない
・子育てに疲れている
・コロナ禍でストレスが溜まっている
・夫や妻、パートナーや他者との関係に悩んでいる など

初回予約の際に日本語でのサポートが必要な方は、marie.kawai@otandp.comにemail を頂ければ、日本語での対応が可能です。

Mind WorX Clinic
OT&P – Internationally Accredited Medical Clinics in Hong Kong (otandp.com)
6/F Century Square, 1 D’Aguilar Street, Central, HK
中環徳己立街1號世紀廣場6樓
Tel: +852 2468 3577
Fax: +852 2111 3850
Appointment WhatsApp: +852 6339 2639


 

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