2022/07/20

わたしは、「人の悩みや問題を傾聴し、解決策を一緒に模索する」ことを生業としている訳ですが、よくこんな質問をされます。「自分も鬱っぽくなったりしないの?」(なりません)とか、「今まで恨まれたことない?」(なんでだっ!)とか。また、「なんで話すだけで良くなるの?」、「友達に話すのと何が違うの?」という質問もあります。たしかに、そういう疑問は生まれますよね。

そこで今回は、「カウンセリングの効果」について、お話したいと思います。

問題の整理ができる!

人生の一場面において、何かうまく行っていないと感じるとき、一体、何が良くないのか?「仕事関係」、「家族関係」と一括りに言っても、その様相は様々です。

例えば、仕事にやりがいを感じていたのに、朝、起きるのが非常に辛くなるとのことで、カウンセリングを訪れたAさん。当初、「仕事の量が原因かな。最近、残業が増えて、休日出勤もあったので」と問題の原因について話していました。ところが、カウンセリングが進む中で、カウンセラーと共に問題状況の描きが詳細になってくると、仕事量の調整や割り振りについて、上司に相談することが出来ずにおり、上司とのコミュニケーションに難しさを感じていたことが語られるようになります。このように、自分が思っている問題に対して、カウンセラーの視点を借りることで、問題の本質や中核が同定されることは、よくあることです。

問題への対処法がわかる!

問題の状況が整理されると、どのように対処したら良いかが考えられるようになります。この段階においても、カウンセラーが第3の目となることで、様々な対処法を考えることが出来るようになります。

例えば、Aさんの場合、上司との、どのようなコミュニケーション場面で難しさを感じるのかを同定し、その時に、どのような考えが自分の中に浮かんでくるのか、自身の行動を検討することで、次回、同じようなことが起こったときに、どう対応して良いかを検討できるのです。

洞察や自己理解が深まる!

問題への理解が深まってくると、自ずと「わたし」という存在への理解も深まります。「自分はこういう場面の時に、こういう考え方をする傾向にあるな」とか、「こういう考え方は、あの過去の経験から来ているのかもしれないな」とか。そうした洞察が進むスピードや深さは、個人差はありますが、今までの自分にはなかった視点と出会う体験でもあります。

Aさんは、カウンセリングで、上司との関係の難しさの原因が、父親との関係の難しさにあったことを理解するに至りました。思春期に、一方的に高校受験を押し付けられ、良い大学、良い企業に入ることが幸せであるという画一的な価値観を持った、権威的な父親との関係性が未消化なままの状態でした。自分の好きなことを仕事にすることは出来たものの、上司と働く中で、父親の像を上司に投影し、コミュニケーションを取ること自体が非常に強いストレス要因となっていたことが分かったのです。

カタルシス効果がある!

ときに「魂の浄化」などと表現されたりもしますが、カウンセリングの中では、しばしば、クライエントが流涙するということが起こります。誰にも言えずに秘めていた感情や、自分では気づけずにいた曖昧な感情を、カウンセラーの存在や言葉の助けを借りながら外に出すことで、気持ちが解放されるという現象です。それは、カウンセリングという場が「守られた場」であることから、カタルシスが起きやすいという事があります。カウンセラーとクライエントとは、「いま・ここ(Here and Now)」だけで成立する関係です。こうした治療装置の中で、安全に自分を表現することが可能になります。感情を伴った涙には、癒し効果のセロトニンという脳内物質を活性化させたり、コルチゾールといった、ストレス関連ホルモンを流したりする効果もあるそうです。

自己肯定感が高まる!

問題への理解が深まり、それに対する自分の価値観や考え方、今までの人生経験を意味づけし、自分への理解が深まると、自ずと自分を受け入れられるようになります。「自分はこういう人間なんだ」、「これで良いんだ」と自分自身を受け入れ、認めてあげることができるようになります。そして、分からなかったことを「知る」ことで、「怖い」という否定的な感情が軽減します。そうすると、新しいことにチャレンジしたり、今までと違ったやり方を試してみたりと、考え方や行動にレパートリーが増えていきます。

心理学が科学たるゆえんは、仮説を立て、実験をし、実証することの繰り返しにあります。これは、カウンセリングという場においても行われています。問題を抱えたクライエントが訪れた時、その方の性格や問題が起こった時の対処方法、考え方や対人関係パターンなどを一緒に考えながら、問題解決への仮説を立て、実験し、実際に問題が解決するのかを実証していきます。

言葉というのは不思議なもので、目には見えませんが、自分から出てくる生産物です。「言葉を紡ぐ」という表現があるように、言葉はクライエントの織り成す芸術であり、カウンセラーと共同作業しながら「紡ぐ」という意味で、わたしは、カウンセリングは非常にアーティスティックな作業であると考えています。科学と芸術の融合、それがカウンセリングを効果的なものにしていると思います。



河合 まり絵

臨床心理士。日本ではスクールカウンセラーとして、不登校児童や別室登校児童、発達に偏りのある児童への心理的サポートや、精神科クリニックで、パニック障害、PTSD、うつ病、摂食障害などの個別カウンセリングを実施。リワーク外来では、精神疾患などで休職中の患者に対し集団療法を、また、復職後の企業内フォローアップ・カウンセリングを実施。刑務所内では、グループ矯正教育をするなど、教育、医療、産業、司法の分野で臨床経験を積む。香港に移住してからは、3児の子育てに追われるも、縁あって精神科クリニックに復職。

 

OT & P Healthcare/ Mind WorX Clinic
MindWorXはOT and P Healthcareが運営する精神科専門のクリニックです。
中環駅(セントラル)から徒歩2分の場所に位置しており、簡単な日本語を話せる医師と、日本人の臨床心理士が在籍しておりますので、薬の処方と共にカウンセリングを並行して受けることが可能です。投薬はしたくないけれど、カウンセリングを受けたいという方もご相談下さい。

以下のようなことでお困りの方は、是非、一度、ご相談下さい。
・夜、なかなか眠りにつけない、または、朝、早くに目が覚めてしまいすっきりしない
・不安や心配な気持ちがいつも頭を離れない
・過度に食べ過ぎてしまう、または、食欲がない
・子育てに疲れている
・コロナ禍でストレスが溜まっている
・夫や妻、パートナーや他者との関係に悩んでいる など

初回予約の際に日本語でのサポートが必要な方は、marie.kawai@otandp.comにemail を頂ければ、日本語での対応が可能です。

Mind WorX Clinic
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